ザクッ。
その音が聞こえたときには、もう遅かった。
血まみれのナイフが、アルの胸を突き刺した。
「せめて…お前だけでも…道連れに……」
俺は赤毛のやつを蹴り飛ばして刺した。
急所に当てたから、起き上がってくる事はないだろう。
「アル!!!!!」
俺はアルの所へ駆けた。
「アル!アル!しっかりしてくれアル!!」
「レッド、涙が出てるよ…」
私はレッドの涙を拭き取った。
「血まみれの手で、ごめん」
「いいんだ、違うんだ!アル!!タヒなないで…アル…」
「びっくりだよ、全く」
「急に後ろから刺されるなんて思わないよ」
「…幸せだなぁ」
「は?」
「いや、こんな嬉しくて、かっこよくて、幸せなタヒに方他にないよ」
「かっこいいは、違うかな」
私はふと、幼稚園の頃にレッドからもらった一輪のフランスギクのことを思い出した。
「あの花、嬉しかったなぁ」
「人生で一番嬉しいプレゼントだよ」
「人生とか、言うなよ…悲しくなるから」
「もっといいプレゼント、用意するから生きててよ」
「もう天で見守ることしかできないかなぁ」
「…一個だけ、心残りがあるんだ」
「何…?」
「みんなの成人式の晴れ着、あれは見たかったなぁ」
「あと、お願いがあるんだ」
「なんでも聞くよ…」
「私を追ってタヒのうとしないでね、私が命からから守った命だから」
「あと、みんなが成人したら教えてね、空から眺めてるよ」
「みんな、笑顔でいれますように」
俺はハッとした。今の俺はどんな顔してんだろうか。目に見えてくる。
「…ニコッ」
「!」
「…ありがとぅ」
そのまま、レッドの腕の中で、アルは冷たくなっていった。
第三話 重い代償からできる幸せ
エピローグ
「お前ら成人おめでとう」
レッドの低い声は、相変わらずだった。
「ありがとう!」
「お酒飲んでみたいな」
「俺タバコ吸ってやるぜ!!」
「オレンジ知らないの?タバコは肺に悪いんだよ?呆れたよ」
「うっせー!」
「…好きにしろ」
俺はまだあいつ以外に言っていない。
この四人が実験成功体だったこと。小さい頃から力が強い代わりに記憶が薄れていること。
こいつらは覚えていないだろう。あの優しいあいつを。あの時俺の腕の中で冷たくなったあいつを。
「…こいつら、成人したぞ、アル」
「レッドなんか言った?」
「…いや、なんでもない」
『成人おめでとう、みんな』
「今誰かいた?」
「誰もいないさ」
「…晴れ着が見れて良かったな、アル」
開放的な窓の外には、快晴の青空と、フランスギクが一輪置かれた草原が広がっていました。
墓の前の白い花、いつかは枯れる、白い花。
アルは幸せだったでしょう。
自分の死を悔やんでくれる人がいて。
自分の死に対して泣いてくれる人がいて。
自分の最期の要望に応えてくれる人がいて。
大切な人の腕の中で冷たくなれて。
アルにしたら、冷たい体も温かく感じられたことでしょう。
「私はずっと、みんなの心で生きてるからね。」
「白く残酷な一輪の花」 おわり
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