住宅地に並ぶ普通の家、 私はそこで暮らす事になった。
父が再婚をして、新しいお母さんと初めての姉と生活を送るらしい。正直私は、こんな大人数よりもお父さんと二人の方が楽ではあったから、面倒な気持ちもそこそこあった。だがそんな言葉は言えるはずもなく、その普通の家にとぼとぼ足を踏み入れた。
「ぁ、どうも…」
最後の荷物を自分の新しい部屋に置いて来た時、丁度私の姉になる人と出会った。 随分と私と似ており、灰色の髪色で三つ編みをしており、顔立ちやスタイルも私に似ていた。私はペコリとお辞儀をして、その場をさろうとしたが…
「お前がここに住む者じゃな!!フッフッフッフ、後で案内してやるからな!!自己紹介もまた後でする!」
突然大きな声を出した彼女。見た目はすんとしており冷たそうだったが、思った以上、いや、思っていたのとは論外な性格だった 。なのだやなのじゃや、昔らしい喋り方で威勢が言い声をしていた。こういうところは似ていないんだなと私は心底思い、彼女とは目を離した。正直苦手だし怖い。警戒はしている方だった。私はその場からささっと逃げて、お父さんとお母さんの所に向かった。だが彼女も一緒について来た。まぁそうだ、先程親に来てた言われたんだから。
リビングについた。
親はソファに座っており、空いている席はソファの前にあるソファ。二人で座れるものだったので、仕方なく私は彼女と隣り合わせで座った
「みんな揃ったし…自己紹介でもしましょうか!」
お母さんは、パンと手を叩きそう言った。自己紹介なんて別ないと思ったが、仕方がない。と思い、私が手を挙げた
「じゃあ…私から」
「おっ。媛華、今日は何だか積極的だなあ!」
「…別に」
私はいつも通り、お父さんに対しては塩対応だ。多分これから、この新しいお母さんにも、初めての姉にも…なんて思いながら、すぐその場に立つ準備をした。どうせ先に手挙げて自己紹介して終わる方が早いと思ったし、ここで私が先とか言う奴なんて居ないだろうと思ったからだ
「じゃあ媛華ちゃん、お願いするね!」
「はい。」
私はサッとその場に立った。少し猫背だった姿勢をシャキッとさせ、皆んなに目を合わせるのはなんか嫌だったから、逸らした。
「…織田媛華です。これから宜しくお願いします」
その場でお辞儀をし、私はすぐ座った。親からは温かい視線を向けられていた気がする。
だが彼女からは、ツンとした視線が向けられていた気がした。どうせこの人とは気が合うとは思えなかったし、性格も真反対だったから、愛する事も出来ないのだろうなんて、心底思っていた。
「私はこれから、媛華ちゃんのお母さんになります。よろしくね」
お母さんはそう言い、私の方を見た。一応目を合わせとこうと思い、お母さんの方に目を合わせて無表情で軽くお辞儀をした。
「俺はこれからこの家族のお父さんになるからな!よろしくな」
お父さんはお母さんと彼女の方を見てニコニコと笑っていた。いつも通りのお父さんだった。
そして彼女。先ほど話してみたが、かなりの癖ものだったから、自己紹介もおかしくなりそうだな、なんて思い彼女の方に視線をやった。そしたら突然彼女が立ち、口を開きこう言った
「ワシは伊織或世!!この名前は母が付けたもので或る時も色々な事を知ろうと言う事で付けた名前らしい!!よろしくなのじゃ!!!」
ほらな、癖ものだ。
おかしな喋り方でペラペラと喋り、まるで子供みたいだった。まぁ私は別に嫌ではなかったから、嫌な表情は一つも見せなかった。親も、とても微笑み温かい表情をしていた。
「ふふ、何だか恥ずかしいわ。或世ったら、いつもそれ言うんだから」
「フッフッフ、ワシはこの名前が気に入っておるからな!!」
お母さんと或世はとても仲が良さそうだった。
「いやぁ、とても威勢が良い子だなぁ!俺は嬉しいぞ!はっはっは!!」
お父さんもなかなかの癖ものではあるから、きっとあそこもいつかは仲良くなるだろうと思った。或世は嗚呼言う人達に好かれる人だろうと、心の中でボソッと言った。本当真反対で、私は多分、あの人とは仲良くなれない。
「媛華ちゃん、お風呂入って来て良いよー!」
何週間か過ぎた頃、私達はこの生活が慣れて来た。別に悪いことがあるわけではなく、案外なの生活も悪くはないと、少し思い、私は着替えを持ち、 お風呂場に向かった。
「…っと…」
お風呂場に着き、服を脱ぎそのまま洗濯機に放り投げた。そして服が脱ぎ終わったらすぐさまお風呂のドアを開け、髪の毛と体を洗った。髪の毛は長い方だったから、正直洗うのが面倒で仕方なかった。けれどいつもの事だ。これくらいもう慣れている、なんて思いながらノロノロと頭を洗った。そして体も洗い、その後、沸いていたお湯体を付けた。暖かさが体に伝わり、ふぅと息を吐く
「…あったか…」
私は手のひらにそっとお湯を置いた。ゆらゆらと揺れるお湯は、またお風呂の方へと戻って行ってしまう。そんな事を考えていたら、段々と気温が高くなり体が暑くなって来た。私はお風呂から出て、タオルで体をきちんと拭いた。
「お父さん、出たから入って良いよ。」
私はタオルとドライヤーを持ち、お父さんに言いリビングに向かった。そしてコンセントをさし、ドライヤーで髪を乾かそうとした。その時______
「む、媛華じゃないか。」
「ぁ…あ、或世」
バッタリと或世と会ってしまった。私はあまり、或世と喋っていなかったから、少し戸惑い目を逸らした。
「…何」
そして、暗く重い声でそう言った。これなら或世も怖がって何処か行くだろうなんて思っていたら…
「いや、髪を乾かそうとしていた所を目撃したからな!代わりにワシが乾かしてやる!!」
なんて、満面の笑みでそう言ったのだ。私は良いよと断ったが、乾かさせてくれたねだるばかりだったので、仕方なく、手に持っていたドライヤーを或世に渡した。そして或世は
「ありがとう!」
と言い、私の背後に行き髪を持ち上げた。
ドライヤーの音がリビングに響く。或世は綺麗に私の髪を乾かしてくれていた。意外な事に、或世は髪を乾かすのが上手だった。私は少し感心して、髪が乾かし終わるのを待つだけだった。
「…媛華の髪、サラサラで綺麗な茶髪じゃな」
突然或世は言った。私は少しドキッとしたが、そんな時でもいつもの対応だった。
「…別に」
だが、そんな対応でも悲しみを見せる事はなかった或世が、こう言った。
「…ワシは、媛華の髪が好きじゃ。ワシとは全く違う髪で…サラサラで綺麗な色で…ワシは、無彩色な色だからあまり好きじゃないんじゃ。しかも、黒ではなく灰色…はは、それに癖っ毛が沢山あるからな!…そのせいで…」
「そのせいで?」
“そのせいで“という言葉を聞いた私は、その言葉に噛みついた。何かが気になったのだ。私はこんな噛み付くことはなかったのに…なんて少し思った。
「…いや、何でもないぞ。」
或世はその後の言葉を教えてはくれず、ドライヤーを切り、コンセントを抜いた。
「乾かし終わったぞ!どうじゃ?」
私は自分の髪を触った。慣れているところはなく、しっかりと乾かされていた。髪を乾かす時、本当に丁寧にやってくれていた或世は、少し可愛らしく見えた。
あれ、何だろう。
その日からだろうか。
私は、その日から___________。
次の日、私は学校に行った。外は昨日と同じで晴れており、太陽が眩しく光っていた。雲一つない空の下、私は学校に向かった。
「おはようございます」
私は教室のドアを開け、そのまま自分の席に座った。周りの人達はワーワー話しており、そんな中、私は一人で読書をする。友達は居ない。作ろうともしないし、作りたくない、と言うのが事実だと思う。私は人と話すのが嫌いだ、だからあまり人と関わるのは避けている。今日も、昨日も明日も、小さい頃からずっとそうだった。
「…やっと終わった…帰ろ」
時間はあっという間に過ぎた。もう放課後だったので、私は席から立ち早歩きで学校から出た。帰り道は、周りを見ても人は居ない。それはそうだ、私の方が皆んなより早く帰っているからだ。だが、そんな時_____何処からか、或世の声がした。私はその声が聞こえた時、ビクッと体が反応して、周りをキョロキョロ見渡した。だが誰も居ない、もう少しあっちだった気がする…と、私は行ったことのない方面に向かってしまった。
少し歩いた時、人の様子が見えた。そこに居たのは___________
「早く死ねよ!!カス、汚ったないゴミ!」
「ぃっ…や、やめるのじゃ…っ」
「てかいつまでその語尾使ってるの?少し痛いっていうかー…」
「……は?」
或世が虐められている。どうして、なんで、おかしい、アイツらは?制服が同じだからきっと同級生とかなんかだろう。
私はとんでもない光景を見てしまったあまり、吐き気と怒りが襲いかかった。見てるだけじゃダメなのに、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
「ゴミみたいな髪色して、本当可哀想だね。親御さん恨んでるー?」
「い“ッ…ぅ、ゔらんで、なんか…」
「汚ったな、本当汚い。あー無理無理無理〜。」
「触らない方が良いんじゃない?」
「それは思うかなー?あはは!」
「…お母さんは…」
「は?何?」
「…ッお母さんは、ワシを大切に育ててくれた…お父さんが事故にあっても、挫けることなく、ワシを大事に_____!!」
「ねぇ本当そういうのやめなーい?」
「ぃッ…ゃ、やめ…」
「汚ぁいゴミは、ゴミ箱に捨てましょうね〜?」
「や”ッぁ…」
私は見てられなかった。体が勝手に動き、或世の方へと行った。とにかく或世を守らないとという事だけが頭の中でよぎり続けた。
そのあとは、正直何をしたかは覚えてないけれど
いじめっ子を倒した事は事実だ。
「或世っ!」
「へ、ぁえ…?」
「…っ……!」
私は泣いた。ポロポロと、沢山の涙が溢れ落ちた。本当に可哀想で、苦しくて、或世が苦しむ姿なんて見てられなかった。ボロボロで、傷が沢山付いてて、そんな或世は見てられない。
「っ…もう、大丈夫だから…」
「へ、ぁぇ…ッ…ひ、めか…ぁ、あの…」
「大丈夫。あの人たちはもう良いから。」
「で、も…しん…で……」
「或世は優しすぎるよっ!」
「……」
「…大丈夫、何があっても守るから…遅くて、ごめん…」
私はぎゅっと、数分も或世を抱きしめた。それで気づいたけれど、或世は震えていた。きっと怖かったんだろうなと思う。あんないじめっ子たち、もう居なくなったんだから安心して良いのになんて思ったが、当然のことだ。殴られて蹴られて、髪の毛を掴まれて、こんな事されて今更怯えないことなんてない。そして数分経った後、私と或世はその死体たちを____________________。
私はその日から或世を守り続けた。何があっても或世が虐められないよう。何があっても、何があっても、何があっても。
何年後か過ぎ、或世の笑顔と取り戻せて来た。私もあの日から、或世といる時間が楽しくなって、私も明るくなった。そう、これも或世のため。或世のためなら私は…
「…ぁ、るせ……?」
あれ
「何で…ゲホッゲホ…」
私は何もかも尽くしてきた、はず
「…媛華。もう限界なのじゃ。」
或世、ねぇ、なんで私を
「……媛華、ワシの為に死んでくれ」
「死んで…くれ……?」
「…ぁは、あっははは…アハハハッ!…ひゅ、ゲホゲホッ…」
「…はぁ…ふふふ…或世……のため、なら…」
「…或世と私は、死んでもずっと一緒だから、私が死んでも……ずっと家族で、ずっと一緒で…一生一生一生一生っ……だから…」
私の生涯、こんなもんか。
コメント
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初めてノベルで話書きました。 今回はかなり重めで展開がようわからん感じになってしまいました…🙃