家に着き、天馬がキャリーを開けると、猫はダッと廊下を走って行き、その姿は、本当に野生のテンのようにも見えた。
「ホント、テンみたいね…」
クスッと笑うと、
「ね、そうでしょ?」
天馬君がニッコリと笑い返した。
「ねぇ、先に二階の僕の部屋に行っててくれる? 僕、さっきのお店でテイクアウトしたケーキとか持っていくから」
「あ…別におかまいなく。気にしないでいいから」
そう手を振って断るも、
「いいから、先に二階に上がってて」
と、階段へ背中を押し出されてしまった。
さっきから、何かと彼に丸っきり乗せられてしまってるようにも感じて、
「しょうがないな…」
私はひとり苦笑いを浮かべると、階段を上がって、目の前の部屋の扉を開いた。
室内は、よく片付いていて、勉強をするための机と、そうしてベッドがあるだけの、ごくシンプルな雰囲気だった。
どこで待っていようかとしばらく部屋を見渡していたら、
「お待たせー」
と、トレイを携えた天馬君がやって来た。
「そこ、座っていいよ。ベッドの上」
無造作に指が差される。
「ああ、うん…ありがとう」
他には座るところもないしと思って、言われるままベッドに腰かけると、
彼の方は紅茶セットとケーキ皿の乗ったトレイをベッドに置き、トレイを挟むようにして私の反対側へ座った。