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『…ねぇ、先生。』
「んー?」
『深澤先生と、高校の文化祭で歌ってたでしょ?』
「あぁー、あれね 笑」
『あれって、先生が歌詞書いたんですか』
「まぁ、でももう忘れてるっしょ。」
先生、忘れてなんかないよ。
あの時のシチュエーションも、姿も。
全部が、私の頭の中に潜んでるの。
『…他にないんですか?』
「…まぁ、あるけど」
なんでだろう。
触れてはいけなくないのに、先生は触れないでという態度をする。
『見せて貰えませんか!?』
「はっ、嫌だよ 笑」
先生は、少し悪魔のような顔をする。
「あ、ちょっとトイレ」
『右曲がったとこです』
先生が立ち上がっとき、先生の鞄が倒れた。
中に入ってたものが少し見えている。
1冊のノート。
先生が、お店に来た時、書いてるノート。
いつも、何書いてるの ってちょっと覗いても見えなかったけど⋯
ちょっとならいっか。
【題 ミルクティー】
【いつも ミルクティーのキミを
僕は好きになってはいけないのかな】
【時の流れと同じように
君がどんどん離れていく】
【夜桜も大輪の花火も気がつけば頭から離れない】
【僕の真っ白な唇と君の赤く染った唇を繋ぐものがほしい】
【いつかその唇に触れさせて】
「…姫野」
先生の方に視線を向けると、信じられないほど近くに目があって
潤んだ藍色の瞳に、私が映っていた。
何故だか、涙が止まらない。
先生への、愛も止まらない。
「うわ、これすげー恥ずかしいんだけど。」
先生の柔らかい髪が私の髪と重なる。
「『実体験ですか』って聞かないの?」
『…』
「まぁ、言わなくてもわかるか…」
「オレの実体験だよ。今の ね」
『…っ』
「姫野…」
涙が止まらない。
鼻の先が触れ合っていて、息もできない
「その唇に触れさせて」
「なんてね…笑」
なんてね、なんて
小さく呟いた先生の唇が、私に触れた。
もしかしたら、1秒もなかったキス。
「姫野のここ、」
そういいながら先生が私の口を撫でながら
「俺のモンになっちゃったな」
もう一度、私にさっきより長い口付けをした。
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次超楽しみ!!