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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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伊地知部長がふたりにとって大学の先輩であることは、ジニアールでは周知されている。
愛想笑いをしながら、部長は氷室くんに向かってコクリとうなずいた。
「私、社歴は浅いけど、あのふたりのことは十代のころから知ってる。昔は朝陽くん、五十嵐くん、って呼んでたなぁ。ふたりとも当時からイケメンだった」
どこか遠い目をしながら、部長が懐かしそうに話してくれた。
社長と専務が昔から女性に人気だったのはたやすく想像できる。大学ではきっと、キャンパスに存在するだけで騒がれていたに違いない。
「いいなぁ。うらやましいっす! かわいい女の子たちと遊び放題じゃないですか」
「それがね、そうでもないのよ。朝陽くんは綺麗な顔してるからすごくモテてたけど、昔から女性関係はクリーンだしね。だからこそ、今回の熱愛報道も違うと思うの。いくら相手がかわいいからって、すぐに熱を上げたりしないよ」
あんなにかわいい真凛さんですら社長の心に響かないのだとしたら、どんな女性も無理なのではないだろうか。そう考えたら自然と私は眉根を寄せてむずかしい顔になった。
だけど部長は、『いくら相手がかわいいからって』という言い方をしていたので、もしかしたら社長は容姿以外の部分をかなり重視しているのかもしれない。
「もったいない。俺が社長みたいなイケメンに生まれてたら、女の子をとっかえひっかえして遊びまくりますけどね。一日でいいから顔を交換してほしいくらいですよ!」
腕組みをして力説をする氷室くんを目にして思わず笑ってしまう。
社長がたくさんの女性と遊ぶだなんて、そんな軽率な行動は絶対に取らないだろう。
「あ、ウソ! 今のは冗談だから。本気じゃないからな!」
なぜか氷室くんが私に向かって誤解するなとばかりにあわあわと弁解を始めた。遊び人のイメージを持たれたくないのかもしれない。
「別に氷室くんが遊んでてもいいよ。私には関係ないじゃない」
そんなふうに静かな口調で返事をした途端、隣にいた伊地知部長がトントンと軽く机を二回叩き、アハハと大声で笑った。
そんなにおかしなことを口にしただろうかと驚きながらふたりの様子をうかがっていたら、氷室くんは参ったとばかりにげんなりとした顔で頭を抱えていた。
彼は酔ったのかもしれないが、伊地知部長はアルコールに強いので、お酒のせいで爆笑したわけではないと思う。
「氷室くん、今のカウンターパンチは効いたね」
「部長に笑ってもらえたのが救いです」
「個人的な意見だけど、もっとわかりやすいほうがいいと思うよ。どっちなんだかよくわからない態度が一番困る」
伊地知部長がジョッキを手にしながらアドバイスらしき言葉を贈っているけれど、私には話の内容がさっぱりわからない。
氷室くんは若干顔を赤くしつつ納得するように小さくうなずいていた。
「結局、部長はなにについて大笑いしたんですか?」
素朴な疑問として尋ねてみたが、部長は「いいのいいの。気にしないで」と濁して教えてはもらえなかった。
視線を氷室くんに移すと「とにかく俺はチャラくないから」と再び力説されたので、首を縦に振っておく。
「そうだ、社長がサーフィン好きだって噂で聞いたんですけど本当ですか?」
話を変えようとしてなのか、氷室くんがわざとらしく人差し指を立ててつつ部長に質問をした。
「それは半分当たってる。専務がサーフィン好きなのよ。社長は専務に誘われて一緒に行ってるんだと思う」
社長の趣味はソロキャンプだと辰巳さんから聞いていたから、サーフィンのイメージはなかった。
社長がサーフボードを持って浜辺を歩く姿はさぞかしカッコいいのだろうな、と頭の中で想像してみる。
もしかしたらマリンスポーツもウインタースポーツも、なんでもできるすごい人なのかもしれない。
「専務もかなりモテそうですよね。でも浮いた話を聞かないのはなんでですかね? 社交的だから女の子が群がりそうなのに」
「さぁ、なんでだろうね」
氷室くんがするのと同じように部長はおどけて首を捻っていたけれど、本当はなにか知っているような気がした。
だけど本人のいないところで勝手にペラペラと喋るわけにいかないので誤魔化しているのだろう。
コメント
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伊地知部長の「昔から女性関係はクリーン」という言葉、すごく気になりました。社長が容姿じゃなくて中身を重視してるタイプだってことがにじみ出てて、そこに主人公が「もしかしたら」と考えを巡らせる流れが自然でいいですね。氷室くんの焦りながらの「チャラくない」アピールと、それに対する主人公のサラッとした返しも好きです。編集者的に言うと、飲み会の雑談の中にそれぞれの距離感や価値観がじんわり詰まっていて、読んでいて温かい気持ちになりました。続きが待ち遠しいです🌷