『聞いてよK』
『どうしたの、Amia』
『友達同士で手はずっと繋ぐかな』
『いや、私もそういう知識はあまりないけど、流石にずっとではないんじゃないかな……?』
『まあだよね、普通そうだよね』
『それがどうかしたの?』
『あのさ、ボク絵名と二人で遊びに行ったんだけどさ』
『それはだめだよまふゆが嫉妬──』
『その時さ、絵名に手を繋がれたんだ』
『え、えっっっ!?』
『ボクもその反応したよ! びっくりしてもう声出しちゃって、周りの人に見られて恥ずかしくなったよ。でも絵名はきょとんとしてるの。ボクが悪いのこれ、みたいな。そんなことないでしょ、ボク悪くないでしょって思いながら、絵名に聞いたの。どうしたの急にって』
『うんうん』
『でも絵名はきょとんとしてるの。え、瑞希こそどうしたのって言い出して。いや手、手。手だよ、ってもうどもっちゃってさ、もうびっくりじゃん、いきなり手繋いでくる? ムードもないよ、さらりとだよ、もしかしたらボクが常識無いのかなって思うくらいにあれは自然だったからね』
『なんだそれおかしいよ』
『それで絵名はちょっと考えてから、はっとした顔をして、めちゃくちゃ恥ずかしそうにしたの。いや、気づくの遅いよって。幼児退行の名残? みたいな』
『幼児退行の名残とか普通考えないよ思いつかないよ何言ってるの?』
『ボクはパニクってたの。それで絵名なんて言ったと思う?』
『えー、家族と間違えたとか?』
『あ、惜しいね。奏の好きなやつだよ』
『これが惜しいってどういうこと。まさか、まふゆと間違えたとか? まさか、ないない。そんなのもはや恋人──』
『そう、その通りなんだよ』
『えっっっっ、まってまってまって』
『絵名言ったんだ。ごめん、まふゆとずっと手を繋いでるからつい癖で。癖、癖、どんな癖。そんな癖か。ないよ、なんだそれラブラブカップルじゃん』
『超えてきたよ超えてきたよ〜』
『で、ボク聞いちゃったんだ。付き合ってるの? って』
『わたしも聞いちゃうよ、もう付き合ってるよねそれ』
『そしたら、付き合ってないって!』
『おかしいよこの世の中!』
『なんで、なんで手を繋ぐんだ。なんで手を繋ぐんだ!』
『隠せてないよ!』
『ボク言ったよ、なんで手を繋ぐんだって。癖って何って、聞いちゃうよね、事実はもう聞けって言ってるじゃん』
『そうだよね、聞いちゃうよ』
『そしたらね。色々あって、まふゆが繋いでくるようになって、それから歩く時とか一緒にいる時はまふゆがずっと繋いでくるんだって』
『うわぁ……』
『はぁ!? ってなるじゃん。ボクまた声出しちゃって恥ずかしくなったよ。ずっと、ですか。でも今日絵名から繋いできたよねって』
『そうだよね、まふゆから繋いでくるって証言が正しいなら、そうだよね。絵名からじゃんね、相思相愛だよ』
『繋いでないのが違和感で……』
『絵名が?』
『イエスイエス。凄いよねこれ』
『すごいよねそれ、世界文化遺産ストーリーだよ』
『それで、気を付けるねって。ていうか気を付けなきゃいけないほど染み付いてるの。それだけまふゆと一緒にいるの?』
『わたしも外に出よう。そうだセカイに行こう』
『それ外認定なの。で、もう一回聞いたよ。付き合ってるの?』
『隠さなくてもいいよ』
『付き合ってないよ、ちょっと仲のいいただの友達』
『いやいや、付き合ってるよそれ』
『それな、無理だよ』
『でもちょっと仲のいい友達もあり。素直になってる感』
『あー、恋人否定するためにはそうするしかなかったけど、ただの友達がずっと手を繋いで歩くわけないから、仲のいい友達って言おうと思ったところで、それだと癪だからちょっとって付けることによって緩和したツンデレだよね』
『そうだよそうだよそうだよ……』
『K、生きてる?』
『今日が命日。私が死んだら遺言は、“まふゆと絵名が付き合って。そうしたら生き返るから”にしておいて』
『付き合ったら見たいの、Kのエゴ出てるね。付き合ってたらどうするのさ』
『わたしは必要なかったってことだね……』
『あはは。まあ、ボクにはずっと奏が必要だよ』
『ふふ、ありがとう。じゃあAmiaはこれからもまふえな偵察を一緒にしていこうね』
『……はーい』
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