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【ぎゅっとして】
氷点下2℃。
白い息が空気中に溶け込むこの時期。
俺は寒さで痛む手を摩りながら、硬いベンチに腰掛ける。
去年、君と此処で笑い合って、一緒に年を明けた。
3年前、君と出会った場所であり、1ヶ月前の別れの場所でもある。
まだクリスマスの残像が残っているみたいに、イルミネーションもどきが木に飾られている。
黄「…」
別れても尚、此処に来て、思い出に浸る。
未練ったらしくて、自分でも嫌気が差した。
今日で今年も最後。
君との最高な年であり、一番最悪な年だった。
『俺より良い人がきっと見つかるよ。』
そんな人、見つかる訳ないのに。
君は少し自由奔放で…たまに我儘。
だけど、そんなの忘れるくらい、
優しくて、面白くて、一緒に居るだけで落ち着けて、包み込んでくれる。そんな人だった。
黄「…はぁ、」
目頭が熱くなる。目が潤む。スマホに映っているメッセージ画面に水滴が落ちる。
…ねぇ、もういっかい。
一回だけでいいから。
黄「……あいたぃっ、。…」
黄「…っえ、、」
突然、首が暖かく包まれる。
痛かった耳がじんわりとあったまるのを感じる。
「…風邪引くよ」
心地いい大好きな声が上から降り注ぐ。
上を向くと、紅くて綺麗な瞳と視線が絡み合った。
黄「なんで…っ、?」
緑「……ごめんね、やっぱ俺むりだった」
声が震えているのがわかった。
マフラーを巻いてくれた手に力が込められているのがわかった。
だけど、陰で表情がよく見えない。
ただ、紅色の瞳が涙を溜め、キラキラと輝いているのだけがよく見える。
黄「…泣かんといて……」
緑「なんでみこちゃんは泣いてるのに俺は泣いちゃだめなの…笑」
黄「ぇっと…悲しいから…、?」
緑「…優しいね。俺、みこちゃんに酷いことしたのに」
“酷いこと”と言われれば、確かにそうなのかもしれない。
俺の有無をも聞かずに、別れを告げて消えたから。
緑「…みこちゃん、?」
俺は後ろに立っている君の腕を引いて君の体を俺に覆い被させる。
黄「…おねがい。このまま居させて」
そう言うと、君は俺を抱き締める力を強めた。
黄「へ、…」
緑「…こっち向いて」
優しい声色の惹かれて、俺は後ろを向く。
すると、暖かく柔らかい唇が重なった。
唇を離すと、君の瞳と目が合った。
緑「……もういっかい、俺に君を愛させてくれませんか?」
身体が、顔が、目頭が、熱くなる。
黄「…はいっ、」
あの日出会った場所で、あの日別れた場所で、この日結ばれた場所で
貴方の大きな身体に包まれながら、俺は眠りに落ちた。