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分かる。自分以外の体温って落ち着きますよね。俺は下僕として仕えさせて頂いている、御猫様から体温を拝借させてもらってますわ。一人で寝るよりよく眠れる。
「って、寝てるし」
シャワーした俺は用意してくれていたスウェットに着替えて寝室にお邪魔した···が、若井は一足先にすやすやと気持ちよさそうに眠ってしまっていた。
起こさないようにそうっと頬に触れる。仕事では一緒だけどこんな時間を過ごすのは久しぶりかもと思い、ふぅ、と小さくため息をついた。
若井が何も言わないのを良いことに少し甘えていたことに反省する。長年の付き合いだし、分かっている、分かってくれているという甘え。
けどそんなものは脆く、例え言葉にしたって分かり合えないこともある世の中でただ都合よく若井に甘えていただけだと気付いた。
···いや気付かされるきっかけをくれたから。
それがなければ今この時もすれ違い続けていたかもしれない。
昨日遅くに涼ちゃんから届いたメッセージを広いベットの中、若井の隣にそっと横たわりきりっとした眉毛や少し開いている可愛い口元を眺めながら思い出していた。
『お疲れ様。最近忙しいのは分かるけど若井のこともうちょっと気にかけてあげたら?今日も僕のところ来てたけど見てられないよ』
涼ちゃんにしては強めの口調で、けどこれは若井のことになるとそう珍しいことじゃない。
『本当に時間なくて。けどまた会うときはフォローしとく、ありがと』
『元貴が若井を泣かせるなら僕が代わりになるから。それでもいいの?』
その意味を少し考えてしまう。
俺の代わりになる、って一体どういう意味なのか。代わりに慰めて優しくしてあげる···でもそれは“仲間”として?
それとも“恋人”の代わりになるってこと?
涼ちゃんの真意がこの文面だけでは掴めないが、後者の意味合いが色濃い気がして俺は気づけば強く携帯を握りしめていた。
『代わりはいらない。ありがと』
そう送ると了解、と可愛いキャラクターのスタンプが送られて来てそこでやり取りは終わった。
そしてそのやり取りは俺の頭から離れることなく、若井に会えるかどうかのメッセージを送り今に至った、というわけだ。
結果的に今夜無理をしてでも会っておいて良かった。本音が聞けたしかなり寂しい思いをさせていたこともわかったから。
「涼ちゃんと仲良すぎるのもなぁ···って感じなんですよ、俺も」
ちょんちょん、とその頬を軽くつついてやる。
何かと相談したり泣きつきに行くなら涼ちゃんと決めている若井にそんなことは言えないけれど時折見せる涼ちゃんのどう捉えればいいのかわからない言動に俺だって焦る時があるのだ。
むにゃむにゃと何かを呟く若井の口元に俺は耳を近づける。
「もときぃ···いいよぉ···しゅきぃ」
夢の中で俺は何をされているのか、と如何わしいことが一瞬よぎる。まぁ幸せそうなら何より、と結論付けて俺はその唇からキスを貰う。
俺を好きだという顔も、なんなら寂しいと泣く姿も、少し拗ねた顔でさえ可愛くて愛おしい。もっと大切にしなければいけないよな、と改めて思う。近くに狙っている人もいるわけだし、と。
若井の背中に顔を寄せる洗剤やシャンプーや色々と混ざった若井の匂いに包まれてつい、クンクンと匂いを嗅いでしまう。やっぱり若井とこうしていると幸せだ···腕を回して背中に抱きつくと久しぶりに穏やかな気持ちで俺も眠りにつくことが出来た。