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「かいてぃー。…いや、621番。」
「…210番とは、どんな関係だったの?」
彼は一瞬だけ迷いを見せ、すぐに微笑んでこう言った。
『戦友、だ。』
その時のかいてぃーの表情には一切迷いはなく、清々しい笑みを浮かべていた。
俺の処刑を担当するのはなろっちだった。
なろっちは処刑場に立った俺を苦痛の表情で見つめた。
「…なぁ、もう会えないんだからいつもの笑顔で見送ってくれよ。」
俺は人殺しの犯罪者を逃がした大罪人だ。聞き入れてくれるとは思ってなかった。
でも、なろっちは最後まで優しかった。
泣きそうな顔を無理やり歪めて、笑顔を作ってくれた。
いつものそれとは全然違くて、下手くそな笑顔だったけど、それでも俺には十分だった。
『かいてぃー。…いや、621番。』
『210番とは、どんな関係だったの?』
急に投げかけられたその問いに、俺は一瞬だけ迷ってしまった。
恋人だ、と言ってやりたかったけどきっとあいつはそんなこと思ってないだろうから。
だから俺は、俺達に一番似合う言葉を言った。
あいつに情けない最期だと笑われないよう、とびっきりの笑顔で。
「戦友、だ。」
『ねぇ、心に決めた人ってどんな人だったの?』
『翔様が決めた人なんだから、きっと物凄く綺麗な方なんでしょうね』
『彼女?それとも、もう結婚してたの?』
『翔くんのことだから、彼女じゃなくて親友だったりして!』
心友、と聞いていつでも元気な灰色の髪のあいつを思い出した。今はちょうど自由時間だから、また昼寝でもしてるんだろう。
…懐かしいな、と少しばかり、思ってしまった。
俺が何も答えないのを見て、こいつらはまだ質問を続けてくる。
『え、ほんとに彼女じゃないの?』
『どういう関係だったかくらい教えてよ!』
少しだけ答えを迷ってしまった。
恋人だ、と言いたい所だけどきっとあいつはそんなこと思ってないだろうから。
俺たちは恋人じゃない。
親友とか、仲間とか、そういうのでもない。
なら、僕らに似合う一番の言葉は。
「戦友」
呟いた瞬間、すっと胸に染み渡る。ああ、これだ。僕らにぴったりな言葉じゃないか。名前も知らない真っ赤なカクテルに口をつける。
僕を生かすために命を捧げた馬鹿なあいつの瞳にそっくりな色の。
なあ、かいくん。
たった一人で監獄を抜け出したとき、僕は死のうと思ったんだ。
僕が唯一心から愛せた人、一生一緒に居たいと願った人。
そんな人が自分のせいで罪を犯したんだ。死刑にされるんだ。
もうこの世にいないかもしれないんだ。
もう、二度と笑いあえないんだ。
そりゃあ死にたくもなるだろう。
でも、僕は思いとどまった。
なぜなら、君に笑われたくないから。
君に馬鹿にされるのが悔しいから。
僕は、君に二度も命を救ってもらったんよ。
きっと、僕は死んだら地獄に行くだろう。
君は天国かもしれないけど、最後に死刑になるほどの罪を犯したんだから、きっと地獄に行ってるんじゃないかな。
だから、僕が死ぬまでちょっとだけ待ってて欲しい。
君がくれた命、大事に使っていくから。
いつかまた会えたとき、笑って自慢できる様な人生を歩んでいくから。
僕らは恋人じゃない。
愛しあっていたかなんて今はもう分からない。
でも、少なくとも僕はかいくんのことを愛してた。
だから、今はそれだけで十分だと思う。
僕がかいくんのことを忘れない限り、愛し続ける限り、かいくんは僕の中からいなくならない。
今日は土曜日。
何処かで15時を告げる鐘が鳴った。