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6 - 第6話 全部、消し去ってやるからな

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2025年05月07日

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pn視点


「トラゾー、あいつは俺らで懲らしめておいたからな!」


「殺すって物騒なことあの人たち言ってたけど…ホントに懲らしめただけなんだよな…?」


しにがみくんとクロノアさんがテヘペロしていた。


心配そうに俺を見るトラゾーに嘘をつくのは忍びないが仕方ない。


「うん、ホントだよ。トラゾーが嫌がるようなことはしない」


ほっと息を吐いたトラゾーのほっぺを摘む。

うまいこと嘘が通じたようだった。


「いへっ⁈」


「お前は自分のこと考えろよ。自分のこと蔑ろにばっかするから熱出すんだよ」


「ゔ…」


図星を突かれたトラゾーは気まずそうに目を逸らした。


「……けど、ごめんな」


「え?」


「トラゾーに嫌な思いさせた」


「、……」


「何が守る、だよな。大事な奴のピンチに気付かないなんてさ」


不甲斐なさに唇を噛んだ。


「…ぺいんとたちは悪くないよ。それに、ぺいんとが早く気付いてくれたお陰で、未遂で済んだし……そもそも、油断してた俺が…」


「トラゾーはなんも悪くねぇじゃん。それに、怖い思い結局させたんだから……もっと俺が気を付けて周り見てたら…」


「でも…」


1人で全部抱えようとする。

そうやっていっつもしんどいこととかを隠して、俺たちに心配かけないようにして。

そういうところだけは嫌だ。


俺が暗い顔をすればするほど、トラゾーを追い詰める。

優しい奴だから、俺らには底抜けに。


「…もー!キリがねぇって!俺らは誰1人悪くない!あの男が悪者!それでいいの!!な⁈」


しにがみくんもクロノアさんも頷いている。


「そうですよ、悪いのはあの男だけです。トラゾーさんも僕らも悪くない」


「そうだよ。悪者は1人だけ、俺らは何一つ悪いことはしてない」


「「「わかった?」」」


「わ、わかった」


俺らの気迫に押されてトラゾーはそう返事した。

俺はほっと息を吐いてトラゾーが今着ている黒いワイシャツに手をかける。


「はいじゃあ、トラゾー体見るから服脱がすよ」


「は?」


「「は⁈」」


急な話題転換にポカンとするトラゾーと焦る後ろの2人。


「もしかしたら怪我してるかもしんねぇじゃん。よく見てないし」


ボタンを外そうとしたところで慌て出した。

いや、遅い。

ホント、俺らに対して無防備すぎないかこいつ。


「いやいやいや大丈夫だから!俺、丈夫だから!」


後ずさろうとするトラゾーの腕を掴む。

確かに体格は俺らよりいいけど、掴めてしまうくらいの細さである。

なんていうかちょうどいい感じの筋肉のつき方。


「心配なんだよ……ダメか?」


「うぐ…」


優しいこいつは俺らの願いは無碍にしない。

できない。


「トラゾー…」


「………じゃあ、オネガイシマス」


俺の真っ直ぐな(フリをした)目に折れたトラゾーは小さく呟くように言った。


「(こいつ、俺らのこと信頼しすぎだわ。逆に心配になる)」


「ん、素直でよろしい」


「そ、その代わり、自分で脱ぐ、から…」


流石に恥ずかしいみたいで、クロノアさんのパーカーを脱ぎ、シャツも脱いだ。


3人にじっと見られてるからか恥ずかしさで俯いている。

短い黒髪から覗く耳は真っ赤だし顔を隠す袋は手元にない為赤く染まった顔も丸見えだ。

首まで赤くなってる。


「あ、ここ」


しにがみくんが脇腹ら辺をつつく。


「ぁう…!」


びくりとトラゾーの体が跳ねた。


「擦り傷ができてる」


傷をなぞるようにして触るしにがみくんの手をトラゾーが掴む。


「しにがみさん、擽ったい、から…ゃめて、よ…」


トラゾーは抵抗にもなってない抵抗をして眉を下げた。

クロノアさんがそんな無防備になっていたトラゾーの背中をなぞった。


「ふぁ…っ⁈」


「これ、」


みんなでそこを見れば、あからさまな赤い痕がひとつポツンとついていた。


ふつりとみんなから殺気が滲み出る。


「「「(もっと酷い目にあわせれば良かった)」」」


「ちょ、っ…くろのあさん…?」


クロノアさんはその痕をぐっと押した。


「痛っ…ぇ、なに…?」


「…トラゾーちょっと我慢してね」


絶妙な力でそこを押し続ける無言のクロノアさん。

普段怒んない人が怒ると怖いのはホントのようだ。


「ぃ、あ…え、な…んっ…ぅあ…!」


ぎゅっと手を握りしめ、何とも言えない表情を浮かべるトラゾー。

いつもの落ち着いた少しだけ舌足らずの低い声は困惑したように上擦っている。


「待っ…や、…」


「はい、いいよ」


クロノアさんが手を離した。

そこにはあいつのつけた赤い痕を消し去るようにして、真っ赤な痕にと書き換えられていた。


「なん、…ですか…?」


「うん?ナイショ」


トラゾーの全く訳が分からないと言う顔。

分からなくていいのだ、一生。

あんな人間がつけたものなんて、知る必要はない。


「えぇ…」


「なぁトラゾー」


「…ん?どした、ぺいんと…?」


困り顔のまま俺の方を向く。


「俺さ、トラゾーのこと好きなんだよな」


「?俺もぺいんとのこと好きだよ?」


首を傾げて当たり前のように言う。

クロノアさんが少しムッとした顔をしていた。

小さく「俺の時より躊躇いがない…」と呟く声がした。


「俺の好きはさ、こう言う意味だよ」


「へ?」


肩を引き寄せてキスをした。


「⁈、っ!」


「ちょっとぺいんとさん⁈」


騒ぐしにがみくんを無視して驚いて口を開けたトラゾーの口内に舌を入れる。


「へぁ…っ⁈」


どうしていいか分からず、所在なさげにしている手を握った。


「っ、ぁ…ふ…!」


縋るかのようにぎゅうと俺の手を握り締めて、感覚から逃れようとしている。


「ふっ、ぁ…」


口を離すとトラゾーは生理的な涙が溜まっていてキッと力なくこっちを睨んでいた。


「なに、しへ…んらよ…っ」


その言動全てがこっちを煽ってるなんて微塵にも思ってないんだろう。


「トラゾーさん、僕もトラゾーさんのこと好きですよ」


「ぅえ…⁈」


「トラゾーさんは?」


「え、?好き、ですけど…」


嬉しそうに笑ったしにがみくんはトラゾーのほっぺを包んでキスをした。


「ひょあっ…⁈」


俺としにがみくんって似てるとこあるから、ねちっこいんだよな。


「も、な…なんれ…?」


舌が回らなくなって肩で息をし出したトラゾーににっこり優しく笑ってクロノアさんが近付いた。


「くろのあさん…?」


「俺もトラゾーのこと好きだよ。さっきも言ったけど」


後頭部を掴んで、ぐいっと自分の方に寄せた。


「ふぁ…っ⁈」


隙間が無いくらいの密着具合である。


「クロノアさんって淡白そうだけど、そうじゃないよね」


「ですねぇ。それに何だか怒ってる?」


「ぁ、う…っ…は…ふっ、ぁ…!」


苦しいのかトラゾーはクロノアさんの胸を叩いているけど、当の本人は離す気は全くないようだ。


「ん、ン…ッ!」


そうしてやっと解放されたトラゾーは完全に力が抜けてクロノアさんに凭れかかった。


「は、ぁ…ッ、ふ…」


「ははっ、トラゾーこんなんでバテてたらダメだよ」


耳元で囁くようにしてクロノアさんが笑うとトラゾーが大きく体を跳ねさせた。


「ッツ…⁈」


「……あれ?もしかして、俺の声でイッちゃった?…可愛いね、トラゾー」


「ち、違っ…!」


隠すことができないのに足を擦り合わせてどうにかしようとする姿に加虐心を煽られる。


「ほら、俺らの前なんだから隠さなくていいよ」


クロノアさんはトラゾーを後ろから抱えて両足を開いた。


「っ、ゃめ…!」


顔を手で覆い隠して俯くトラゾー。


「嬉しいよ、俺らでこんなになってくれて」


「くろのあさん、いじわるですっ…ゃだ、きらい…っ」


幼い言い方でそう力なく言った。

いつもの語彙力どこ行ったよ。


「「「(まぁ、こういうとこが幼女なんだよなぁ)」」」


こいつの真面目でしっかりしてて頭良いのに、変に抜けてるとこや思ったよりポンコツになるとことか訳分かんないとこで頭悪くなるとこがクッソ可愛い。


「本当に嫌い?俺、悲しいな…」


作った寂しそうな顔をするクロノアさんにトラゾーがハッとして慌て出した。


「ちが、ちがくて…っ、きらいは、うそですからっ……くろのあさん、ごめんなさい…」


あー、マジで幼女だわ。

これは丁重に保護しておかんとダメだ。


「ぺいんと…またやばい顔になってるよ」


「いやいや、クロノアさんだって…」


「あんたら2人ヤベーですから」


「「しにがみくんもな(ね)」」


「みんな、顔怖いって…」


まるで飢えた狼に囲まれた美味しそうな羊だな。


「トラゾー、俺らで全部塗り替えてやるよ」


「僕たちがいっぱい消毒してあげますね」


「俺たちのことしか考えられなくしてあげるから」


「「「大丈夫だよ、トラゾー(さん)♡」」」


でもあいつの時みたいに嫌がった顔しないのは、そういうことだよな。


「だ、大丈夫じゃないぃ…!」


涙いっぱいの顔で情けない声を出す可愛い可愛い俺たちのトラゾー、お前は俺らが一生守ってやるからな。

だって好きだから。

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