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桜「――蘇枋!!」
聞き間違えるはずがない。
桜くんの声だった。
俺は壁に背を預けたまま、思わず笑った。
蘇枋「……本当に来たんだ」
足音が近づいてくる。
怒鳴り声。
何かがぶつかる音。
どうやら、かなり派手に暴れているらしい。
蘇枋「……相変わらずだなぁ」
俺は小さく息を吐いた。
身体はまだ重い。
それでも、さっきまでより少しだけ気分が楽だった。
助けが来た。
その事実だけで、こんなにも安心するものなんだな。
桜「蘇枋!」
扉の向こうから声がする。
俺は顔を上げる。
蘇枋「桜くん」
桜「いるのか!?」
蘇枋「うん。ここだよ」
直後。
大きな音とともに扉が開いた。
桜「蘇枋!」
桜くんが飛び込んでくる。
その顔を見た瞬間、俺は少しだけ驚いた。
――ものすごく怒っている。
蘇枋「……遅かったね」
桜「お前な……!」
桜くんがこちらへ近づく。
桜「なんでそんな顔してんだよ」
蘇枋「どんな顔?」
桜「笑ってんじゃねぇ!」
蘇枋「だって、桜くんが来てくれたから」
桜「……!」
桜くんが一瞬黙る。
それから、視線を逸らした。
桜「……当たり前だろ///」
小さな声だった。
蘇枋「仲間…なんだから…」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
蘇枋「……そっか」
それだけ言って笑った。
桜「立てるか?」
スン「たぶん」
俺は壁に手をついて立ち上がろうとした。
――けれど。
蘇枋「……っ」
足に力が入らない。
身体がぐらつく。
桜「おい!」
桜くんがすぐに腕を掴んだ。
桜「無理すんな!」
蘇枋「大丈夫」
桜「それ何回目だよ!」
蘇枋「……数えてないなぁ」
桜「笑ってる場合じゃねぇ!」
桜くんは呆れたように息を吐いた。
でも、腕は離さなかった。
桜「歩けるか?」
蘇枋「うん」
一歩。
なんとか進む。
けれど、身体は思っていたより限界に近かった。
蘇枋「……桜くん」
桜「なんだよ」
蘇枋「少しだけ、肩借りてもいい?」
桜「……最初からそう言え」
桜くんが俺の身体を支える。
蘇枋「ありがと」
桜「礼はいい」
ぶっきらぼうな返事。
でも、その声はさっきより少し落ち着いていた。
外に出る。
夜の空気が頬に触れた。
蘇枋「……外だ…」
思わず呟く。
たったそれだけのことなのに、妙に安心した。
風鈴に帰れる。
そう思った瞬間。
張りつめていたものが、一気にほどけた。
蘇枋「……あれ」
視界が揺れる。
桜「蘇枋?」
蘇枋「ごめん。ちょっと……」
次の瞬間。
桜くんの肩に体重を預けていた。
桜「!?」
桜「おいっ!! 」
蘇枋「……眠いだけ」
桜「…寝るな!!」
蘇枋「寝ないよ」
そう答えたものの。
瞼が重い。
蘇枋「……桜くん」
桜「なんだ」
蘇枋「迎えに来てくれて、ありがとう」
桜「……」
返事がない。
しばらくして。
桜「……だから、当たり前だって言ってんだろ///」
その声を聞きながら。
俺は目を閉じた。
今度は怖くなかった。
しばらくして。
目を覚ますと、見慣れた天井があった。
蘇枋「……ここ」
風鈴だ。
身体を起こそうとすると、
桜「起きたか?」
声がした。
蘇枋「……桜くん?」
桜「お前、寝すぎ」
蘇枋「そう?」
桜「そうだよ」
桜くんは椅子に座っていた。
俺が起きたのを確認すると、少しだけ安心したような顔をする。
桜「体調は?」
蘇枋「だいぶ良くなったよ」
桜「本当に?」
蘇枋「本当」
桜「……ならいいけど」
桜くんが立ち上がる。
そして、少しだけ迷ったあと。
桜「次から」
蘇枋「ん?」
桜「具合悪ぃなら、ちゃんと言え」
蘇枋「……」
桜「隠して倒れる方が迷惑なんだよ」
蘇枋「……ごめん」
珍しく、素直に謝った。
桜くんは少し驚いたようだった。
桜「……別に、怒ってねぇ」
蘇枋「怒ってたじゃん」
桜「怒ってねぇ!」
蘇枋「ふふ」
桜「笑うな!」
やっぱり。
いつもの桜くんだ。
俺も笑った。
そして、ふと窓の外を見る。
朝の光が差し込んでいる。
あの場所に連れていかれたときは。
もうここには戻れないかもしれないと思った。
でも。
帰ってこられた。
俺を探してくれる人がいた。
迎えに来てくれる人がいた。
蘇枋「……桜くん」
桜「ん?」
蘇枋「俺、風鈴に来てよかったな」
桜「……急に何だよ」
蘇枋「なんとなく」
桜くんは少しだけ黙って。
桜「……俺も」
小さく呟いた。
桜「お前がいてよかったと思ってる」
蘇枋「……」
今度は、俺が何も言えなくなった。
蘇枋「……ありがとう」
それしか言えなかった。
桜くんは照れくさそうに顔を逸らす。
桜「ほら、まだ休んどけ」
蘇枋「はいはい」
桜「返事は一回でいい!」
蘇枋「ふふっ」
笑い声が部屋に響く。
昨日までの不安が、少しずつ遠ざかっていく。
もう、無理に笑わなくてもいいのかもしれない。
大丈夫じゃないときは。
ちゃんと「大丈夫じゃない」と言ってもいい。
――俺には、帰る場所があるから。
一応完結です!!
今回ハピエンだったので、次バトエン書こうと思います。
ここまで見て下さりありがとうございましたm(_ _)m
良ければ他の話も見て下さると嬉しいです!!
mira
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コメント
1件
蘇枋くんが無事で本当に良かった…!桜くんが迎えに来てくれた場面、声を聞いて笑うところからもう胸がいっぱいでした。「当たり前だろ」って照れながら言う桜くんの優しさが刺さります。最後の「帰る場所があるから」という一文に全部の安心が集まって、じんわり温かくなりました。ハピエンありがとうございます…!次はバトエンとのこと、楽しみにしてますね🌷