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「美味いな!この酒は何で出来ているんだ?」

ご機嫌な国王へ、俺は恭しく答える。

「製法は存じ上げませんが、穀物が主原料にございます。

風味は樽に長期間漬けることで増すとか。後は樽に何の木を使うかでも変わるそうです」

「ほお。面白いな。同じような蒸留酒を飲んだことはあるが、ここまで洗練された物ではなかった」

ウイスキーはあるようだな。まぁ、この世界のお酒には期待していないから飲まないけど……

「こちらはワインですが、炭酸が入ったものになります」

説明をきちんと聞いてくれるのもあって、俺も興が乗って色々なお酒を出しては説明をした。

あれ?意外に相性良い?

でも相手はおっさんなんだよな……

聞いたところまだ30代だけど。

何で王族ってどこの人もイケメンなんだ?この世界限定か?

この王様も金髪の偉丈夫だし。髭がお似合いだこと……

「では、カイザー様は晩酌はされないと?」

カイザーとはこの王様の名前だ。名は体を表す。

カイザー・セイレーン・ナターリアと言う名前。国王は建国王の大魔道士ナターリアの子孫。この国に貴族はいない。誰でも成り上がれるが世襲制ではないので一代限りだ。

殆どの領地 が魔導士の領主で、実権は魔導士協会が握っているようだ。

国王に決定権はあるが、殆ど形骸化されており、今やハンコを押す人だ。

要するに平和ってことだな。

一代限りのお陰でクーデターも起こりづらいし、実際に起こせるくらいに優秀なら、それなりの地位にいるので、それに満足して起こす人もいないだろう。

だが、国は徐々に腐って行くものだ。特別な手入れがない限り。

要は、利権を貪る奴らや、一代限りのくせに親の七光りで能力がないのにある程度の地位につく輩が出てきているということ。

その一人が商人組合長だった。

この国ではそこまでの権限がないので放っておいたが、良質の砂糖や胡椒の取引を私利私欲の為に台無しにしたことを、国の不利益と国王が判断した。


「晩酌をすると妻が怒るのだ…たまには飲酒を休まないと身体に障るとな」

「良き奥様ですね。私の仲間もよく怒ってくれます。偶に度が過ぎるので困りますが…」

お酒をやめないとバーンさんにミランと一緒に寝たことを言うとか……

かなり語弊があるし、そもそもあんたのせいや、と言いたかったが、言えるはずもなく……

「おお!セイもであったか!だからこういった息抜きが必要なのだ!他にはあるか??」

「これはとっておきですが、陛下になら出させて頂きます!」

俺は日本酒を取り出した。

この前、向こうに一泊で帰った時に買った、とっておきの日本酒だ。

こういう特別な酒は人と飲むに限るからな!

「何だこれは?」

コップに注いだ日本酒は透明だ。もちろんよく見れば若干の濁りのようなものに気付けるが。

「まさか、この期に及んで水ではあるまいな?」

「私がその様なことをすると?物は試しです!飲んでください!ぐいっと!」

最早、毒見などない。

老人は毒見のし過ぎで、既に酔い潰れているからな。

「むっ!!こ、これは…」

毒見もなく飲んだお酒でその反応をするなっ!

護衛の騎士の視線が鋭くなったやないかっ!!

「美味いっ!!これぞ酒という感じがする中にも、何やらフルーティな味わいが隠れておるな!」

「そうでしょう、そうでしょう」

わしゃ満足じゃい。


その後、困った騎士が呼んできた王妃が来るまで、俺たちの酒盛りは続いた。






「あれ?ここはどこだ?」

見慣れない天井…いや、ガチで……

「お目覚めになられましたか?」

えっ!?人いたの!?どこ、ここ?!?

「え、ええ。ここはどこですか?」

大人になってからこんな事を聞くのは憚られたが、勇気を出して聞いてみた。

「ここは来賓の方がお泊まりになられる、城内にある来賓室です」

ああ。道理でキングサイズのベッドに天蓋付きなわけだ。


画像



天蓋のレースが凝りすぎていて、部屋の全容が見えない上に、話している人すら見えん。

「あっ。そうか。昨日飲み過ぎて…!?しまった!!聖奈達に怒られる!!!」

「それでしたら大丈夫です。王妃様の計らいで、お伝えましたので」

ナイスっ!!!流石酔っ払い国王の奥様!!俺も酔ってて顔も覚えていないけど?

「ありがとうございます」

「いえ。お水をお持ちします」

バタンッ

ふぅ。九死に一生をえるとはこのことだな。

朝の支度を侍女の人達に手伝ってもらいながら終えた俺は、聖奈さん達の元へと向かった。

「恥ずかしかったぜ…危うくパンツまで脱がされる所だった」

お偉いさんは下着も自分で履かないんだな……






「えっ!?全部終わった!?」

エリーの家で合流を果たせた俺は、みんなにその後を聞いた。

「うん!近衛騎士に守られた私達はそのまま商人組合に行って、そこで監査官っていう日本で言えば検事さんみたいな人が組合長に沙汰を告げたの。

その時のあいつの顔は見ものだったよ!」

「今、思い出しても笑えますね」

「パパに言うって捨て台詞には笑いを超えてしまい、過呼吸になるかと思いましたよ」

し、辛辣ぅぅう!

「あっ!それでね?ついでにあの受付嬢もクビになったよ。残念だったね」

「いや、ホントに何も思ってないから。それよりどうしてクビになったんだ?」

しつこいぞ、聖奈さん!!

「つまんないよ?あの二人がデキてて、組合のお金を着服してたってだけだよ」

横領かよ…日本でも大罪人やんけ……

「次の組合長さんも決まりましたよ。その方とセーナさんが話し合って、適正な価格での取引がいつからでも始められます」

「ありがとうミラン。適正って一キロ80,000ギルか?」

「いえ、一キロ100,000ギルと仰っていました」

三人が三方向から話をするもんだから…クビが取れちゃう……

「流石聖奈だな」

どうせ脅したんでしょ…こわーい。

「違うよ。初めは80,000ギルだったけど、エリーちゃんが『この度の落ち度の分が含まれていませんが?』って言ってくれたから上がったの」

おいっ!全員怖い奴らの集まりやんけ!!

俺は肉食系女子に囲まれている山羊だな……

エリー。君は違うと思っていたのに…どうして……

「でも、その後…」

エリーが言いづらそうにしている。はて?

「どうした?」

「実は…組合長ギルドマスター室でお茶を頂いていた時に……

何故かお茶をカップごと飛ばしてしまい……

高級な絵画をダメにしてしまいました…すみません」

うん。ドジな部分はそのままなのね。

どうやってお茶をカップごと飛ばしたのか気になるけど、怪我がないならいいじゃん?

「100万だったよ」

「ん?何が?」

「だから、絵画の弁償代。後で払っといてね」

たけぇー!!

「ま、まぁわかった。どうせ砂糖や胡椒をもう一度持っていかないといけないからな。

それよりもどうやって王族に取り入ったんだ?」

結局、国王に聞きそびれたからな。

「それは王妃様に献上したんだよ」

「…どうやって?」

頭いい人って、話を端折る癖があるのはなんでだろう?

わかりやすいように説明したまえ!

「この街で一番の商店の人に、王族に献上用だと伝えて、下着を色んなサイズとカラーで渡したの。もちろん私達からって伝えてもらったら、すぐに使者の人がその商店に来たみたいだよ」

下着かよ…俺だと変態だと思われるから絶対無理な手法だな。

「下着って言っても、夜に着けるネグリジェや補正下着だよ。これをつけて寝れば体型が崩れづらいってキャッチコピーも伝えてもらったの」

「なるほどなぁ。どの世界の女性も美にはこだわりがあるか…」

それで話の場をもらって、国王に取り次いでもらったのか。

多分、話のように簡単にはいかなかったはずだ。

他にも策を弄したんだろうな。俺に言ってもわからないから言わないくらいで……

「じゃあ、俺はこれから商人組合に行って砂糖と胡椒を納品してくるよ」

「うん!でも、それは朝食を食べた後でね?どうせ飲んでばかりで、昨日もロクに食べてないんでしょ?」

バレとる…そしてやっぱり聖奈さんは女神だ……

チョロい?良いんだよ、男はチョロくて。

俺は朝から二日酔いに優しい朝食を頂いて、商人組合へと向かった。


エリーは俺についてきたが、聖奈ミラン組は他にすることがあると言って、別行動になった。

何をするか知らないが、頼むから俺を虐めないことであってくれ。

一人、そう願っていた。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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