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Yukki
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ザァァ………ザァァ……
「ん……?雨……?」
それに気が付いたのは、荘園に来て間も無い頃。
耳鳴りのように時折嫌な音が聞こえる。
「雨?降ってませんよ?」
「そ、そう…ごめんね、変な事を言って。」
苦笑しながら私はジャックさんにそう言った。気の所為かと思っていた。きっと気の所為だと。
「そう言えば、最近雪や雷雨で太陽を見ていませんねぇ……」
ザァァ……
「…?どうしました?謝必安さん。」
そう言ってジャックさんが顔を覗き込んできた。
話した方がいいのだろうか、そう思ったが、とっくに私の口は開いていた。
「いや……最近耳鳴り…?のような……凄く嫌な音が聞こえて…」
「おや…」
ザァァ……
またあの音が邪魔をする。
「え…?ごめん、今なんて言った…?」
「いや、お二人して耳鳴りなんて、容姿以外もそっくりだと思いましてね。」
二人…?どう見てもここには私とジャックさんしか居ない。
何を言っているんだろうと思い、口を開いた。
「二人して?ここには私とジャックさんしか居ないでしょ?」
そうすると、ジャックさんはキョトンとした顔をしては首を傾げながら言った。
「はて?いつも一緒にいるでは無いですか。相棒がお隣に。」
その後沢山の人に聞き回った。
荘園に居る全員に聞き回って、私はようやく分かった。
ハンターである私達、白黒無常は、ゲーム内ではハンターサバイバー含め片方しか見られない。だけども、ゲーム外では二人同時に見ることが出来るということ。
そして、白黒無常である私「達」には、お互いの姿を認識出来ないということ。
声や姿、手紙や書き置き、匂いや写真、他者を通じた会話まで、その全部が全部。
“荘園主の力で掻き消されてしまうということ”
窓際の椅子に座り机に突っ伏しふと呟いた。
「…私…そんなに悪い事をしたかな…」
思えば思うほど私の罪は浮かんだ。
大事な話なのにも関わらずたかだか雨が降っただけで傘を取りに帰ったこと。
戦場でろくに援助も出来ず無咎の足を引っ張っていたこと。
何度も喧嘩をして無咎を傷付けたこと。
全てが全て私の罪に思えた。
それでも、何処かで「信じたくない」という思いが密かに渦巻いていた。
「……してた。私は無咎を殺した…あんなに優しい人を…。」
机に突っ伏していた頭を動かすと、あるものが目に入った。
色の着いた紙に紐を通した札のようなもの。
そう、七夕の短冊だ。
ここに来る前に泣き虫、ロビーに貰ったもの。
「七夕?」
「そう!この前ミチコが教えてくれたんだ!楽しそうだからみんなでやりたいの!!」
「今は冬だよ?」
「気にしないからいいの!」
「ふふっ、そっか。」
「だから、これにお願い書いてね!ぜーんぶ笹に吊るすから!」
そんな事を言われ渡された。
こんな紙切れに願いを書いたとて。
星に願ったところで。
私の一番の願いは叶わない。
「…織姫と彦星なんて、永遠に会えなきゃいいんだ。」
私は短冊をクシャッと握り締め呟いた。
すると、後ろから声がした。
「おや、随分と縁起悪いことを言うね?」
彼は写真家、ジョゼフ。私の相談相手になってくれたり、一緒にゲームをやってくれる人だ。
「何か御用ですか…?」
「いや、たまたま通りかかっただけだよ。でも、その様子だと短冊は書いていないね?」
「…えぇ。」
小さく頷き、目を伏せる。
短冊を書いたとて…どれだけ願ったところで…。
「……星に願って、無咎の声は聞ける?また共に過ごせる?あの日のことを謝れる?貴方達が私の側の誰かと話す度に、耳障りで嫌な音が止まない。だからここに誰も居ないとは言えない。でも、それが無咎なのか確かめる術は私には無い。」
私は、思いのままに口を開いた。
「本当に…ここに無咎はいるの?」
確かめる術は何も無い。
彼に聞いても掻き消されてしまう。
そんな私には、無咎が居ると信じて罪を悔やむことしか出来ない。
「……ごめん、少し八つ当たりした。」
そう、無咎に会えたとて、私へ突き付けられる事実は1つ。
「……私は人殺しだ。」
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