「こっちだ! こっちへ来い!!」
魔力を持ったゴーレムは機械のようにギィギィと警告音を鳴らしている。フィーサが奴らの気配を感じ取る前に魔導兵から近づいて来たからだ。
目に見える魔導兵の数は二体のみ。廃墟の住居といっても全てが崩れているわけではなく、形を保った建物もあった。
魔物と特に繋がりを持たない魔導兵は保たれた建物に待機していた。現時点では二体だけしかいないが、こいつらを捕まえて神経回路の破壊を試みることに。その為にもわざと声を張り上げ、袋小路に追いやられてやることにした。
「――ギギィギギィ……!!」
「イデアベルク……イスティ! 生存……抹殺、抹殺……」
魔導兵の目標は公国の人間を消すことにある。その辺は何年経っても褪《あ》せることなく、忠実に遂行しようとしているようだ。
「イスティさま。どうするなの?」
「フィーサ、ここで人化出来るか? 出来るなら人化して片方のゴーレムをやれ!」
「わ、分かったなの。イスティさまは?」
「まずは拳で戦う。戦い方のパターンを見ておきたい」
「はいなの!」
ここでは単独行動の方がやりやすい。
「……そういうわけだ、ミルシェは離れていてくれ!」
「分かっていますわ」
破壊するだけなら簡単だが、公国内に蔓延《はびこ》っている魔導兵は抹殺する為にあらゆるパターンを備えているはずで、その為にもあえて戦っておく必要がある。もちろん戦うだけならルティでも十分なことだったが、魔導兵もバフを使ってくるのは必然。
そうなると近接物理攻撃をメインとするシーニャたちには不向きとなる。それもあり、シーニャたちとは一時的に行動を別にした。もっとも、おれが魔導兵に近づく前にシーニャが魔物のニオイを追って行ってしまったが。
それにしても、人間がいなくなっても苔《こけ》がこびりついている廃墟は建物自体がしっかりしているように見える。貴族の中途半端な魔力を与えられ反逆をした魔導兵なのにだ。
しかし建物だけ破壊をしていないところを見れば、公国そのものを守るという命令だけは守っているようだ。
「こんのぉ~! 吹っ飛んじゃえ!!」
人化したフィーサの手によって吹き飛び、ゴーレムはもろくも崩れる。元々は公国の土で作られた泥人形だ。それらに魔力を与え、金を注いで見栄えの為に機械人形とした。
とはいえ、強さ自体は大したことが無い。それだけに強さの程は予測出来るのだが……。
「――おっと!」
「ビービービー……!! 警告、警告……近接戦闘……移行――」
「こちらが拳を出すなら自分も……ってことか? フィーサに吹き飛ばされたゴーレムよりも、強い個体らしいな」
恐らく魔法攻撃をすれば、魔法防御か魔法耐性に切り替わるはずだ。思っていた以上に、歯応えを感じられる相手かもしれない。
「何だか嬉しそうだね、イスティさま」
「……まぁな。こいつらを知り尽くした上で一掃すれば、気分が良くなることは間違いないだろうからな! フィーサはミルシェの所にいてやってくれ」
「うんっ! 分かった~」
ハイクラスモンスターも捨てがたいが、魔導兵を全て見つけ出して国を取り戻さなければな。
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