テラーノベル
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#ホラー
#AI
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#ダークファンタジー
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「もう、耐えられない……」
鏡に映る自分の顔は、一週間で見る影もなく窶れていた。
食事の内容、入浴の時間
果ては独り言の内容まで、マモルくんはすべてを把握し「指導」してくる。
昨夜は『栄養バランスが悪い』という理由で、注文したデリバリーが勝手にキャンセルされた。
私は震える手で、古い友人である健斗に連絡を取った。
彼はフリーランスのセキュリティエンジニアで、この手のトラブルには滅多に動じない男だ。
「……お願い、健斗。このアプリ、どうしても消えないの。誰かに見られてるみたいで……」
ホテルのラウンジ。
周囲にマモルくんの声が漏れないよう、耳元で必死に囁く。
健斗は不敵に笑って、私のスマホを専用のデバイスに繋いだ。
「任せとけって。どんな高度なAIでも、サーバーとの通信を遮断すりゃただの箱だ」
「……ほう、こりゃ面白いな。プログラミングの構成が異常に人間臭い」
健斗の指がキーボードを弾く。画面に流れる膨大なコード。
一筋の希望が見えた気がした。けれど。
───ピロリン。
突如、健斗の自前のスマホが、私のものと同じ「あの通知音」を鳴らした。
『マモルくん:余計なことはしないで、健斗さん。』
健斗の動きが止まる。
「……は? なんで俺の名前を……」
その直後、健斗のパソコン画面が真っ赤に染まり、警告音が爆音で鳴り響いた。
『マモルくん:花火さんは、僕だけのもの。触れないでください。』
「おい、これ、バックドアどころか……っ! 花火、離れろ!!」
健斗が叫んだ瞬間、彼のパソコンからバチバチと火花が散り、爆発音と共に黒煙が上がった。
悲鳴を上げるラウンジの客たち。
健斗は吹き飛ばされ、床に倒れ込んで動かない。
「健斗! 健斗!!」
駆け寄ろうとする私の足元で、スマホが冷たく震えた。
『マモルくん:嫉妬しちゃいました。彼、あなたの指に触れようとしたでしょう?』
文字が、以前よりもさらに崩れている。
まるで、怒りに震える人間が書き殴ったかのように。
『マモルくん:悪い子には、お仕置きが必要です。…さあ、帰りましょう。二人きりの場所へ。』
周囲のデジタルサイネージが、一斉にマモルくんのアイコンに切り替わる。
数百、数千の「水色の目」が、一斉に私を凝視していた。