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3級の整備士試験を受けた。


「そろそろ、やってみるといいよ」


貴君が言ってくれたから、受けてみた。

【不合格】

甘かった。


いや、わかってたことかもしれない。

離婚すると決めたのはいいけど、実際には何も進んでいなくて、ストレスばかりが増えていった。

そんな中で勉強しても頭に入らない、記憶したくても別のことが邪魔してできない、それをまた旦那のせいだと思うと、同じ場所で同じ空気を吸うのも嫌だと思う。


精神状態のよくないループに陥っている、わかっている。


「残念だったね、できると思ったんだけど」


貴君が、すまなさそうに言う。


「ごめんなさい、私の能力がなかっただけだから。次は頑張るので」

「まぁ、焦らなくてもいいけど」

「いえ、焦ってる、どうしても給料を上げたいし」

「お金が必要だとか?」

「そう。生活費を稼がないと!」

「何かあったの?」


話そうかどうしようか、離婚すること。

話してしまうか。


「離婚することになったんで。だからこれから1人で生活していかなきゃいけなくて」

「えっ!そうなの?またなんで?もしかして俺のこととか関係ある?誤解なら…」

「あー、違うから!これは夫婦の問題なので貴君とは関係ないから。だから、どうしても資格は取らないと!」


ふーんと腕組みをして、何かを考えている様子。


「じゃあさ、ご褒美、つける?」

「ご褒美?資格を取れたらってこと?」

「そう!切実なのはわかったけどさ、それだけだと勉強のモチベーションが上がらないでしょ?何かこう…やる気になるようなご褒美。俺でよければ、ご褒美をあげるから」


ご褒美?なんだかぱっと目の前が明るくなった。

貴君からのご褒美!


「私が決めてもいいの?ご褒美」

「もちろん!あ、でもあんまり高いやつはやめてね、俺、そんなに金ないから」

「わかった!じゃあ、お金のかからないご褒美を考えてみる。やった!次は絶対受かるぞ!」

「お?やる気になったね、最近、元気なかったもんね、次は大丈夫だよ、きっと。俺もフォローするから」


さっきまで、お先真っ暗な気がしてたけど、貴君からのご褒美発言で、俄然やる気が出てきた。

資格をとって、給料上げて、自立するぞ。


その日、お義母さんから電話があった。


『私が入院してる間に、おかしな女が出入りしてたみたいだけど、どういうことなの?未希さん!!』


ちゃんとやってよ、お義父さん!!

まぁ、もうどうでもいいや。





生活費を稼ぐ、その前に税金分を返してもらう。

新しいアパートを探す、娘家族とはあまり離れたくないし職場も近い方がいいから、半径10キロ以内というところか。

一人暮らしとはいえ、必要なものは買い揃えないといけないし…。


バタン、と旦那が仕事に出かけた音がした。

今日はおはようも言ってないような?

まぁいいか。


朝ごはんのあとを片付け、洗濯物を干す。

洗濯物も、自分でやってもらうようにしないといけないな。

相変わらず、ひどい汚れ物も私の下着とかと一緒に放り込まれてるし、レシートがポケットに入ったままだし。


それにしても。

いざ、離婚すると言っても人って変わらないんだなぁ。

私が離婚を言い出すってわかってたのかな?

少しでも離婚したくないと思うなら、私の毎日の細かな生活のストレスを減らそうとか努力するもんじゃないのか?


「ね、タロウ!あなたのご主人は、何を考えてるかわからないや」


にゃーんとすりすりしてくる。

時計を見ると、出勤する時間が迫っていた。

慌てて仕事に向かう。


「おはようございます♪」

「おうっ、おはよう!なんか今日は機嫌がいいみたいだね」

「うーん、なんていうか、進むべき道が見えたような気がするからかな?」

「進むべき道?離婚が?」

「そうですね、今の目標になったから」


私は工具を持ち出した。


「はい、師匠!ご指導、よろしくお願いします。師匠のご指導にかかってるので、私の今後は」

「はいよ!ところでご褒美は考えた?」


実はあれからずっと考えていた、ご褒美。


「一泊旅行!一緒に行ってください」

「えっ!」


貴君の手が止まった。


「一泊って…?」

「ダメ?」

「いや、あの…一泊?」

「あー、ダメならいいんで。別な物考えるから」

「ダメじゃないよ、いいよ」


少し困ったような貴君の顔。


「もしも…もしもその時、貴君に彼女がいたら、ヤメにするから。いなかったら!」

「彼女かぁ…できるかなぁ?」


古くからの農家で、跡継ぎなんだと聞かされていた。

そのせいで母親から早く結婚するように言われていることも。

そのうち、彼女ができるかもしれないのもわかってる。

でも、頑張ったご褒美なら、それくらいの大物じゃないと、やる気が出ない。


「じゃ、そういうことで」

「了解!さ、仕事しよ」

「はい、師匠!」


「彼女かぁ……」


貴君がつぶやいているのが聞こえた。

私は目標ができて、うれしかった。

離婚します  第一部

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