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──夜、22時。 食堂の隅で、ロロが泣いていた。
「……俺が、鍵なんて渡さなければ……!」
「ロロのせいじゃないよ」「A兄ちゃん、ちゃんと帰ってくるって」
子供たちが囲むようにして、ロロを慰めている。
その光景を──Bは廊下の影から黙って眺めていた。
(──朝から、ずっと帰ってこない)
Aが出ていったのは、今朝のこと。そのまま連絡もなく、夜になった。
CとQは、Aのあとを追うようにして探しに出た。その二人も──未だ戻ってこない。
どこに行ったんだ──
Bはもう一度携帯を手に取る。メッセージ画面には既に何通もの送信履歴が並んでいた。
『A、まだ帰ってこないの?』
『大丈夫か?』
『一言でいい、返事をくれ』
Bは音沙汰無い携帯をポケットにしまい、自室へと戻った。
「………………」
誰もいない部屋。
テレビの電源を入れる。
音量は小さく、光だけが暗い部屋を照らした。
【Breaking News】
──画面には、燃え上がる機体の残骸。
【民間避難機ストラトス、撃墜】
ニュースキャスターの声が流れる。
「……現地時間本日17時、フランスからアメリカへ向かっていた航空機“ストラトス”が、何者かの指令によって撃墜された模様です」
「……撃墜……」
画面の右下には、テロップが走る。
〈撃墜命令の発信源について、米国防省は明言を避けており──関係者の中には「外部からの非正規アクセスによる制御」が行われた可能性を指摘する声も……〉
Bの表情に、わずかな変化が現れた。
「……Aは、これに、関わってたのか──?」
──その瞬間だった。
ピコン。
「ん……?」
無機質な通知音。
パソコンの画面に、通知ウィンドウが浮かぶ。
Bの視線が、ゆっくりとそこへ吸い寄せられた。
──差出人。
WATARI
「……っ」
思わず、息を呑む。
指先が、わずかに止まった。
クリックするまでの数秒が、異様に長く感じられる。
画面を開く。
そこに書かれていたのは──
『L候補の一人が脱落した。B、Lのバックアップを任せたい』
──L候補の一人。
──脱落。
(A……?)
胸の奥で、何かがひどく嫌な音を立てた。
思考が、ぐらりと揺れる。
「……は、」
自分が今、椅子に座っているのか、立っているのかも曖昧になる。血の気が引いているのに、逆に頭の奥だけが異様に熱い。
「……は、は……」
肩が震えた。
押し殺したはずの笑いが、漏れる。
「はは……っ」
けれど、止まらない。
「はははは……っ……!」
笑い声が、次第に大きくなる。
乾いた笑い。
どこか壊れた音色。
「……はは、はははははははははッ!!」
椅子の背にもたれながら、天井を仰ぐ。
喉の奥で笑いながら、呟く。
「Aが使えなくなったから……次はBか……」
“Back Up”──
名前の意味が、ようやく体の芯に突き刺さってきた。
次は、Bの番だ──