テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#シリアス
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「あんなこと……されてたって…あんな風に言われる、存在だって…知られるの、情けなくて……っ」
必死に手の甲で目を擦る。
「天馬くん、優しい…けど…っ、こんな惨めな僕を見たら、引かれたかもって……嫌いになられたかもって、思っちゃって……っ」
怖かった。
虐められることより、今の僕の唯一の光である天馬くんに
ゴミを見るような目を向けられることが、何よりも恐ろしかった。
「ぼ、僕……天馬くんにだけは、嫌われたく、ない……っ」
すると天馬くんは、僕のその震える手を、そっと、包み込むように掴んだ。
「……そんなに擦ったら、肌が赤くなるだろ」
抵抗できない力で、優しく手を下ろされる。
そのまま、彼は自由になった親指で、僕の頬に伝う涙をそっと拭った。
「……っ」
「泣いても、誰も水瀬を責めないよ」
頭に、ぽん、と大きな手が乗せられる。
「泣いていいし、無理しなくていい」
その声があまりにもあたたかくて、胸の奥が張り裂けそうになる。
「……俺は、水瀬にどんな過去があったとしても」
天馬くんは僕の目を真っ直ぐに見据えて、断言した。
「あんな奴らを軽蔑することはあっても、水瀬のことを軽蔑なんて、絶対にしないから」
「……っ」
「…本当?嫌いじゃ、ない……?」
弱々しく、確認するように尋ねる。
天馬くんは少しだけ困ったような、愛おしそうな顔をして笑った。
「嫌いだったら、わざわざここで降りない」
胸の中の氷が、一気に溶け出していくような感覚。
「……嫌われたかもってすぐ考えるの、昔から?」
天馬くんがぽつりと聞いた。
「……ぅ、うん。き、嫌われるのが、怖くて。一度でも好いてもらえたなら、それが消えるのは、全部僕のせいだって、思っちゃうから……っ」
すると天馬くんは、夜風のような静けさで言った。
「……他人に嫌われたからって、水瀬の価値が下がるわけじゃないだろ。少なくとも、俺の中では」
少しだけ照れたように、彼は視線を泳がせた。
「俺は、こんなことで嫌いにならない」
「……」
「好きだから」
「……っ!」
心臓が、跳ねる。
「…ほんとに?好き……?」
「…好きだよ」
迷いのない、真っ直ぐな肯定。
「だから、もう泣くなって。な?」
「…う、うん……っ、ごめ……」
「また『ごめん』って」
天馬くんが苦笑する。
「俺はさ、『ごめん』より、『ありがとう』って言ってくれる水瀬の方が、好きなんだけど」
「っ、あ…ご、ごめ……じゃなくて……っ」
慌てて、涙でぐちゃぐちゃの顔のまま言い直す。
「ありがとう…助けてくれて、本当に、何度も…ありがとう……天馬くん…っ」
顔を上げた瞬間、間近で目が合った。
天馬くんの瞳の中に、情けない僕の姿が映っている。
けれど、そこにあるのは冷たさではなく、痛いほどの熱だった。