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翔太 side


一向に発車しないタクシーに乗り込むと、亮平は俯きながら泣いている。


翔太💙『運転手さん××まで』


俺の家に着くまでずっと静かに泣いていた。頭をぽんぽんと叩くと、俺のシャツを握り締めて俺の胸に収まった。弟ってこんな感じだろうか?一つ年下の亮平の背中を摩った。

〝早く入れよ〟玄関先で立ち竦んでいる亮平は靴を履いたまま、またすぐに走って逃げそうだった。


翔太💙『先輩に暴言吐いたんだ。謝ってから帰れよ』


芸歴で言えば亮平の方が先輩だ。意地悪く歯を剥き出しにして笑うと、安心したのかようやく靴を脱いで上がってきた。


翔太💙『コーヒーでいいだろっ?』


亮平💚『ごめん』


翔太💙『何にごめん?コーヒー?暴言?それともタクシー代払わなかったから?』


亮平💚『全部だよ全部』


翔太💙『ふふっまとめて謝るなよ』


〝デッカいのがいつまでも突っ立ってんなよ〟そう言ってソファーに座らせると、少し表情が柔らかくなったような気がした。亮平の隣に座ってコーヒーを差し出すと何度も〝ふーっふーっ〟とマグカップに息をかけて十分に冷ましてから飲んでいた。猫舌だっけ?可愛いやつ・・・


翔太💙『悪かったな今日・・・ごめんなこの前から元気ないなって思ってて、つい無神経なこと言ったみたいで』


亮平💚『何で翔太が謝るの?俺が悪いのに・・』


翔太💙『そうかな?どっちが悪いかなんて心の奥でも覗かない限りわからないだろっ。だからお互い謝ってこれで終わりだ!』


亮平は面食らったような顔をして、次の瞬間には顔を赤らめて恥ずかしそうに下を向いた。どういう感情ならこんな表情になるだろうか?普段あまり見かけない亮平の可愛らしい表情に胸が少しドキッとした。


亮平side

自分の想いを翔太は真っ直ぐとぶつけてくる。

翔太のいいところであり、俺の悪いところだ。

嘘偽りのない言葉は、真っ直ぐと相手の胸の中にストンと落ちる。

俺の〝好き〟は一生、胸の中に閉じ込められたままだ。もちろん俺が望んでしてる事だけど時々蓋が開きそうになって心が辛い。


翔太💙『で?何悩んでんの?俺は何の役にもたてないの?』


好きな人から言われれば嬉しい台詞も、悩んでる理由が〝好きな人〟なら状況は一変するんだよ翔太。

言える訳ないだろ…片想いを拗らせてますなんて。

黙っているとバツが悪そうな顔をしている。


亮平💚『ごめん言いたくない・・・』


最悪の雰囲気だ。ここに居ても迷惑だ・・・


翔太💙『おいで亮平今日泊まってけ!』


翔太は腕を目一杯広げて俺が胸に飛び込むのを待っている。何考えてんの?


亮平💚『いや・・・ごめん帰るよ』


翔太💙『いいから来いよ。たまには誰かに甘えても良いんじゃない?俺は今亮平を今抱きしめてあげたいって思った。一人で家に返したらダメだって思った。いいからもっと肩の力抜けよ?』


どうして俺に優しくするの?

どうして俺を元気付けようとするの?

期待しちゃうじゃん。

俺は傷つきたくない卑怯者なんだよ?

期待しても良いの?


翔太💙『おいで亮平・・・きっと明日には上手くいってるよ』


翔太の魔法の言葉に乗せられて、胸に飛び込んでしまった。平凡な日常が音を立てて崩れていく。ガタガタと大きな音を立てて、あらぬ方向に流されていく。翔太…箍が外れた感情の戻し方まだ知らないんだよ…

小さな手で俺の背中を摩っている。

俺はここぞとばかりに翔太に甘えた。

首元に顔を埋め、翔太の匂いが鼻いっぱいに広がると腕を伸ばして背中で手を組んで密着した。長い間翔太を独り占めした。


翔太💙『亮平?落ち着いた?』


まだまだ足りない。もっと翔太が欲しい。


亮平💚『まだ』


翔太💙『また後でこうしてあげるから。お腹空いた。お風呂も入りたいし』


亮平💚『お風呂一緒に入りたい』


かなり大胆な事を言ってみた。翔太は俺の顔を見るなり驚いた表情を一瞬見せたけど次の瞬間には笑顔で俺を受け入れた〝ふふ子供みたいで楽しそうだな〟

ダメ元で言ってみるもんだ。もちろん翔太が俺に恋愛感情がないのは分かっている。今は一時でも離れたくないんだ〝後から来て先に俺が洗うから〟そう言われて翔太が〝亮平いいよぉ〟とお風呂から甘い声で呼ぶのを待って脱衣場へ向かった。

タオル一枚で隠して入ると、翔太は湯船に浸かって気持ち良さそうに歌っている。


翔太💙『家のお風呂なんて初めて入る』


翔太は普段サウナに行ってそこでお風呂までを済ませている。俺も何度か一緒に行ったことがある。


亮平💚『なかなか、家のお風呂も捨てたもんじゃないだろ』


洗い場で俺が身体を洗っていると、湯船から上がった翔太が〝頭洗ってあげるよ〟と言って俺の頭をシャンプーしてる。幸せすぎていつ死んでもイイ。二人で湯船に浸かって子供みたいに二人で歌った。


翔太💙『亮平もっと自信持って歌えよ。声が低くてすごく色っぽくていい声してる』


亮平💚『翔太は優しいね。ついつい甘えすぎちゃう』


翔太💙『亮平が優しいからだよ?優しさは伝染するんだ。そうやって、ちゃんと自分に返ってくる。俺はそう思ってる』


翔太のこう言う考え方が大好きだ。いつだって優しくて誰も傷付けない言葉選びが上手だ。

お風呂から上がると俺のスキンケアを手伝ってくれる。


翔太💙『亮平って肌荒れしないよね?サラサラしてて気持ちイイね』


翔太の瞳の中に俺だけが写っている。翔太にはどんな風に見えてる?ちゃんと俺が見えてる?

気がつくと翔太の頰に手が伸び唇を重ねていた。

柔らかいふたつの唇が重なり合い、小さなリップ音が鳴って離れると真っ赤な顔の翔太ときっと俺は青ざめている。


亮平💚『ごっごめん////あまりにも翔太が綺麗な顔だったから…』


しかも何言ってんだ…頭を抱えて俯くと、翔太が頭をポンポンと叩いた。


翔太💙『相当にお疲れだな亮平…‥早いとこ飯食って寝よう』


顔を上げるとハニカミながら笑った翔太は〝お前だけ特別だぞ!今日は怒らないでおく〟なんて言うもんだから・・・


翔太💙『ちょっおい////亮平ンッ』


貪るように翔太の唇に飛びつくと後ろに押し倒してキスを重ねた〝今日は怒らないんでしょ?〟なんて屁理屈を言いながら積年の鬱憤を晴らすように翔太とキスをした。出前が届いたインターホンの音で我に返ると床の上に仰向けになった翔太が頰を赤らめ怒っている。


翔太💙『お前イイ加減にしろ💢』


亮平💚『前菜頂いちゃった』


舌舐めずりして見せると、益々顔を赤くしている〝ほら早く出前受け取ってきて〟そういうと動揺しているのか何もない所で躓いていて可愛いかった。

攻めすぎたかなと思ったけど、翔太はその後何事もなかったように接してくれて助かった。過労で頭がおかしくなったやつくらいにしか思っていないのだろう。翔太は何処か抜けていて可愛い・・・

二人でピザを頬張ると、並んで歯を磨いた。全てが新鮮で初めての事にずっと胸がドキドキしてる。同棲ってこんな感じだろうか?心臓もたないな。


亮平💚『ソファー借りるね』


そう言って寝ようとすると、手首を掴まれた。


翔太💙『俺のベット広いぞ?そんなとこじゃ疲れ取れないだろ?遠慮すんなついて来い』


嬉しいけど嬉しくない。それだけ意識されていないという事だ。先程キスした相手を簡単にベットへ誘うんだから・・・


翔太💙『どうした?まだ、元気じゃない?』


亮平💚『翔太は単細胞で羨ましい』


嫌味ったらしく言うと〝元気じゃん〟と言って俺をベットに上げた・・・

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