なのに全てが終わった後、素直に琴音を追うことができず、自分の気持ちも言えないまま別れることになり、そのつらさを痛感した。ただ琴音を抱いただけで、いったい俺は何をしているんだと、情けない気持ちに押しつぶされそうになった。
だけど、修行中の自分に何ができる?
これから海外で勉強漬けの日々が待っているのに、こんな何もない自分が勢いだけで想いを打ち明けたところで、琴音を幸せにすることができるのか?
あの時の俺は、「こんな男だったのか」とガッカリされ、琴音を失うのが怖くてたまらなかった。
実際、とてつもなく忙しい3年間。
もちろん、学ぶことは苦ではなかったけれど、プライベートで誰かと会って話す時間や余裕は無かった。万が一、琴音と付き合っていたとしても、きっと愛想を尽かされ、確実にフラれていただろう。
フラフラ迷ってばかりで、俺は本当にダメな男なんだ。
高校時代、琴音の笑顔に癒され、裏表の無い性格の良さに惹かれた。いつだって可愛くて、眩しくて、キラキラして。俺が落ち込んだ時も陽だまりみたいな温かさで包んでくれた。
そんな、誰にでも優しい彼女。
身も心も琴音の虜になるまでに、そう時間はかからなかった。
バスケという好きなこと、琴音という好きな人、碧や仲間達といる好きな時間……
毎日が充実していた。
本当に、みんなと一緒にいるだけで楽しかった。そこに琴音がいてくれることで、俺は心から幸せを感じられた。
俺は……まだまだ子どもだった。
このままずっと一緒にいられるような感覚に陥って、でも、無常にも時は経ち、進路は別れ……就職も別々になった。
離れてもなお、どんどん膨らむ彼女への想い――
琴音の幸せを考えれば、俺の「想い」など必要ないと、自分の気持ちを押し殺した。
必死で彼女を忘れようと努力したんだ。
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