テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
Episode 8転送完了。
市街地C。
見通しの良い道路と、 低めの建物群が広がるマップ。
『試合開始です!』
実況と同時に、 各隊が動き出す。
黒瀬は即座にバッグワームを起動した。
レーダーから消える。
だが。
「右側、二人で動いてますね」
奈央の声。
モニター上、 相手部隊はかなり慎重だった。
固まって動く。
定期的なレーダー確認。
不用意に建物へ入らない。
完全に黒瀬警戒。
「めっちゃ見てるなぁ……」
三上が苦笑する。
「最近の隊ほんと露骨」
黒瀬は小さく頷く。
「まあ、こっちも最近は慣れました」
言いながら、 細い路地へ入る。
だが。
以前ほど深くは入らない。
見通し。
逃走ルート。
詰められる距離。
全部確認している。
その時。
『ライトニング!!』
乾いた高速射撃音。
相手ガンナーが反射的に横へ飛ぶ。
「うわっ!?」
回避成功。
だが。
その動きで隊列がズレた。
「ナイスです水瀬さん」
黒瀬が静かに言う。
「当たればラッキーくらい〜」
水瀬ののんびりした声。
だが、 目的は最初から命中ではない。
射線で動かす。
位置を崩す。
黒瀬隊らしい動きだった。
観戦席でも声が上がる。
「また水瀬撃ってる」
「最近ちょくちょく撃つよな」
「でもあれで動かされるの嫌だわ……」
その裏。
黒瀬が動く。
建物横。
グラスホッパー起動。
横方向へ高速跳躍。
「いた!」
相手隊員が反応。
だが次の瞬間。
黒瀬の姿が消えた。
「……は?」
グラスホッパーの軌道だけが残る。
着地地点にいない。
観戦席がざわつく。
「消えた!?」
「今グラスホッパー終わった瞬間にカメレオン入れた?」
「うわ、嫌……」
跳躍の軌道だけを残して、 黒瀬の姿が掻き消える。
遊真との個人戦以降、 黒瀬が取り入れ始めた新しい動きだった。
もちろん、 遊真のような曲芸機動は出来ない。
だが。
“視線を切る”だけなら、 十分だった。
その時。
「炙り出す!」
相手シューターがトリガーを起動する。
ハウンド。
分裂弾。
逃げる黒瀬へ追尾。
『ハウンド!!』
「やっぱ入れてますよね」
黒瀬が小さく呟く。
カメレオン解除。
即座にシールド展開。
弾道を受け止める。
だが。
その瞬間。
相手側が動いた。
「今だ!」
「位置割れたぞ!」
距離を詰める。
黒瀬対策としては正しい。
カメレオンを切らせた。
位置も見えた。
逃がさない。
859
773
み ん と
だが。
黒瀬は落ち着いていた。
グラスホッパー起動。
横跳躍。
視線がそちらへ向く。
――次の瞬間。
黒瀬の姿がまた消える。
「は?」
観戦席がざわつく。
「またやった!?」
相手隊員が反射的にレーダーへ視線を落とす。
反応はまだ近い。
――その確認へ意識が向いた、 ほんの一瞬。
死角。
カメレオン解除。
ダブルハンドガン。
至近距離連射。
《BAIL OUT》
『うわぁ!?』
実況が叫ぶ。
「ハウンドで炙ったのに!?」
「なんでまた横取られてんだよ!?」
観戦席から悲鳴が上がる。
しかし。
黒瀬は留まらない。
即座にグラスホッパー。
横跳び。
そのまま再びカメレオン。
位置を変える。
追わせない。
『黒瀬隊員、離脱まで早い!』
「マジで捕まんねぇな……」
誰かが呟く。
その時だった。
道路を横切った敵隊員へ。
乾いた狙撃音。
《BAIL OUT》
『イーグレット!!』
「うわっ!?」
「水瀬!?」
建物上。
水瀬が静かに銃口を下ろしていた。
「今のは撃つんだ……」
観戦席から思わず声が漏れる。
だが。
その直後。
「水瀬いたぞ!」
「屋上だ!」
「今のうちに詰める!」
相手アタッカーが、 一気に建物側へ走る。
スナイパーを放置するのは危険。
判断としては正しい。
奈央が即座に声を飛ばす。
「水瀬さん側、一枚行きます!」
「了解」
だが。
相手が建物へ入る直前。
横合いから、 三上が飛び込んだ。
『ここで三上隊員!!』
『進路を塞いだァ!』
「っ!?」
「行かせるかよ」
弧月を振り抜く。
強引に進路を切る。
相手アタッカーが舌打ちした。
「邪魔だ!」
「そりゃ仕事なんでな」
鍔迫り合い。
押し返す。
そのまま三上が笑った。
「水瀬は自分が絶対に安全だと思った時しか撃たねぇんだよ」
さらに踏み込む。
相手の足を止める。
「つまり、今のは撃っていい状況ってことだ」