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父はSNSの炎上を目にし、
「……どうして情報が漏れていたんだ……」
と悔しそうに呟いて唇を噛む。
仕事が休みで手伝ってくれることになっていた高間さんも店に着いてSNSの炎上を知ると、酷く驚き困惑していた。
当然、開店時間になってもお客さんは来なくて、 それどころか、通りすがりの人が冷たい視線を向けては、何かひそひそと話をしている様子を目にするばかり。
結局この日は誰もお店に来ることはなく営業を終え、自宅へ帰って来た時に父は、
「もう……うちは終わりかもしれないな」
と悲しそうに項垂れていた。
こんなはずじゃなかった。
新作のケーキを出して、お客さんに戻って来てもらって、SNSでも話題になれたら良いなって、その一心で頑張ってきた。
それなのに、どこから情報が漏れてしまったのか、よりにもよってRoseにケーキを真似されてしまうだなんて。
悔しくて、悲しくて、どうにもならない感情が渦を巻く中、部屋へ戻ろうと階段を上がりかけた、その時、インターホンが鳴り響く。
時刻は午後八時過ぎ。
こんな時間に一体誰だろう?
そう思い玄関のドアを開けるとそこには――巴さんが立っていた。
「巴……様……どう、して?」
あの日以降、会うことの無かった巴さん。
相変わらずの無愛想かつ仏頂面で、一体何をしに来たのかと思いきや、その後ろから、
「夜分遅くに失礼致します、取り急ぎお話したいことがございまして伺わせていただきました」
その後ろから如月さんも姿を見せてくれた。
「あの、とりあえず上がってください」
「はい、では失礼致します」
立ち話で済ます訳にはいかないと思い、ひとまず上がってもらうことに。
リビングのダイニングテーブルへ、父の向かい側に如月さんと巴さんに座ってもらい、私はコーヒーの用意をする。
「上澤家のご子息様が、私共にどのような用件で来られたのかを伺っても宜しいでしょうか?」
その間父が二人にどういった用件なのかを尋ねると、
「SNSで、ケーキの盗作疑惑について知った。俺としては、この店がそういった行為をしているようには思えなくてな、如月に色々と調べて貰ったんだ」
Roseのケーキと類似している件について話をしてきた。
「あの、色々調べたって、どういうことなんですか?」
コーヒーを淹れ終えた私は人数分のカップをトレーに乗せて運ぶと、父の隣に腰を降ろしながら話の続きを求めていく。
「――実は、少し前からある人物の噂が上澤家に回ってきまして、巴様はそれを独自に調査しておりました」
「ある人物の、噂?」
「ああ。信頼出来る情報筋からの噂でな、気になったから調べることにしたが、そいつが最近、金の為に情報を売るという行為をしているといった話で、辿っていくと被害者もいるようだから、その被害者の声なんかも集めていた」
如月さんも巴さんも誰のことかは伏せたままで話を進めてくる。
だけど、私は二人が話している内容で、誰が裏切り者か、気付いてしまった。
「そして、被害者の中に今回の件と同じような被害を受けていた者がいたんだ」
「それって……もしかして……」
「賢いお前のことだ、気づいただろう? 誰が今回の件の黒幕か」
巴さんにそう問い掛けられて、私の頭の中に真っ先に思い浮かんだのは、
「……高間さん……なんですか?」
親身になって手伝ってくれていた、高間さんの姿だった。