グループでの音楽番組の生出演時にできたほんの、隙間みたいな時間。スタジオ裏の椅子に腰掛けたまま、めめは珍しく、無防備に俺の肩に頭を乗せてきていた。
通りすがりに、色んなアーティストの方々が、めめと俺とを見比べて微笑ましそうに頷いた。
「めめったら…//」
肩に乗せられた頭だけなら、どうってことはない。しかし、寄りかかるついでに、握られた手が、俺の腿の上に恋人繋ぎのまま、置かれていて、すれ違う中で、気付いた人は、みんな一様に少し驚いた顔をしていく。
握られた手を何度か外そうと試みるものの、めめの指はしっかりと絡みついていて、どうしても取れない。無理に外せば起こしてしまうと思うと、それもできなかった。めめのハードスケジュールは一番近くで見ていて知っているからだ。
仕方なしにそのままにして、だいぶ時間が経ったころ。
「阿部ちゃん、そろそろ出番…って、めめ。阿部ちゃん恥ずかしがってるからイジワルやめなよ」
頭上から降ってきた、最年少の呆れ声。顔を上げると、俺の左側を非難するように見ている。
「あーあ。せっかくいい気持ちだったのに」
「めめっ!?」
めめは、繋いだ手をキュッと一度強く握ると、名残惜しそうにその手を解き、一度ぐりぐりと俺の肩に頭を押し付けてからようやく離れた。
「……めめ、いつから起きてたの?」
「んー。10分くらい、前、かな?」
悪びれず笑う顔は、悪戯がばれた少年ぽいあどけなさで溢れていて、俺も怒るタイミングを見失ってしまった。どきどきしたり、恥ずかしかったり、目を伏せていたさっきまでの10分あまりがとてつもなく長く感じて、改めて怒りたい気持ちもあったけれど、愛しいめめのこの顔を見たら怒れない。
「ほら、何してんだ。出番だぞ」
事情を知らないふっかが呼びに来たところで、ほら、阿部ちゃんいくよ、と座ったままの俺を先導するめめの手を仕方なしにまた握ると、強引に立たされた。それはさっきまでのような、甘いタッチとは違って、あくまでも仲間同士のようなサバサバとした感じ。
「本当に二人、仲良いんだから」
後ろでそんなラウールの呆れ声が追うように耳に届いたけど、俺だけに見えるようにされためめのウインクが、視界にそのまま飛び込んで来て、俺はまたときめかされ、顔が熱くなるのを隠すことに必死になっていた。







