「Tって尊かな?」
他の投稿も確認する。
すると、葵の元彼がカフェで二人で映っている写真が投稿された日、同じカフェで撮ったであろう写真が投稿されていた。
<今、カフェで休憩中。ここのカフェラテ美味しい>
「……。こいつ、自分が客だって認識あるのか?」
「わかんない。でもなさそうじゃない?だって、こいつの投稿に大好きな彼女って書いてあるから」
こいつが葵の元彼氏で、女に騙されている。
この事実がわかったところで俺に何かできることはあるのか?
「ねぇねぇ、優亜って子に直接聞いちゃえば?店わかるよ?載っているし。しかもうちの店から結構近い。両親が病気でお金が必要って嘘はついちゃいけないよね。どうする?行ってみる?」
春人がいらずらに笑っていた。
・・・~・・・~・・・
「やっぱり瑞希くん、帰りって遅いんだな」
<もうすぐ帰る>という瑞希くんのメッセージが届き、私は彼の帰りを待っている。
寝ていてもいいって言われたけれど、今日はお世話になって初日だから、夕ご飯は瑞希くんの希望に応えて唐揚げにした。おかえりって言って迎えてあげたい。
生活リズムが違うから、毎日ってわけにはいかないけど。余裕がある日は瑞希くんのこと、待っていたい。
そんなことを思っていると、ガチャっと玄関のドアが開く音がした。私はソファから立ち上がり、玄関へと急ぎ足で向かう。
「おかえりなさい」
なんだか嬉しくて、抱きついてしまいそうになったが、一旦足を止める。
「ただいま!寝ていても良かったのに。明日仕事だろ?」
彼もどこか嬉しそうだ。
「今日はお世話になって初日だから、おかえりって言いたくて」
そんな私をギュッと抱きしめてくれる。
「ただいま」
なんだろう、やっぱり安心する。
「ジャケット脱いで。ハンガーにかけるね。シャワー先に浴びる?」
私は彼のジャケットを脱がす。
「そうだな。シャワー浴びてきていい?タバコの匂いとか嫌だから」
そういえば、瑞希くんってタバコ吸わないんだよね。
「うん。今日の夕ご飯はね、リクエストに応えて唐揚げだよ!」
「マジ!?嬉しい。てか、なんか幸せ。こういう感じ。ありがとう。家にきてくれて」
彼に見つめられる。
「ううん。感謝しなきゃいけないのは、私の方だよ」
瑞希くんはシャワーを浴びに、浴室に向かった。
こんな時間から唐揚げを揚げるとか、人生初体験だ。
「いただきます!」
「熱いから気をつけてね」
「……!うまっ!」
良かった。彼は美味しいと言ってくれた。
「本当、葵って料理上手だよな。揚げたて、めっちゃ美味い!」
何度も美味しいと言ってくれる。
やっぱり言葉一つあるだけで作り甲斐がある。
嬉しい。
彼の食べた後を片付ける。
あっ、どうしよう。髪の毛、油の匂いがする。
「瑞希くん、ごめん。私、シャワー浴びてきていい?唐揚げ揚げたら油の匂いが髪の毛についちゃって」
「もちろん、いいけど。ごめんな。俺が食べたいって言ったから、こんな時間なのに」
「ううん。瑞希くんが喜んでくれて良かった。行ってくるね」
シャワーの準備をする。
チラッと瑞希くんを見ると、ソファでスマホを見ていた。
お客さんに連絡とかしているのかな。
シャワーを浴びて、戻る。
「葵。これ、食費。使って?」
そう渡されたのは、封筒に入っている現金。
厚さからお札が何枚も入っていそうな感じだ。
「えっ、いらないよ!私、泊まらせてもらっているんだし。その分、光熱費とかかかっちゃうし」
「ダメ、これ使って!」
封筒の中身を見るのが怖い。
一日いくらで計算してるんだろう。
「わかった。じゃあ、余ったら返すね」
受け取らないと納得してくれなさそう。
こういうところまで考えてくれるんだ。
尊が一時、私の家にずっと泊っていた時があった。でも、こんな気遣いはなかった。慣れない気遣いに戸惑ってしまう。
「葵、寝ていいよ。俺、もうちょっと起きているから」
「わかった。じゃあ、先に休むね」
寝室に行き、ベッドに横になる。
生活が違うから、私がもうこんな時間って思っても、彼にとってはまだ寝る時間じゃないんだろうな。
明日仕事に行ったら休みだから、頑張ろう。
そう思い、眠りについた。
次の日、隣を見たら瑞希くんが寝ていた。
カッコいいな。じっと見つめてしまう。
今日は起こさないでおこう。
鍵も預かっているし、一人で出て行ける。
きっとお昼頃まで寝ているんだんろうな。
私と同じお弁当になっちゃったけど、昼食は作ってあるし。私は、瑞希くんを起こさないようにゆっくり行動し、仕事に向かった。
お昼の休憩時間、会社の休憩室でスマホを見ると瑞希くんからLIEEが届いていた。
<お弁当ありがとう!マジ葵は神だ(:_;)美味かったよ!卵焼き、また作って!仕事頑張ってね!>
彼のメッセージを見たら、嬉しくてつい一人で笑ってしまう。
そんな私を見ていた華ちゃんが
「なになに!?新しい彼氏ですか!?」
聞かれた。
「違うよ、友達!」
「友達?なんか怪しいですね、秘密はなしですからね」
この子は恋愛に対する勘は鋭いから気を付けておかないと。
そう思っていた時
「遠野さん。ちょっといいかな?」
話しかけてきたのは、同じ部署の先輩、黒瀬さんだ。
黒瀬さんは、高身長で優しく、整った顔立ちをしているため女性社員から人気がある。
なんだろう、仕事でミスでもしたかな?
「はい」
私は立ち上がり、彼についていく。
誰も使っていない会議室に呼び出された。
「すみません。私、何かミスでもしましたか?」
私の一言に、はっと彼は笑って、違うんだと目線を逸らした。
「井口さんから聞いたんだけど、付き合っていた彼氏と別れたの?」
ええー、華ちゃん、そんなことみんなに話しているの?恥ずかしいな。
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