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そしてついに白鳥の湖の初日が来た。秋は文也の姿が見えないのに気が付いた。楽屋にも舞台裏にもいない。秋がうろうろ探し回ると、劇場のバルコニーのベンチに佇む文也の姿を見付けた。
「こんな所でなにやってんだよ。みんな探してたんだぞ。早く衣装に着替えろよ。間に合わなくなっちまうぞ。」
秋は心配のあまり荒っぽい口調になった。文也の様子がいつもと違っている。その手は震えていた。
「どうしたんだ。大丈夫か?」
秋がそう言うと、文也は青い顔をして、
「俺、失敗したらどうしよう。きっとうまく踊れない・・・」
と絞り出すように言った。秋は驚いて、それでもぎゅっと文也の手を握って、肩を抱いた。
「お前らしくもない。お前はうちのホープだろ?いつも通り、練習だと思って踊ればいいんだよ。」
秋は文也を勇気づけた。
「うん。うん。」
文也は次第に落ち着きを取り戻した。秋が文也を楽屋まで送り届けると、
「ありがとう。」
と文也が照れくさそうに言った。
そして、その日の舞台は大成功だった。文也は何回もカーテンコールに応えた。秋は自分のことよりも嬉しかった。
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