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☆すたーだすと☆
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「……ふー…」
吐いた煙で視界の先が白く濁る。
その先をただぼんやりと追いながら、また煙草に口をつける。
煙草の先では、燃え尽きた灰が主張していた。
人の気配のしない寂れた部屋は薄暗く、見上げてみれば電灯が一つ切れている。
そんなろくに管理されていないこの喫煙所には、人っ子一人来やしない。
なにか化けて出てきそうな雰囲気だが、誰にも邪魔されずにいられる時間というのは、それだけで貴重だった。
「……」
壁にももたれかかり、虚を見つめる。
こうして動かずにいると、物音ひとつも聞こえない。とても静かで、静かすぎて耳の奥でキーンという音が響いていた。
その音に混じって、あのクソメリカの煩い声が頭の中にこだまする。
いつでも鬱陶しいヤツだが、最近は殊更だ。
なんでも、日本と付き合いだしたんだそうだ。さすがは自由の国というか、それともプロテスタントの気質なのだろうか。この前、日本の首筋に噛み跡がついているのを見たが、特段アメリカが罪悪感に苛まれた様子もない。もちろん、ヤツも日本も男であって、つまりソドミーなのだろう。
こいつの教育はどうなっている、と言いたい所だが、親があのエセ紳士だからどうしようもない。教えてることもどうせ碌なことじゃないだろう。
「恋、ねぇ……」
そんなものの何が良いのか。少なくとも俺は、敵とその子分の惚気話なんか聞いても退屈なだけだし、浮ついているアイツの顔はぶん殴ってやりたくなる。
どうせほんのひと時だけの戯れだろう。
そう思う事にして、また一つ煙を吐こうとした、その時。
「你好、ロシア」
電灯が小さく火花を散らし、点滅する。
ジュッ
「あっつ…ッ!!」
ずっと放置していた吸い殻が、最悪のタイミングで肌に落ちた。
人が来ないはずの、俺だけの安寧の地であるはずのこの場所に、初めての来訪者が現れたのだった。
「あいやー、ここの電気イカれてるあるね
危ないよろし。
…にしても、こんなとこよく来るあるねぇ。」
そう電灯を眺めながら呟いたのは、極東の隣国、中国だった。
「…自分も来てるくせに何を言う」
「呵呵!それを言われちゃ何も言えねぇあるな。…あ、吸い殻大丈夫だったあるか?」
「今更かよ…」
若干跡はついたが、大したことはない。
が、それをそのまま言うのは癪だった。
「お前のせいで焦げた」
「それは悪いことをしたある。
一応謝っとくよろし」
「誠意は何処にやったんだよ」
ため息をつくと、中国はまた目を細めて笑った。
完全に弄ばれている。
舌打ちを一つすれば、自分でも眉が寄っているのに気づいた。
「…何しに来たんだよ」
「喫煙所に来て、煙草を吸う以外に何をすることがあるよろし」
「他のところでいいだろ」
「それこそ、自分も来てるクセに何を言ってるあるか。我はただここが目についたから来ただけよろし。」
「………」
言葉の代わりに煙を吐き出す。
さっきから足が揺れて仕方がない。
壁の方に目線を逸らすと、中国はそれ以上何も言わず隣に立ち、口の端で煙草を咥えた。
癖なのか、服を漁るその間、煙草の先がちろちろと揺れているのが見えた。
「…あいや、火持ってくるの忘れたある」
「…何しに来たんだよ……」
「ちょっと貸すよろし」
「……はぁ…」
本日二度目のため息。それと共に指を脚に叩きつけながら、もう一方の手で自分のポケットを探る。
ここで変に突っぱねるよりも、さっさと渡してさっさと帰ってもらうほうが都合が良い。
適当に突っ込んだ指先に、ライターの蓋が掠った時。
ジジッ…
中国に顎を引かれ、まつ毛が絡むのではないかと思うほど顔が近づいた。
そしてそのまま対抗する間も無く、煙草の先を合わせられる。
なんだかやけに長く感じられたが、火が付けば中国は煙草を離し、そして煙を吹きかけてきた。
「…謝謝」
そう言って軽く笑って見せた中国は、先ほどと同じ笑顔のはずなのに、妙に温度があった。
「…………副流煙吸わすなよ」
「どうせベビースモーカーなんだから変わんねぇよろし」
軽口を叩いて見せる中国は、やはりいつも通りだ。
そうだと言うのに、俺の鼓動はいつもよりほんの少し早くて、妙に落ち着かなかった。
シガーキス。
一瞬、脳裏に浮かんだその言葉を振り払うように、煙草を吸う。
その味は、いつもと違って中国の甘い煙草の味が混ざっていた。
コメント
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みぅです🤍🥀 読み終わりました…“シガーキス”、一瞬で心臓がざわつきました。 ロシアが煙草を吸う静かな秘密の時間に、中国がふらりと現れる距離感。火を借りるふりをして煙草を重ねる仕草、甘い煙の混ざる味——あの一瞬に、二人の関係性の変化がぎゅっと詰まってて。無意識に動揺するロシアの鼓動が、すごくリアルで。 はんこさんの空気感、すごく好きです。続き、めちゃくちゃ気になります。