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宇津Q
3,490
麗華໒꒱·̩͙
858
そう、思っていた……のだが、
「…えっと、なんて?」
「だから、お腹が空いたの。食事に付き合ってちょうだい」
……翌日。
洗濯を干し終え、家に入ろうとした瞬間だった。
食事…???なんで……??ごめん本当にわからない。どうしよう。こんなに人の思考を理解できない事がこれまでに一度でもあっただろうか…
「食事…?なんでまた…」
すると彼女は腰に手を当てながら呆れた様に言った
「貴方は本当になんでどうしてばっかりね。いいから着いてきなさいよ」
そう言って彼女は僕の手を強引に引いて歩き出した。「ちょっ、離してよ、まだやる事があるんだけど…!?お金も持ってないし、!」振り払おうとしたが、……地味に力が強い、全く振り解けなかった。この人本気で苦手かもしれない
「お金のことは気にしないでちょうだい、芽依が誘ったんだし芽依が払うわ。」
「………………」
そう言う問題ではない。全くそう言う問題ではなかった。離せ、いや離せよ。こんなふうに有無も聞かずにただ連行してくるだけの人なんて初めてみたぞ、家知られてるしこれから毎日来られでもしたらどうしよう
……数十分ほど走っただろうか、やっと看板は見えたが、もう体力が限界に近いんだが、帰りはどうすればいいんだ……?
すると彼女は僕の方をちらっと見てから一瞬だけ邪悪な顔でにやりと笑った。
「ふっ、貧弱ね。芽依はまだまだ走れるけれどね」
……鼻で笑われたのなんて人生で初めてかもしれない。と言うか、嘘だ。絶対しんどいだろ、汗すごいよ。
「なんなら貴方をおぶっても走れるわ」
いや無理だろう……、……………と言うかこの人はなんで僕に構うんだろう、やっぱり学校に復帰させようと?それとも不登校に構ってあげてる自分に酔いたいとか?……なんにせよ今日でこの関係を終わらせたい。適当に煽てて帰ろう…
そう思っていると急に彼女が振り向いてこちらを見てきた。
「芽依から逃げようったって無駄よ。芽依はどこまでも貴方にひっついて追いかけ回すわ。貴方がどんなに芽依を拒んだって絶対に離してやらないんだから」
……………。
「え面倒くさ…」
あ、まずい心の声が漏れてしまった。…嫌な思いをさせたりしていないだろうか…
彼女の顔をちらりと見てみると、彼女はこんなにもにんまりと言う言葉が合うのかと思うほどににんまりとしていた。
「やっとその胡散臭い笑顔を剥がせたわ。むずむずしてたのよね」
…あ、まずった。笑顔が……、…と言うか胡散臭い…?最近は練習してなかったからか?
思わず自分の顔を触って確かめた。確かに少し口角がおかしかった。
そんなことをしているとやっと白石さんが手を離してくれた。顔を上げるともう店の真ん前だった。だいぶ息が上がっているので早く座って水でも飲みたい。
「さ、入るわよ」
そう言うと彼女はまた僕の手を強引に引いて店に入った。
「2人です」
白石さんが近づいてきた店員に人数を伝えると窓際の席に案内された。そのまま席に座り窓の外を見た。外がよく見えて落ち着く。白石さんは店員に軽くお辞儀をしてから僕の正面の席に座った。
「……貴方ずいぶんと疲れた様子だけれど、運動不足が過ぎるんじゃないの?一体どんな生活をしているのか気になるわ。」
机に頬杖をつきながら彼女は続けた
「……まさかとは思うけど食べて寝てを繰り返して昼夜逆転してたりしないわよね?それならとんだ怠惰野郎かしら」
今のは流石に暴言だろう…、そう思いつつ先ほどの店員が持ってきてくれた水を飲んでいると
すると彼女は僕の体を上から下まで見て言った
「…でもそれにしては痩せすぎよね。芽依よりも細いんじゃないの?もっと食べたほうがいいわよ。と言うか食べなくてもいいから太りなさい。不健康にも程があるわ。それにもし仮に戦争とかが起きて、食糧難が訪れたとして、あの時もっと食べとけばよかった〜、って後悔する事になるわよ。食べれる時に沢山食べておきなさい」彼女は少し眉を顰めながらもそう言った。発言をし終わった彼女は僕と同じく先ほど店員に持ってきてもらった水を一気に飲み干した。
「あはは、うん。そうだよね。」
適当に愛想笑いをして誤魔化した。白石さんは既に注文パッドを手に持っていた。
「…貴方何なら食べられそう?決められないなら芽依が勝手に決めるけれど」
特に食べたいものはないのだが……ずっと栄養ゼリーばかり食べていたから、食べると言う表現があっているのかはわからないが、
「えーっと、なんでもいいよ」
答えを聞くと彼女はまた頬杖をついて注文パッドを操作し始めた。
「そう、じゃあ芽依が決めるわね」
なんでもいいと言ったのは僕だが、万が一大量の料理を注文されてこれを全部食べろと言われたら食べられる自信がないし、この人はまだ信用できないもしかすると後から金を請求される事だってあるかもしれない。
急にそんな考えが浮かび、慌てた。
「え、いいよ。パッド貸してくれたら自分でできるし、」
「貴方に任せたら水だけで帰りそうだもの。」
…即答だった。この様子じゃ貸してくれそうにない。諦めるしかないようだ。
「…」
白石さんの強引っぷりに絶句していると、そのままの姿勢のまま彼女が僕を見てきた。
「図星でしょう」
…はい。図星です。心の中でそう思ったのは秘密にしておこうと思う。
すると白石さんは注文し終わったようで注文パッドをおしぼりで拭いてから元に戻した。意外と几帳面なのか。
「ねぇ浅葱くん。昨日の話なのだけれど。音楽を作ってるって言ってたわよね。今日は携帯を持っているようだし、なんて言う名前なのか教えてくれたっていいんじゃない?」
……昨日?あぁ、なんかそんな話してたっけ。面倒くさいけど、まぁ、バレたって活動に支障はないしいいか。
「あ、うん。いいよ。ちょっと待ってね」
そう言って携帯を取り出し、動画投稿アプリを開いてアカウントを見せた。
「これだよ」
すると白石さんの表情がスッと変わった。驚いたような顔をしている。
「これ知ってるわ。芽依いつもこの曲を聴いて勉強とか作業とかをしているもの」
そう言って彼女は自分の携帯を開いて音楽アプリのプレイリストを見せてくれた。確かに僕が作った曲が並んでいる。
「いつも世話になってるのよ。このじめっとした感じが落ち着くの。」
褒めているのか褒めていないのかわからない様な言い方をされたがおそらく褒めているのだろう。
「……そ、そうなんだ。ありがとう。」
彼女は何やら携帯を操作しだした様だ。何をしているのかは知らないがまあ興味はない。
「……でも意外だな。白石さんっててっきりロック系とかそう言うの聞くタイプの人かと思ってた。茶髪だし。真面目な人じゃなさそうだし」
白石さんの動きがぴたりと止まった。何かまずいことを言ってしまっただろうか……、
「……失礼ね。これでも繊細で真面目よ。それと芽依が普段聴いてる曲は大体がバラード系よ。茶髪だからって舐めないでちょうだい」
……彼女のジト目気質の目がもっとジト目になっていた。
「ご、ごめん」
彼女は少し伸びをしてから座り直した。
「…それにしても本当に意外だわ。こんな近くに好きな作曲家がいるだなんて。やっぱり芽依は運がいいわ。」
「あはは…そうかもね」
料理を乗せたロボットがこちらにきた。……大量の料理を乗せている。まさか白石さんこの料理を全部僕に食べさせようと…!?
「貴方はこれね。」
彼女は僕の前にまぐろのたたきの丼と味噌汁の乗ったトレーを置いた。……よかった、あの料理を全部食べろと言うことではないみたいだ…。…………、あれ。でもさっきの料理は誰が食べるんだろう?まさか白石さん1人で全部食べたり…?そう思って白石さんの前を見てみると大量の料理が置いてあった。
やっぱり…!?
こ、こんな華奢な身体にこんなに沢山入るのだろうか??もしかしてインターネットに載せるためだけに頼んだ…!?いやそれにしては映え…?ない気がするものばかりだ!!
「よ、よく食べるんだね…」
僕がそう言うと白石さんは片方の口角だけあげてにやっとした。……ちょっと腹立つ。
……とりあえず冷めると良くないので手を合わせて食べ始めた。久しぶりに栄養ゼリー以外のものを食べたので少し新鮮だ。胃がびっくりして体調が悪くならないかだけが心配だが。すると僕が食べ始めたのを見て白石さんも続いて食べ始めた。彼女は食べるのがすごく早かった…。危うく僕の負けず嫌いが出るところだった…
……この人といると調子が狂うな。
数十分後、僕たちはやっと完食した。白石さんはあれだけの量を食べておいて全く苦しそうではなかったのが不思議だ、胃袋がブラックホールとはこう言う人のことを言うのか、
「ごちそうさまでした。……あ、ねえ貴方。携帯出してくれる?」
「携帯?う、うん。いいよ」
「ありがとう」
僕はロックを解除して彼女に自分の携帯を差し出す。
すると彼女は自分の携帯を操作してから僕に自分の携帯を見せた。画面にはQRコードが表示されている。……まさか
「これ、早く読み取ってちょうだい。」
面倒くさいが渋々読み取る。……やっぱりLIMEだった。承認するのは正直言ってすごく嫌だがさっきの食事は彼女が奢ってくれるとの事だったので流石に何も返さないままこの関係を断つのもなぁ、と思い承認ボタンを押した。
白石さんのプロフィールが表示される。アイコンは卒業式の写真だろうか、今より少し幼い白石さんと、僕と同じく生徒会に所属している隣のクラスの夏川さんと、あともう1人…ボブカットの少女が並んで仲が良さそうにくっついている写真だ。写真の中の3人は楽しそうで、……少し羨ましかった。にしても夏川さんのこの怪我の多さはとても気になるな、喧嘩でもしまくってたりしたんだろうか。
「……貴方のプロフィール地味ね」
白石さんが僕のプロフィールを見てそう言った。最近は全くLIMEを触っていなかったから覚えてない、そんなに地味だったっけ。
「まあいいわ。交換してくれてありがとう。そろそろ帰りましょうか」
白石さんはそう言って席を立ち、自分の荷物を持った。
僕はそれに続いて席を立ち、白石さんの後を追った
「最近はほんとに全部が高いわね。」
レジに着いた白石さんはレジの横に並べられている商品を見てそう言った。確かに僕が引きこもる前よりも50円くらい値上げしている気がする。ますます生きにくくなってきたな。
少し耳がこもってきた。疲れているのかもしれない。
「先に出ててくれていいわよ」
久しぶりにたくさんの人の気配や音を感じて少し疲れていたのを見抜かれたのか気を遣ってくれた様だ。ありがたく外で待たせてもらった。
しばらくすると白石さんがお店から出てきた。
「あの、今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」そう言って笑うと、白石さんはムッと嫌そうな顔をして、僕の頬を少しつねった
「その笑い方やめなさいって言ってるでしょ。」
「い、痛いよ〜。素でこれなのにどうすればいいのさ、」僕がそう言うと白石さんは少し辛そうな顔で
「そんな顔が素なわけないじゃない。それが素なら笑顔を矯正した方がいいわ。芽依の幼馴染みたいになられたら困るもの」
白石さんは体の後ろで手を軽く組みながらそう言って帰り道を歩き始めた。
「幼馴染?」
僕は思わず口に出してしまった。少しまずいかもしれないと思いつつ今更撤回はできないのでそのままでいることにした。僕も彼女も声が小さくてお互いに聞こえにくいと思うので僕も小走りで彼女の隣に行き、一緒に歩いた。
「ええ。芽依のアイコンの右端に写っていた人よ。」
風が強く、白石さんの表情はよく見えないが少なくともどこか悲しそうなのはわかった。
僕はさっき見た白石さんのアイコンの写真を思い出して言った。
「ああ……あのボブカットの人?」
確か黒髪のボブカットでアメジストみたいな目の色の人だった気がする。
「そう。よく覚えていたわね」
白石さんは僕を横目で一瞬だけみてそう言った。
「まあ、写真を見せてもらったばかりだし……」
僕がそう答えると、白石さんは少しだけ空を仰いだ。
「……あの子、笑顔がちょっと貴方に似ているのよ」
白石さんはそう言うと僕の方を向いてその笑顔を表現してみせた。
「こんなのよ」
確かに少し歪かもしれない……と言うか不気味かもしれない…、これは治さなければ…
「そ、そうなんだ。」
「ええ。だから嫌なの」
「ちょっとわかる気がする…」
白石さんは少し考えるように黙った。
「……なんとなく嫌なのよね」
あれだけやめろと言っておいて
「なんとなくなんだ」
白石さんは僕の方を見て僕の手を取った。
「なんとなくで十分でしょう」
彼女はそう言いながら僕の手を裏返したり関節を触ったりして観察している。内心何をしてるん…と思いつつ顔や態度には出さずにただ共感するフリをした。
「そ、そっか」
白石さんは僕の手を観察し終えた様で次は僕の手を引いて歩き出した。僕より少し小さい彼女の手は僕より小さいはずなのに僕の手全体を包み込む様な暖かさがあった。
……僕は白石さんに幼馴染の事はそれ以上聞かなかった。聞いたところで、どうせ答えてくれない気がしたからだ。しばらく二人で歩く。
行きは白石さんに手を引かれて全力疾走していたせいで気づかなかったが、こうして歩いてみると、意外と静かな道だった。
「……ねぇ、浅葱くん」
ふいに名前を呼ばれた。僕はすぐに返事をする
「どうしたの?」
「明日も暇?」
…曲は投稿し終わったし、今はメロディが思いつかないから作れそうにないし…、
「……たぶん?」
一応そう答えると彼女はこちらを振り向かないままただ僕の手だけを引いて歩いた。
「じゃあ、明日も会いましょう」
…またか…、
「…、なんで?」
僕が思わずそう聞き返すと、
「またなんで、なのね」
「いや、普通に気になるよ」
「芽依が会いたいからよ」
彼女は相変わらず僕の方を振り向かずに歩いた。
「……それだけ?」
「それだけじゃ駄目なの?」
僕の家が見えてきた。もうそんなに歩いたのかと驚きが
生じる。
「……駄目ではないけど」
…なんだろう。
この人と話していると、本当に調子が狂う。
僕はできるだけ関わらないようにしているのに、向こうから勝手に距離を縮めてくる。
「じゃあ、また明日ね」
僕の家の門の前に着いた。すると彼女は僕の手を離し、
手を振って去っていった。
「うん。また明日」
僕も手を振り返す。
その言葉を口にした瞬間、少しだけ違和感があった。
また明日、また明日?
誰かとそんな約束をしたのは、いつ以来だろう。
……まあ、いいか。
どうせ夏にはこの関係は終わる。
約束なんて今後意味のないものになる。
コメント
1件
読んだよ〜!!第2話、めっちゃ良かった😭💕 白石さんの強引だけどどこか優しい感じ、浅葱くんの「胡散臭い笑顔」がバレてるところとか、二人の距離感がじわじわ変わっていくの本当にエモい…!! 「明日も会いましょう」って言われて戸惑いながらも「また明日」って言っちゃう浅葱くん、もう完全に沼ってるやつやん…?🥺✨ それにしても、幼馴染の子の話とか、夏には終わるって伏線っぽいのが気になりすぎて次話が待ちきれないよ〜!!続きめっちゃ楽しみにしてる!!🌸