静かな図書館。
窓の外には、昨日の雨の名残がまだ残っている。
翔太は、いつもより早く来ていた。
机の上にノートを置かず、代わりにスマホを伏せている。
何度も指先を見ては、深呼吸する。
「……よし」
そこへ、蓮が静かに入ってきた。
少し驚いたように翔太を見る。
『早いね』
と、言う。
翔太は笑って、手を少し上げる。
そして翔太はぎこちなく、手話で伝えた。
「…..会いたかった。」
蓮は、目を丸くする。
息を呑んだように瞬きをして
ゆっくりと、翔太の手の動きを見つめた。
翔太は少し照れくさそうに言う。
「…..あってる?これで。」
蓮はしばらく言葉を探すようにして、ゆっくりと笑いながら頷いた。
「…..うん。あってる。」
翔太はほっと息をつく。
「何回も動画見て練習した。でも、手、めっちゃ震えてる。」
蓮は少しだけ笑って、
「翔太が、手話してるの……なんか変な感じ。」
「変って言うなよ。」
「…..でも、嬉しい。」
その嬉しいの唇の形を見た瞬間
翔太の胸が少し熱くなった。
「…..もっと覚える。お前とちゃんと話したいから。」
蓮は視線を落とし、小さく手を動かす。
『ありがとう』
翔太も真似して、ゆっくりと同じ手の形を作る。
指先が少し触れた。
沈黙
でも、その沈黙が、言葉よりも優しかった。
「なあ、蓮」
「ん?」
「声、出さなくても、ちゃんと伝わるな。」
蓮は笑って、翔太の手に視線を落とす。
「…..うん。翔太の声、聞こえたよ。」
翔太が照れくさそうに笑い、蓮も、いつもの柔らかい笑顔を見せる。
夕陽が差し込み、二人の影が重なった。
静かな図書館の中、
言葉よりも深い会話が、そっと流れていた。






