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「ん!」(よっしゃー、やるぞー!)

「今日は元気だねー、アリエッタ」


数日が過ぎ、アリエッタは朝からやる気満々。

本日はパフィとラッチが一緒に仕事をしにリージョンシーカーへ。アリエッタとミューゼは留守番である。


「にひひ♪ あたし、おはなし、べんきょ!」


帰ってきてからは、アリエッタは進んで会話のお勉強。文字はある程度覚えたので、単語カードをさらに増やしていた。それで覚えやすくなったのか、簡単な会話と文字読みの学習速度が飛躍的に向上していた。

ミューゼとパフィは言葉の教え方に困っていたものの、それは何から教えたら良いのか分からなかった為である。

しかし、アリエッタの方から知りたい事を提示すれば、教える事は可能になるのだ。それを前世の経験から察したアリエッタは、好奇心のままに質問をする事にしたのである。


「いち、にー、さん」

(くっ、かわいい……)


ただいま数字の復習中。小さい数字なら、もう完璧に覚えていたりする。


「じゅう!」


こちらの世界でも、都合よく10進数だったというのも大きい。読み方が違うだけなので、外国語の数字を覚えるのとまったく同じなのだ。

隣でミューゼが息を荒くしているが、そんな事はお構いなし。パフィやクリムとも協力して作り上げた文字表を取り出し、1文字ずつ読み上げていく。あいうえお表やアルファベット表の応用である。


「で」

「おっと、違うよー。それは、『ネ』」

「ね」


こちらはまだ完璧ではないようだ。

ちなみにこの表。ネフテリアが見て驚いていた。文字の近くには、その文字を頭文字とした物の絵が描かれている。今度、国中の子供に見せて、文字への興味を調査してみたいとのこと。実は同じような物は既にあるが、大人向けなので、文字しか書かれていない。小さな子供にとっては、面白い面白くない以前に、意味が分からない物になっているのだ。

ファナリアの識字率は低いわけでは無いが、学習速度はそれほどではない。魔法を学ぶ為に必要なので、魔法に興味が無いとどうしても知識が遅れがちである。

元大人のアリエッタは、自分に必要な情報を知っている。それを得る為に有効な教材の形も知っている。その知識を勉強に乗じて形にしたので、便利な本が出来上がった。


「おおぉぉぉぉ……なんだコレぇ! そのへんのシリョウよりわかりやすいぞ!」

(やった! ぴあーにゃがビックリしてくれた!)


ページの中央に絵で描かれているのは家具のデッサン画。そして線を引いて部分ごとの名称を文字で書いている。ページをめくると違う家具の事が書かれている。

アリエッタはまず、身近な家具の『図鑑』を作ったのだった。名称はともかく、説明文はまだ書けないので、そちらはミューゼ任せである。

勉強を始めた数日後の夜に、家に視察にやってきたピアーニャが、それを見て絶叫しているのだった。横ではネフテリアがワナワナと震えている。


(だからっ、なんでっ、世間に広めたい有能な道具をっ、存在を隠したいアリエッタちゃんが作るのっ! 素晴らしいなぁチクショウ!)


絵の発展が無いので、絵を使った本の考えも勿論無い。つまりファナリアにとっての新発明となる物を、なんとなく作っている現状。製作者が女神という、そこにいるだけで覇権を狙えそうな女の子なせいで、扱いがとても難しい。もし野心家に知られたら、とてつもなく面倒な事になってしまうのだ。ネフテリアはその事で悩んでいる。

しかしミューゼもパフィも、その事を知らない。今となっては、知らせなくてもアリエッタを誰よりも守ってくれる存在なので、むしろ知らせない方が都合が良いと、ピアーニャと王族に判断されたのだ。

それが原因で、アリエッタによる『新発明』が遠慮なく生まれるのだが……。


「なるほど、子供の教育によさそうです……」


ピアーニャと一緒に来たロンデルだけは、その有用性の方に惹かれていた。

その様子を見て、ネフテリアとピアーニャ、そしてパフィがコソコソと話し始めた。


「おい……アイツまさか」

「もう式まで秒読みなのよ?」

「……これはお祝いを用意しておかなくては」


リリとロンデルの関係を進展させようとしている者達にとって、決して聞き逃せない内容だったようだ。

と、ここでミューゼが疑問に思っていた事を口にした。


「ところで総長? 今日は何か用があるのでは?」

「あっ…………なんだったかな」

『おい』


アリエッタの図鑑が衝撃過ぎて、要件を忘れていたようだ。

代わりにロンデルが説明した。

内容は、明日からロンデル、ムームー、クォンを中心とした、新リージョンへの転移と交渉を開始。一般人とはいえ、交渉の足掛かりとしては、現地人であるクォンの存在は大きい。そして強制的に恋仲となったムームーも、橋渡し的存在としては完璧である。

交渉人はロンデルを中心に、護衛として腕利きのシーカーが数名。それも様々なリージョンから集めた精鋭である。どんな状況に陥るか分からないので、強力かつ手広く人員を揃えたのだ。

行き先のリージョンに送るのは、イディアゼッターが担当。しかし神による手伝いはここまで。世界を壊すような歪みが無いか見回る為、再び世界の狭間へ旅立つとのこと。


「あ、今回はあたし達は行かなくていいんですね」

「うむ、ホンライなら、シンジンをつれていくべきではない。ホゴしているコドモもいるなら、なおさらだ。いままでどおり、キョウイクにセンネンしていてくれ」


ピアーニャの言っている事はもっともである。だが、


「ゼッちゃんに怒られたのよ。何があるか分からない所に、管理も自己防衛も出来ない子を連れて行くなって」

「うっ……」

「そりゃそーなのよ」

「わたくし達も巻き込まれて怒られたけどね……」

「あははは」


アリエッタの能力は超強力だが、言葉が通じないせいで被害が大きかった事は何度もあった。命令も出来なければ、信頼して何かを任せる事も不可能。管理側のピアーニャが怒られて当然である。

だが、イディアゼッターの本音は、アリエッタの心配よりも、アリエッタとエルツァーレマイアによって引き起こされる世界レベルの大混乱に対する危惧である。だからこそ、言葉を早く覚えてもらい、自重を促すように仕向けているのだ。


「まぁこのぶんだと、やっとカイワできそうだがな」

「たのしみねー。わたくしも色々教えてあげたいなぁ……ってアリエッタちゃん?」


話の途中で、アリエッタは一度リビングを出ていた。向かっていた先はミューゼの部屋。

ある物を取りに行き、すぐに戻ってきた。その時、話の流れでピアーニャが俯いているのが目に付いてしまった。


「ぴあーにゃ!」(ヤバイ! ぴあーにゃが凹んでる! きっと僕がいなくなったからだ!)

「いや、え、ちょ」


日頃のご機嫌取りのせいで、すっかり『妹に好かれている』と思っているアリエッタは、ピアーニャの表情にだけは敏感である。

落ち込んでいたら慰めるのがお姉ちゃんの役目とばかりに、慌てて駆け寄り、抱きしめた。


「よしよし~。ぴあーにゃ、だいじょうぶ」

「ひぃ」


アリエッタの懸命な慰めの甲斐もあって、ピアーニャの気持ちは完全に落ち込んだ。お姉ちゃんと言えど、まだまだ相手の心情に関しては鈍いご様子。『大人しくなって身を任せている』と受け止めて、さらに甘やかそうとする。


「アリエッタ、ピアーニャちゃんはもう元気だから、大丈夫よ」

「!」(そうだ、渡さなきゃ!)


大丈夫と言われてハッとし、ピアーニャをミューゼの膝に乗せ、トテトテとネフテリアの元へと駆け寄った。

乗せられたついでに、ミューゼがピアーニャの頭を撫でて、頭突きされていた。


「てりあ。ありがとなの。ぷれぜんと」

「えっ……」


いきなりで、使える言葉も少ないので、全員意味が分かってないが、アリエッタによるお礼である。いつも世話になっているので、何かプレゼントをしたかったのだ。

こういう時はアリエッタの行動に従うのみ。何をしたいのかじっくり観察しながら、アリエッタに合わせて動く。もし拒否して泣かそうものなら、パフィに料理されてしまう恐れがある。

アリエッタが持ってきたのは、七色の木になる星型の実と、ネフテリアの似顔絵。


(りりも似顔絵書いたら喜んだし、たぶんてりあも喜んでくれる…と思う! まだ思いついてないけど、今度良い物作らないとな)


前に意気込んでいたお礼については、まだ考案中。それでも何も渡さないという事が出来ず、前世では親に似顔絵をプレゼントする子供が多かったのを思い出し、同じ様に似顔絵をプレゼントする事にしたようだ。もちろん今のアリエッタが描けば、クオリティが子供のそれではないのだが。


「うわーお、実物より綺麗なのよ」

「ちょっ、酷くない? わたくしも同意するけど……」

「相変わらず素晴らしいですね」


この後、アリエッタが液状化したと思えるほど蕩けきるまで、抱きしめてナデナデした。

貰ったネフテリアの似顔絵は、王城の良い所に飾られる事になって数日後……ネフテリアからミューゼに対して苦情が寄せられた。


「なんかみんな、絵とわたくしを見比べて、可哀想なものを見る目でわたくしを見るの! 王女に対して酷すぎない!?」

「日頃の行いかと」


ちなみにこの数日の間に、クリムとノエラにも似顔絵を送っていた。

2人とも店長である事を主張するかのように、絵を店内に飾っている。その影響か、2人を狙う男達が増えたという。


「なにそれ、反応の差にイラつくんだけど……」

「2人とも違うタイプの美人店長ですから」


クリムは元気で明るい美女。ノエラは上品で妖艶な美女である。一番良いアングルや表情の似顔絵があるだけで、憧れるきっかけとしては十分だろう。

王女なのに言い寄ってくる相手がいない!と思ったネフテリアだったが、そもそも王女は言い寄る事が許される存在ではないという立場を思い出し、ちょっと落ち込むのだった。


「で、アリエッタちゃんは何を作っているの?」


ミューゼの横では、本日の勉強を終えたアリエッタが、色をつけた折り紙を組み合わせて、せっせと工作中。


「なんでも、クリムに何か作ってるらしいですよ」

「……なんだろう。嫌な予感がする」

「ははは、奇遇ですね。あたしもですよ」


ただの予感だけで、他人の為に何かを頑張る女の子を、止める事は出来ない。ミューゼの家に集まる大人は、アリエッタには甘いのだ。だから不安に思いながらも、見守るしかないのである。

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