蛍光灯の白がやけにまぶしい。ノワレの部屋は、散らかったままの薬のシートと空き缶が床に点々としてた。窓は開いてるのに、空気は淀んでる。
机の上には半分水の抜けたコップ。中に沈んだ薬が一粒、ふやけて底に張りついてる。
ノワレはベッドの端に腰かけて、ぼんやりとカーテンの隙間を見てた。
昼か夜か、わからない。時計は止まってる。
スマホは通知音だけをくり返してるのに、画面は見ない。
息を吸うたびに、胸の奥が痛む。
「考えろ」って言われた言葉が、まだ頭の中をぐるぐるしてる。
考えたくない。でも、考えないと責められる。
「サボりじゃね?」って声が、遠くでまだ鳴ってる。
ふっと笑いが漏れた。
何が可笑しいのか、自分でも分からない。
涙がひとつ落ちて、笑いがこぼれる。
「意味わかんねぇよ……」
声がかすれて、息が続かない。
床に倒れ込んで、薬のシートを指でつまむ。
角の折れた一枚。そこだけ、銀が剥がれてる。
ノワレはそれを握りしめて、やっと目を閉じた。
部屋の外は静かすぎる。
どこかで風の音だけが鳴っていた。
ドアの向こうで、ノックの音がした。
最初は小さく、次第に強く。
「ノワレ? いるんだろ」
その声に、ノワレの指がぴくりと動いた。
返事はしない。
息を殺して、床に沈む。
しばらく沈黙が続いて、やがてドアノブが静かに回った。
光が細く差し込む。
友人が、顔を出した。
「……なにしてんだよ」
声は驚きでも怒りでもなく、ただ、戸惑っていた。
部屋を見渡した友人の目が、少し揺れる。
薬のシート、乾いた涙、笑いの残骸みたいな顔のノワレ。
「……お前、泣いてんのか?」
その言葉に、ノワレはゆっくり首を振った。
「違う。笑ってるだけ」
嗄れた声でそう言って、笑おうとしたけど、喉の奥でつっかえた。
涙と笑いが混ざって、うまく息ができない。
「なあ……何があった?」
友人は近づきながら、躊躇って、距離を詰めきれない。
ノワレは床の銀の破片を指でいじりながら、ぽつりと呟いた。
「原因が分かんないって言ったら、ただのサボりだって」
しばらくの沈黙。
友人の表情が、少し歪んだ。
「誰がそんなこと……」
ノワレは答えない。
ただ、くすりと笑って、頬を伝う涙を舌で舐めた。
「ほら、結局、笑えてんじゃん」
友人はそれを見て、言葉を失ったまま、
そっと床に座り込んだ。
二人の間に、空気の重さだけがゆっくり積もっていく。
窓の外で風鈴が鳴った。
音が、やけに遠く感じた。
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エロい