テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
いよいよ、今日入籍する。
お昼休みに2人で区役所へ行くつもりだ。
「仕事大丈夫そう?」と匠に聞くと、
「うん! 大丈夫」と言うが、忙しそうなのだ。
「もし無理そうなら私1人で行って来るから」と言った。
「うん、でも、俺も行きたいから」と、
朝は、そう言っていた。
美和と急いでお昼ご飯を食べて、匠を待っていたが、どうも仕事に追われているようだ。
「1人で行って来ようかなあ」と言うと、
「あ、じゃあ私も行く! 見届け人になってあげる」と美和が言ってくれた。
「ありがとう」
そして、早く行かなきゃ昼休み中に、戻って来られないかもしれないから、『もう行こう!』と言われた。
匠に、〈美和と行って来るね〉とメッセージを送った。
〈ごめん、後で追いかける!〉と来た。
〈無理しないでね〉
〈うん〉
そして、見届け人の美和と区役所に到着。
その時、匠から電話が鳴った。
『ちょっとだけ待ってて! 今出たから』と、走りながらかけて来てくれた。
とりあえず、番号札を取って待つことにした。
「次だね」と美和
「うん」
思ったより空いてたので、スムーズに進んでいる。
そして、番号が呼ばれた。
「はい!」と思わず手を挙げた。
すると、匠が走って来た。
「間に……合った……はあ、はあ〜」と息を切らしながら、「ギリギリ、セーフ!」と言うと、
「本当に見届け人になったわ」と美和が笑っている。
「ありがとうね、美和」
「うん!」とニッコリ笑ってくれている。
そして、私たちの婚姻届は、無事に受け取ってもらえた。
「おめでとう!」
と、1番に美和にお祝いしてもらえたことが、凄く嬉しかった。
「ありがとう」と、美和と抱き合った。
そして、美和は、チラッと時計を見て、
「まだ、時間あるし、写真撮ってあげるよ」と、
記念撮影用のブースの所で写真を撮ってくれた。
「うん! やっぱ、お似合いだわ! なんか顔まで似て来てない?」と言われて、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
「え? そうかなあ?」と言うと、
「兄妹みたいに育てられたから、似てるかもな」と笑う匠。
「おお〜良い写真が撮れたわ〜」と喜んでいる美和。
「そっかそっか、はあ〜ホント良かった」と美和の方が感動してくれている。
それを見て、
「え? そんなに?」と匠は、笑っているが、
私も嬉しかった。
「美和〜ありがとう〜」と言うと、
「じゃあ帰ろうか」
「うん」と、私と美和が腕を組んで歩く。
「ハハッ、なんで?」と匠は笑っている。
そう言いながら、私たちの後ろからついて歩いていたが、私の左側に来て私の手を繋いだ。
「「ふふ」」
大好きな2人に囲まれて幸せだ!
そして、会社の手前で、匠は、さすがに手を離した。
でも、美和が
「じゃあ、報告するんでしょう?」と、
「うん」と言うと、
「行ってらっしゃい!」と、私たちに言ってくれた。
「ありがとう」
「サンキューな!」
「おお!」と男前な美和だ。
そして、私たちは、部署に戻り、ゆったり休憩されていた部長の元に行き、入籍したことを報告した。
「え───っ! そうなの?」と、寝耳に水という顔をしながらも、
「そっかそっか、おめでとう!」と言ってくださった。
そして、今後のことを聞かれたが、今のまま私は変わらず、仕事を続けたい旨を話した。
「分かりました」と、人事には、報告しなければならないようなので、部長の方から連絡してもらうようだ。
「と、言うことは、もう部の皆んなには話しても良いのかな?」と……
そう聞かれると思っていた。
今までの他の人の流れから、人事部に報告すると、
一瞬のうちに噂は、広がってしまうので、部内には先に報告するのだ。
そして、
そろそろ午後の始業という頃、
部長が、
「え〜そろそろ午後からの仕事の時間ですが……少しだけ良いですか?」と、皆さんの方を向いて話された。
昨日の騒動があったばかりだし、また何か? と、
皆さん少し表情が固いような気がした。
わざと、部長がシビアな顔をしているからだ。
私は、笑いそうになりながら、真面目な顔をしなくては……と堪えていた。
そして……
「本日……このお2人が入籍されました〜!」と
言うと、
皆さん、
「え────っ! そうなの? おめでとう〜」
「うわ〜全然知らなかった、おめでとうございます」
「おめでとう〜綾ちゃん良かったわね」
「はい! ありがとうございます」と言うと、
「綾瀬くん、良かったね〜おめでとう〜!」
「ありがとうございます」と、たくさんの拍手でお祝いしていただいた。
「いや〜めでたい! 今、眠いなあと思ってたのがビックリして目が覚めたよ」とおっしゃっておられる方も居て、
「おいおい! 真面目に仕事してくださいよ」と部長に言われて皆んなに笑われていた。
「あら、綾ちゃん、綾瀬綾になったの?」と、先輩に気がつかれて笑われてしまった。
「そうなんですよ〜」と、しばらくその話題で持ちきりだったが、
「お時間頂戴して、ありがとうございました」と、
2人でお辞儀をした。
そして、パチパチと拍手をしていただき、業務に戻った。
やはり、皆さんは、元々私と匠は同期で、仲が良いということは、分かっていたので、2人が話していても何の違和感もなかったと口を揃えて言われた。
恐らく、元カレのこともご存知だから、逆に心配してくださっていた方もいらっしゃったようだ。
なので、今まで何もなかったのに、入籍したことで、一気に私たちが少しでも会話していると、皆さんニッコリされているようだ。
「「ふふ」」
少しやりづらくなってしまったが、今だけだろうと思う。
『結婚式は、するの?』とか、『新婚旅行は?』などと、聞いてくださる方々もいらっしゃる。
私たちは、ありのままを伝える。
そして、人事部からの報告メールが流された。
私たちの婚姻に関するご報告だ。
それを見た人たちに一気に広まった。
トイレに行って、同期に会っても、
「結婚おめでとう」と言われた。
「ありがとう」
滅多に話さない子だ。
恐らく、『可哀想な元カノ』だった私は、昨日の騒動で、一気に消え去り、
『寝取り妻は、バカ女に寝取られた』という題でも付いたかのように、一気にあの3人のドロドロ模様へと変わったので、私は、ようやく解放されたようだ。
私には、関係ないので良かったと思った。
帰る時、家族メッセージにも、一斉に報告した。
朝は、父に〈お誕生日おめでとう!〉と送ったので、皆んなそれで盛り上がってくれた。
〈無事に入籍しました!〉と、送ると、
〈おめでとう! 私の誕生日にありがとう〉
〈おめでとう〜末永くお幸せにね。また来てね〜〉
〈おめでとうございます。ずっと2人で力を合わせて仲良くね。自宅の方にもいつでも遊びに来てね〉
〈おめでとう〜いつまでも2人仲良く!〉
それぞれの性格が出ていて面白いと思った。
「お父さん! ありがとうって……」
「ハハッ」と匠も笑っている。
〈これからは、2人仲良く共に歩んで行きますので、どうぞよろしくお願いします〉
と匠が返してくれた。
私は、ぺこりとお辞儀しているスタンプを返しておいた。
「ヒュー!」と私が言うと、
「ハハッ、自分たちのことなのに……」と笑っている匠。
そして、夕方、私はわざと、
「じゃあ、《《あなた》》先に帰ってご飯作ってるわね」と、言うと、
「おお! 頼むよ。ハハっ」と照れながら笑っている。
それを近くで聞いていた匠の上司が、
「良いな〜綾ちゃん可愛い! 俺、綾ちゃんのこと好きだったのになあ」と言っていたようだ。
「そうなんですか?」
「うん。毎日ウチに綾ちゃんが居るのかよ!」
「あ〜居ますね〜」と言う匠に、
「この野郎〜! 羨ましい〜」と、こちょこちょとカラダをくすぐられたらしい。
「ウウウッ やめてくださいよ〜ハハッ」
30オーバーの男性も多くいらっしゃるので、
「綾瀬ちょっと早くないか? お前まだ20代だろ? 早いんじゃないか?」と、笑いながら、意地悪を言われたようだ。
「早くないです!」と笑いながら返したようだ。
「あ〜俺も早く結婚して〜! 誰か紹介して!」と懇願され、
「ハハッ」と誤魔化したようだ。
──やっぱり、出会いの場としては、パーティには呼ばなきゃいけないのか? と匠は思ったらしい。
そして、智之は、年度の途中ではあるが、12月5日付で、愛媛県にある小さな営業所に飛ばされた。
本社での出世を絶たれた実質の左遷だ。
奇しくも私たちの入籍日と同じ日になってしまった。
もう会わなくて済むと思うと良かった。
|山脇さん《奥様》は、出産のこともあるので、どうされるのか? と思っていたら、
『この人は、私の監視が届かない場所へ行ってしまうと又同じようなことをしてしまうから』
と、一緒について行かれたようだ。
そして、早速、赴任当日には智之と一緒に営業所に出勤して、
「坂崎の妻でございます」と、皆様にご挨拶して、
智之の相手をするような女が居ないか? と、
チェックして、「主人は、このような見た目で優しい性格ですので、どうも勘違いをされる女性が多くいらっしゃいますの。誤解されませんように、よろしくお願いします」と、先制パンチを送ったようだ。
そういう噂も本社には、すぐに回って来る。
でも、真実味があり過ぎて怖い。
恐らく本当の話だろう。
あの人ならやり兼ねないと思った。
このまま事を起こさず、慎ましく生活していって欲しいものだ。