テラーノベル
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「見たか!? 新しいイベントの告知! 見たよな!? PVも出てんぞ!」
「リーダー、興奮し過ぎ。まぁ次の“賞金首イベント”っすからねぇ、皆見ましたよぉー? まさか全員新武器導入とか、運営やってくれるわぁ……どんだけ仕事してんだよって話。俺、間違ってもガンサバの運営チームにだけは転職しない」
興奮した状態でウチのクランへと突入してみれば、既にいつものメンバーが揃っていた。
それでも興奮が収まらず、ガンサバ内だと言うのにタブレットを取り出してから。
「見ろよ! シックスの新しい武器の予告! 嘘だろコレ実装すんのか!? リアルで販売したばっかの銃な上に、専用のカスタムパーツって! ヤバ過ぎるだろ! これもコラボガン出るんかな!? 俺絶対買うけど!?」
「落ち着け~? リーダー。どぅどぅ」
仲間達からは呆れた視線を向けられてしまったが、こればかりは話したくて仕方なかった。
だってこの銃、リアルの方で発売されたモデルな上、実銃には無いヤツなのだ。
つまり、そっちの会社と完全に協力関係を築いていると言う事。
という事はこの先も、どんどん新しい商品がリアルで販売される可能性がある。
その上でこれまた新商品のフルカスタムモデルを出して来たら、間違いなくコラボ品登場するでしょ!? というのがこっちの感想になる訳で。
くっそ、ガンサバの運営陣はプレイヤーの財布をどれだけ穴だらけにすれば気が済むんだ?
この前の賞金首専用ハンドガンだって、使う用と観賞用で二つ買ったのに。
今度は完全に“シックス専用”のハンドガン?
はぁ? 買うわ、当たり前だろ。
というかPV! もっとシックスがコレ撃ってる所写せよ!
こんなカスタムモデルと、あの冷静沈着な賞金首がセットになったら、そして目の前で動いてくれたら。
そりゃもう完全に映画の主人公だろってレベルで格好良いじゃねぇか。
「あぁぁ……良い。この銃ほっしぃぃ……何この、細かい所まで全部手を加えましたってカスタム。もういっその事スライドにシックスの名前でも掘っちまえよ」
「そこまでやると、ちょっとシックスっぽくないんじゃないっすか? ホラ、アイツの特徴って、“特徴が無い”事が特徴って言うか。え、俺でも出来そうじゃね? って動きをしつつ、実際にはヤバイ事の連続っていう」
「だよなぁ!? お前分かってるじゃねぇか! いやでも、名前掘ってあったらサインみたいで嬉しいって言うか……」
「だぁめだコレ、完全に厄介なファンの思考だ」
仲間達からは更に呆れた視線とため息も貰ってしまったけども。
でも、欲しい。
元々の銃だって4.3インチにコンパクトにした、綺麗なモデルだったと言うのに。
コレを逆手に取り、5.1インチのモデルよりもごつく派手にして来た感じ。
各パーツも微妙に形が変わっている上、まさにカスタムって感じの渋い艶消しカラーに変化。
何より銃身を包み込む様なコンペンセイター、コイツはいったい何だ。
完全にこの為だけに存在しているみたいに、スライド前方ををカバーする形で一体感を増している。
スライドだって、ガッツリやったぜ! っていうパターンが彫ってある癖に、どう見ても使いやすそう。
そしてハンドガンでも、スライドの上に別パーツのサイトを乗せるヤツは珍しくない。
実際ドットサイトが付いていた方が、戦闘で有利なのは確か。
だというのに、シックスの戦闘距離を考慮してなのか、そう言った余分な物は一切付いていない。
色合いもマットグレーとブラックでまとまっており、バレルやトリガーと言った細かいところだけシルバー。
全体的にシックに収まっているスタイルも、まさにヤツらしいと言えるのだろう。
シックスが戦いやすいという理由だけで作られた、たったその為だけの専用設計。
それが滅茶苦茶、ガンマニアは刺さると言うものだ。
「のわぁぁぁぁ! 欲しぃぃぃ!」
「落ち着け落ち着け。今回は結構参加チャンスがあるみたいだし、一回負けても再度挑める方針みたいだし。それに期間もそれなりにある」
「ぜってぇ取る! 何度もシックスに挑んでやる!」
「おーい、他の面々の事も考えろー? まずはメイン武器狙い、な? そうしよう。セブンとかフォーを狙うのが、ウチのチームとしては最優先だって。他の新武装も捨て難いぞー? これがあれば、ガラッと戦況が変わるかも」
「お、ご、がっ……」
「落ち着け、リーダー、頼むから。これ、チーム戦。OK?」
そんな訳で、早くも次のイベントが待ち遠しくなって仕方ない。
早く、早く!
次の賞金首イベント、早くして下さい運営様ぁぁぁ!
◆
『夢月、準備は良いか?』
「すぅぅ…………ふぅ。大丈夫、いけるよ」
賞金首の為の待機エリアにログインしてから、静かに息を整えていた。
イベントが始まる前の、この空気。
いつまで経っても慣れない。
ずっと緊張しっぱなしだし、失敗したらどうしようって逃げたくなって来る。
でも、凄く不思議なのだ。
この時間、イベントが開始されるリミットを視線の端に収めつつ、息を整えている短い時間。
リアルの私では絶対に陥らない心境へ、徐々に染まっていく感じがする。
なんだろう、この感情。
怖いのは当然だし、責任感だって積み上がり過ぎて胃が痛くなる思いなのに。
けど、それ以上の何かが心を塗り替えて行く様な感覚。
普段だったらガチガチになって、普通の動きすら出来なくなってしまいそうなのに。
毎回、この瞬間だけは別の感情が先行する。
期待……とはまた違うけど、そういったプラスの感情。
これがあるからこそ、私はこのカウントダウンを静かに見つめる事が出来る。
「それでは、よろしくお願いしますね。シックス」
隣に並んで来たsecondが、丁寧なお辞儀をしてくれたのだが。
いつもだったら、こちらこそ! ってペコペコ頭を下げている所だろう。
でも、今の私は“シックス”という名の賞金首。
この感覚が全身に馴染んで来たのか、静かに頷いて見せた。
「私が全部倒します。だから、先生は……先生の仕事を、お願いします」
「えぇ、心得ていますとも。全力で“サポート”させていただきます」
そんな言葉を交わしつつ、静かに新しいハンドガンを抜いてから。
銃を正面に持って来て、ソッとスライド部分を胸に添えた。
この銃は、私のフワッとした我儘をお兄ちゃんが叶えてくれた物。
そして、これを作る為に多くの人が頑張ってくれた証。
今のところ私だけの、世界に一丁しか存在しない拳銃。
もしも私がキルされれば……今回のイベントでは、コレがドロップしてしまう可能性があるのだ。
ゲームである以上コレ自体は悪い事ではないが、なんとなく……嫌だ。
皆が頑張ってくれた証を、簡単に手に入れて欲しくない。
同等とは言わずとも、コレを作ってくれた人達の頑張りに相応しいプレイヤーだけが、手にして欲しい。
なんて、とても我儘で欲張りな感情が胸の中を支配していく。
もっと言うのなら、皆の頑張りに応えるのは……私自身だ。
だからこそ、気合いを入れろ。
今の私は、リアルの弱い自分じゃない。
賞金首の6番目。
ガンサバイブオンラインの“シックス”なのだから。
「行きましょうか、セカンド。“仕事”の時間です」
「フフッ、頼もしい限りですね」
『今回はこっちも全力でサポート出来る許可が出てる。思いっ切りやって来い、夢月。何より……“楽しんで来い”、良いな?』
二人の声を聞きながらも、私達二人の賞金首は専用ステージへと歩み出した。
新たな装備を手に、コレを求めるプレイヤー達が次々と押し寄せる中。
今回もまた、絶対に生き残る。
シックスがやられたというキルログは、絶対にもう残させない。
これを心に留めながら、非常に静かな心で銃のスライドを引くのであった。
さぁ、戦闘開始だ。
今回は私達の武装を目立させる為にも、各々のタッグに有利なステージが用意されている。
それどころか、新しく用意された武装は……これだけではない。
これ等の訓練をひたすら続けて来た成果を、皆に見せつけてやるんだ。
くろぬか
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柘榴とAI

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柘榴とAI

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「囧」
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コメント
1件
いやもう、冒頭のリーダーのテンションから完全にこっちまで引きずられましたよ(笑)。新しいシックス専用ハンドガンの描写がめちゃくちゃ細かくて、ガンマニアの心をくすぐる設計思想が伝わってきました。あの“渋い艶消しカラー”と“一体感のあるコンペンセイター”、脳内で完全に想像できました。 最後の夢月さんの静かな決意の切り替わりも好きです。あのカウントダウンの緊張感と、同時に“シックス”としての自分に染まっていく感覚。先生との掛け合いも相変わらず絶妙で、今回も絶対生き残ってほしいです。