マフィアを追い出される芥川の話(年齢操作あり)
「…君に割いてる時間などない、今日の折檻は終わり。いいね。」
そう言うと貴方は出ていってしまった。
「…げほっ、かはッ…ぅ、… 」
体力を使い果たしたのか声も出ない。
明日の任務に支障が出ない程度に蹴られ、殴られる。それが日常。
時には銃口を向けられることもあるが、…その方がまだ良かった。
あの雨の日、僕は任務を終え報告作業を済ませるところだった。
あの方に気に障るようなことをしてしまったのだろうか、
顔を向けると突然頬に熱が走る。思わず手をついてしまった。
ようやく僕が叩かれた事実を処理した頃にドスの効いた声で言い放つ。
「消えてしまえば良い。」
何故、何故僕は貴方に見限られぬよう、折檻にも耐え、
絶望等の言葉では表せない暴言を囁かれても、弱音を吐かずにいたのに。
「…生きる意味を、与えてくださるのでは無かったのですか…ッ」
震えを抑えられず声が上擦る。
「生きる意味?そんなもの私が与えられると思っていたのかい?」
聞きたくない、耳を塞ごうにも手が震え、目を見張ることしか出来ない。
「死にたがりの私が与えられるわけがないだろう?」
何かが込み上がってくる。胸が熱い、痛い。気がついた時には頬に涙が伝っていた。
こんな情けない姿を最後にさらす事になるなんて。
何故か貴方は一瞬、驚いた顔をしていた。
その表情もすぐ消え失せ、座り込んだ僕の腹に蹴りを入れる。
「かはッ…、ぁ゙…ッ」
容赦なく身体中何度も蹴りが叩き込まれ、意識が飛びかけたところで動きが止まる。
「ッは、ぁ゙…はッ、はッ…」
「……。」
咳き込む僕を冷たい眼で見下している。
突然腕を掴まれ、引きずられる。
抵抗する力も残っておらず、自分の血が滴った跡を見ることしかできない。
「……」
どうやら裏口に投げ捨てられたようだ。雨に打たれ、体が冷えていくのを感じる。
此方を見向きもしないあの人の冷たい背中を見ながら、意識は途切れた。
芥川は知らない。自分に背を向けている師の、苦虫を噛み潰したような苦痛の表情を。
暫くして、意識を取り戻し、 ぼやける視界を 確認すると、
目の前には自分を取り囲む屈強な男たちがいた。
「お目覚めか、眠り姫?」
男の一人が嘲笑うように問う。
力を入れようにも体力を使い切り、冷え切った身体は言うことを聞かない。
「お前は知らねぇだろうがよ。俺たちの組織はお前の上司のせいで潰されたんだ。
お陰で職も失い、金もねぇ。そこに其奴の部下が転がってたらどうする?」
そう言うが否や、髪を掴み上げ目線を芥川と合わせる。
「ぅ、あ…」
「こうするに決まってるよなぁ!」
男は芥川を殴り飛ばし、頭にぐりぐりと足を押し付ける。
「ぁ゙、ぐ…、ふーッふッ」
「そんな睨むなよ。虐めたくなるだろ?(笑)」
そう言って男達は殴る蹴るを繰り返し、意識を飛ばせば水溜りに顔を沈められる。
「はぁ゙ッ、ぁ゙ッは、けほッカヒュッヒュ」
反応に飽きたのか、どんどん過激になってゆく。
首を絞められ、馬乗りで殴りかかってくる。
「ムカつくんだよッ。澄まし顔で俺達を見下すお前の上司も!
どんだけ痛めつけても抵抗し続けるお前も!!」
「ぁ゙ッ、ぅ゙あ…、」
上手く呼吸が出来ず、生理的な涙が瞳に浮かぶ。
自分はこのまま此奴等に殺されるのだろう。
あの人がくれた外装も泥や血で汚れてしまった。
異能を使おうにも、既に手脚の感覚もない。
体力の限界を越えたのなら次は命の限界。此れを超えたら死ぬ。
あの人に認められず、それどころか捨てられた自分に生きる価値等無いのではないか。
半ば何処か諦めているのだろう抵抗していた体も力が抜け始めた。
その時、若い男の声が響く。
「おい!お前たちここで何をしている!!」
男達はその姿を一瞥すると表情を変え、次々に逃げ出す。
助かった、のだろうか。若い男が何か言いながら駆け寄って来る。
音も聞こえず、朦朧とする意識。
自分は横抱きにされているようだった、
その温もりはとても暖かく思わず離したくないと思ってしまった。
無意識のうちに縋り付いた芥川を男が強く抱き締める。
優しい温もりの中、芥川はゆっくりと意識を手放した。
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