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「____もし、私がこの世界から消えてしまったら?」
彼女は、突然私に向けて言い放った。
「消えたら?…うーん、喩え何を超えようとも捜すわ。」
彼女は少し微笑んだ。
「そう。ありがとう。蓮子。」
“蓮子”、「宇佐見 蓮子《うさみ れんこ》」。―これは私の名前。
そして彼女の名前は「マエリベリー・ハーン」。素敵な名前だ。
だが少し発音しにくいため、親しみを込めて「メリー」と呼んでいる。
私達は大学のオカルトサークル、「秘封倶楽部」の部員だ。
―と、言っても、部員は私達二人だけだが。
それぞれ私達は、少し特殊な能力がある。
メリーの能力は、「結界の境目が見える程度の能力」であり、私の能力は「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」だ。
「…あ、そういえば、メリー。
この前私達、七夕坂へ行ったじゃない?」
―七夕坂。そこはかつて、日本の首都都市であった東京の近くに位置している坂。
東京とは言え、私達の棲む所から見れば田舎でしかないのだが。
「そうね。
あの時は、まさか蓮子が地蔵を私と見間違えてひっくり返すなんて思わなかったけれど。」
あの時は必死になっていてよく見えていなかったのだろう、そう今は考えている。
「まぁ、あれは…ちょっと私も 悪かったわ。」
「もう前の事だし良いけれどね。
さ、そろそろ出ましょうか。」
「そうね、後はゆっくり景色でも観ながら帰りましょうか。」
「あら、丁度私も考えてたの。」
―――店を出て、他愛もない会話をしながら道を歩いていた。
すると、メリーが立ち止まりこう言った。
「…さっきの解答、何だか蓮子らしくって面白かったわ。」
と。
「そう?私はただ思った通りに答えただけだなー。」
まぁ少し考えたが。
「ふふふ、それでも貴方らしい度胸を感じるわね。」
「…そ、そうかな?…でもありがとう。」
「えぇ。勿論。」
―――それからまた、他愛もない会話をしながら帰路へと着いた。
「…特に何も意味は無いだろうけど、メリーは何であんな質問を…?」
「確かに最近、どこか人間って感じが薄れてきて、寂しいなとは感じてたけど…まさか、本当に…?」
―こんな事は考えたくないが、いつか本当にぱっと消えてしまうのだろうか。
まるで、”幻“のように。
随分前に、「妖怪の棲む所が見えた」と言っていた。
‘いつかはこの世界から居なくなって、そこに行ってしまうのだろうか。’
‘いつかは別れの時が来るのだろうか。’
そう考えると、途轍もない不安が募ってしまう。
だが起こりもしない不安を考え続けていては良くない、今日はもう明日の講義の為に寝床へ着こう。
ベッドへ横になり、私は目を閉じた。
___何があろうと、私は絶対に彼女を見つけ出す。
そう誓いながら、私は眠りへと落ちた。