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____次の日。
私は不安がまだ少し残っていたが、一旦は考える事を辞めにした。
私はいつも通り大学へ行き、メリーと一緒に講義を受けていた。
午前最後の講義で、メリーが私にこのように耳打ちをしてきた。
「少し話があるから、お昼に一緒に部室へ行きましょう。」と。
また夢の話なのかもしれない、と考えたが、聞いていて飽きないので私は快く承諾した。
―昼になり、私達は一緒に部室へ向かった。
暫くの沈黙の後、メリーが口を開いた。
「昨日の夜、また不思議な”夢“を見たの。」
私の予想した通りだ。だが結構気になるのでメリーに詳しく聞くことにした。
「…夢?どんな?」
メリーは座りながら話してくれた。私も椅子に腰掛け話を聞くことにした。
「また不思議な世界へ迷い込んだ夢よ。」
「…おや、この前と同じ感じね?」
「そう。でも今回は少し違うわよ。」
「…違う?どんな風に?」
「…ふふ、聞いてくれるのね。 」
「今回の夢は、大きな水湖のある神社の前に居たの。」
「…前の紅いお屋敷とは違うのね。」
「そう。前の紅いお屋敷じゃなくて神社よ。」
「柱も沢山あったの。目が柱まみれになりそうなくらいにね。」
「そうなのね。…それで、そこには誰かいたの?」
「えぇ。居たわ。 確か… 緑の髪をしていて、頭に蛙の飾りのカチューシャを付けていたわ。」
「…へぇ、随分と奇抜な人ね。」
「まぁ、そう思うわよね。」
「『そう思うわよね』って、メリーは違うの?」
「えぇ。人間ではあるけれど、まるで人間じゃないような雰囲気を感じたの。強いて言うなら、神の様なね。」
「…神のようなって、それこそ奇抜じゃない。まぁ、結構面白いから良いけど。」
「ふふ、でしょ?」
―――こんな会話を、休み時間が過ぎるまで続けていた。
メリーの話をまとめると、
一つ目は「大きな水湖のある神社の名前は『守矢神社』」ということ。
二つ目は「前の夢の話にもあった紅いお屋敷、そしてもう一つの神社、そしてこの守矢神社以外にも複数にわたって建物がある」ということ。
三つ目は「この夢の出来事こそが妖怪の棲む世界へ一時的に入り込む方法」ということ。
メリーは「相対性精神学」を専攻しているから、色々と夢繋がりで何かと思いつきやすいのかも知れない。
まだまだ聞きたいことはあったのだが、私はこの中でも特に” あるもの“が引っかかった。
それは___
___「夢を見ることこそが一時的に妖怪の棲む世界へ入り込む方法」だ。
確かに考えれば、この現世、つまりこの世界からは「直接的な肉体を介しての干渉」は不可能だ。
だが、夢という意識を一時的に喪わせる時間の中では、喩えどんな世界だったとしても「夢」として誰でも観ることができる。ましてや場面が変わる夢を見ることも。言う慣れば”夢の時空を超えること”だって。
そうであれば、確かにこの世界の境界の外である「妖怪の棲む世界」に入り込む事が出来るのにも納得が行く。
この世界では、物事でも何でも、1ミリでも現実と懸け離れれば「妄想」や「夢」という形になる。
…信じるかは人それぞれだが。
―――ならば何故、前回は夢の中から、天然の「筍《たけのこ》」を持ってこれたのか?
とまぁ、これ以上は長くなるのでここら辺で留めておこう。
――――講義終わり、私はメリーと一緒に帰っていた。
私はメリーに聞きたいことがあった。
「あ、そうだメリー。」
「何?蓮子。」
「…今回の夢で、何か持ち帰ってきた物はある?」
「あぁ、お土産?」
「まぁ、そうかもね。」
「持って帰ってきたわ。
…これよ。」
__持ち帰ってきた物はなんと「守矢神社」と書かれた札だった。
「…それって、神様的に大丈夫?」
「まぁ、これくらいなら神様も怒らないわよ。」
「そういうもんかなぁ?」
―私は少し戸惑ったが、見ているうちに何とも不思議な感じがしてきた。
この前の勾玉とはまた違う神秘さを感じる。
それにしても、あの世界にも現実《こっち》と同じような”札”があるならば、この世界から消滅などした神も一定数存在する可能性が高いだろう。
都は言え、メリーが勝手に持ち出しているようにしか見えないが…
「その札、どうするの? 」
「うーん、保管しておくわ。」
「…そう。もし何かあったら私が何とかしてあげる!」
「ふふ。ありがとう、蓮子。」
_”また、この世界から消えてしまう状態近づいて居るのかも知れない。”
そんなことが頭によぎる。
そんな事を考えている内に、メリーに声を掛けられた。
「…ねぇ、蓮子。」
「…何?メリー。」
彼女は照れながら言った。
「もし私が、貴方と歩いた世界から消えても、
…ずっとずっと、一緒に居ましょう。」
「…もちろんよ、メリー。」
―私達は、照れ笑いをしながら帰った。
―「また明日ね、メリー!」
―「うん、また明日!」
_私はめいいっぱい手を振って家へと帰った。
「……ずっとずっと一緒よ、メリー。」
――――そう、呟きながら。
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