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赤羽結乃愛
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サッカーオタク
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# 『6番の約束』
七月。
蝉が鳴き始めた。
病院の窓から見える空は、
どこまでも青かった。
「今日もいい天気ですね。」
看護師がカーテンを開ける。
「はい。」
彼女は笑う。
「大会、近い?」
「来週です。」
「楽しみ?」
「すっごく。」
その返事だけは、
迷わなかった。
ベッドの横には、
サッカーの大会日程が貼ってある。
試合の日だけ、
赤い丸が付いていた。
「外出許可、出るといいね。」
「絶対行きます。」
「先生が許してくれたらね。」
「お願いしてきます。」
笑う。
その笑顔の裏で、
体は少しずつ弱っていた。
階段を上るだけで息が切れる。
食事も半分しか食べられない。
夜になると熱が出る。
それでも。
大会だけは、
絶対に見に行きたかった。
「応援団長だから。」
誰もいない病室で、
そう呟いた。
大会当日。
奇跡みたいに、
外出許可が出た。
母に支えられながら歩く。
病院を出る。
久しぶりの外の空気。
「暑いね。」
「夏だから。」
笑う。
会場に着く。
観客席。
グラウンドを見る。
「あ。」
いた。
6番。
いつも通り走っている。
誰よりも声を出して。
誰よりも全力で。
彼女はスマホを開く。
【6番ねー!】
送信。
数秒後。
【見つけられた?笑】
笑ってしまう。
【よゆー!】
返信する。
試合が始まる。
ボールを追う姿。
仲間を鼓舞する声。
転んでも立ち上がる姿。
全部目に焼き付ける。
「かっこいいな。」
小さく呟く。
その声は、
歓声に消えた。
試合終了。
負けた。
悔しそうにうつむく6番。
すぐにLINEを送る。
【負けてしんどいのはどのスポーツも一緒だから!】
【でもはるきはがんばってた!】
送信。
既読が付く。
返信は来ない。
きっと落ち込んでいる。
「今日はそれでいい。」
彼女は笑った。
病院へ戻る。
消灯時間。
静かな病室。
窓の外では、
街の明かりが揺れていた。
机の引き出しから、
白い便箋を取り出す。
ペンを持つ。
何度も止まる。
書いては消して。
また書いて。
涙が一滴、
便箋に落ちる。
「泣いちゃダメ。」
自分に言い聞かせる。
最後くらい。
笑って終わりたい。
そう思った。
ゆっくり書き始める。
『はるきへ。』
そこで手が止まる。
「何から書こう。」
思い出が多すぎた。
試合。
帰り道。
くだらないLINE。
ミサンガ。
「全部幸せだったな。」
自然と笑みがこぼれる。
そして、
最初の一文を書く。
『まずは言わなくてごめんなさい。』
病室には、
ペンが紙を走る音だけが響いていた。
その頃。
はるきは家で、
今日届いたLINEを見返していた。
【でもはるきはがんばってた!】
その一文に、
少しだけ救われていた。
まだ知らない。
その応援が、
命を削りながら送られていたことを。
コメント
1件
ああ〜もう、読んでて胸がぎゅーっとなったよ😭💕 第3話、すごく良かった…! 夏の青い空、病院の窓、そして「絶対行きます」って迷わない彼女の強さがもう、尊すぎる。観客席で見つけた6番にLINE送るところ、めっちゃキュンときたし、「でもはるきはがんばってた!」って送る優しさに泣きそうになったよ…。最後の手紙のシーン、涙が便箋に落ちる描写がエモすぎて心臓がギュッてなった。知らないままでいてほしいような、知ってほしいような、複雑すぎるよね…。 愛さん、この切なさと温かさが混ざった感じ、めっちゃ刺さりました。続きも絶対読むからね〜!!🌸✨