テラーノベル
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窓から射す光がまぶしくて、目を擦る。
目に光をあてる実験はもう何度もしたが、この光は暖かくてやさしい。
『そっか、オレ…もうあんな酷いことはされないんだ』
逃げれたことに安堵する。
それに今は…
「おはようございます主様」
ベリアンという護ってくれる存在がいる。
『ベリアンさん…!おはようございます』
抱きつきたかったけど、出会って2日目。
きっと、まだ信頼を築けていない。
何故か、悲しくなってしまう。これは時間の問題なのに。
すると、ベリアンが両手を広げてこちらを見つめてきた。
「甘えていいですよもうあんなことをする人はいませんし…それに…」
『それに?』
一瞬下を向いて何か考えるような目をしていたが、すぐになんでもありませんと言った。
“それに”のあとは一体何を言おうとしたのだろう。
よく分からなかったが、それよりも今は…甘えたい。
『…ベリアン、ぎゅーして』
「ふふっ、分かりました。失礼しますね」
ベリアンの腕の中は暖かかった。
微かに紅茶の香りがする。よく飲むのだろうか?
時折、頭を撫でてくれるのがとても心地よかった。
『ありがとな、ベリアン』
感謝の言葉を述べると、嬉しそうに微笑んでいた。
1階に降り、「食堂」というところに来た。
本でしか見たことが無かったため、実物を見るのは初めてだ。
『わぁ…すごい!こんなにもキラキラした場所だったんですね!』
ほかほかした湯気が向こうから出ていた。
同時にいい匂いもする。
『ベリアンベリアン!あっち行ってみてもいいか?』
「いいですよ、行ってみましょうか」
ベリアンと一緒に、いい匂いがする方へ向かった。
「お、その子が主様ですか?」
「白くてもふもふだな」
キッチンには、人が2人いた。
「紹介しますね、こちらがロノ君、こっちがバスティン君です」
元気そうな方がロノで、大人しそうで…きつねみたいな方がバスティン。
「ロノです!よろしくお願いしますね主様!」
「バスティンと言う…よろしくな」
バスティンがこちらの方に手を伸ばしてくる。
どうやら撫でたいようだ。
『…撫でても、いい』
「本当か?ありがとう主様」
バスティンの大きな手が、自分の頭に乗せられ、しばらくしてから撫でられた。
「もふもふ…」
撫でられ心地は最高で、危うく寝てしまうところだった。
「おい、バスティン!お前だけ何してんだよ!」
「ロノ君。主様の前ですよ」
「…すんません」
ベリアンはすごい。人をすぐにまとめられている。
ここの屋敷のリーダーなのだろうか?
それでいて優しいなんて…前のアルジとは全然違う。
『なぁベリアン!オレ、クライアンって姓を貰えて嬉しいぞ!』
「…え?ベリアンさん…?」
「まさか…」
「…すみません」
何かイケナイことを言ってしまったのだろうか?
その言葉で、周りの空気が固まった。
『皆さんどうしました?わたくし…なにか、言ってはいけないことを?』
すると、ベリアンがそっと抱きしめてくれた。
「主様は何も悪くないですよ」
自分の頭を優しく行き来するベリアンの手。
大きくて、ちょっとゴツゴツしてて…かっこいい。
『ありがと、ベリアン』
少しだけ、顔が赤くなった気がした。
「っつーか!オレも主様撫でたいんですけど!」
『ん?いいぞ!ロノも遠慮なくオレのこと撫でてくれ!』
ロノの手が頭に触れる感覚がした。
ロノの手は少し血管が浮き出ていて、なんだか男の人だと感じられる手だ。
それと…撫で方がすごく元気。わしゃわしゃ撫でる。
『へへっ、ロノは元気いっぱいだな! 』
「主様も元気いっぱいですよ!」
3人にたくさん撫でられて、とっても幸せだった。
キッチンで、ロノやバスティンの作る料理を見ていると、突然ビーッ!ビーッ!と警報が鳴った。
怖くてその場にしゃがみこんだ。
この音、そうだ…あれと似ている。
おんなじ、こたちが…くるしんでいるとき、このけいほうが、なっていた。
『やめて!いやだ!いやだよ!シにたくない!おねがい、こわい…やだ…』
けいほう、なりやまない?
どうして?
まだダレカがくるしんでるの?
わからない、わからない。
つぎは、ワタシ?どれとくっつくの?
シヌの?みんなみたいに、しんじゃう…の?
「…さま!あるじさま!主様っ!主様!」
おとこのひとのコエがする。
このひとのナマエ、なんだっけ?
…そうだ。思い出したベリアンだ。
『ベリアン、あのうるせぇ音は?』
「もう鳴り止みましたよ。びっくりさせましたよね…すみません」
深刻な表情で下を向く。
『…ベリアンさん、大丈夫ですか?』
頬にそっと手を寄せる。
顔を上げたベリアンと目が合う。
桜色に輝く瞳が美しかった。
「大丈夫ですよ。主様がいれば、怖くありませんから」
そう言って、優しく微笑んだ。
「主様、突然で申し訳ありませんが…貴方の力が必要なんです」
こちらをしっかりと見つめるベリアン。
その瞳は揺るがなかった。
『分かった、あたしの力が必要なのね。あんたが言うなら、協力してやってもいいけど』
「本当ですか?ありがとうございます…!」
右手を取り、エスコートする形で外へ向かっていった。
この時のベリアンは知らなかっただろう。
主様が何故生み出されたのかを。
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