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あの日から
2年の月日が流れたーー。
2年前の9月、予定日を1週間過ぎて難産の末、女の子を出産した。
お父さん、お母さん、レイナさん、みんなに祝福されて産まれてきた愛しい我が子。
これからの人生、いろいろ人と素敵なご縁で結ばれますように……。
そんな願いを込めて結(ユイ)と名付けた。
2歳になった結は大きな病気もケガもなく、みんなに愛情を注がれスクスクと育った。
聖夜さんによく似た可愛くて愛しい結。
クリスマスを過ぎ、あと数日で今年も終わる。
「ママ!」
朝からお母さんと物置の整理をしていた結がキッチンに入って来た。
キッチンでお昼ご飯の用意をしていた私はガスを止めて、結の方へ向く。
「ん?」
結と同じ目線の高さまで膝を折った。
「これ!」
結が手に持っていたものを私の目の前に出す。
これ……。
結が手に持っていたものは、私の宝物入れ。
私が4、5歳くらいの時に、海外出張に行ったお父さんがお土産に買って来てくれたもの。
「懐かしい〜!」
「これ!」
結が宝物入れを上下に揺すった。
「開けて欲しいの?」
「うん」
結が笑顔でコクンと頷いた。
私は結を抱っこしてリビングに行き、ソファに座らせた。
宝物入れをリビングのテーブルに置く。
「その宝箱、懐かしいでしょ?」
「うん」
お母さんは結を抱っこしてソファに座ると、結を膝の上に乗せた。
「結が、どうしてもいるって聞かなくて……。ママに聞いておいでって持たせたんだけど」
お母さんはそう言って、クスッと笑った。
私は宝物入れを手に持った。
蓋をゆっくり開けていく。
「なんか、いろいろと入ってるわね」
「うん」
縁日で買ってもらったプラスチックの指輪やネックレス、可愛いシールなど、いろいろ入ってる。
それを、ひとつひとつテーブルに出していく。
…………あれ?
これ…………。
宝物入れの底の方にあったもの。
縁日で買ったものとは違うビーズで出来たネックレス。
「お母さん?このネックレス、覚えてる?」
「ん?」
お母さんはネックレスを手に取る。
「あぁ!これ、雪乃が幼稚園の時に仲良くなった小学生のお兄ちゃんがくれたものじゃない。雪乃ったら、いっつもお兄ちゃんの後ろについて回って……」
お母さんはネックレスを見ながら、懐かしそうにそう言った。
思い出した……。
私が通っていた幼稚園と同じ敷地に児童養護施設と教会があったんだ。
その施設にいた小学生のお兄ちゃんと仲良くなって……。
小学校が終わったあと、お兄ちゃんが保育園に遊びに来て、よく一緒に遊んでた。
教会の中に勝手に忍び込んで怒られたこともあったな。
そのお兄ちゃんが私の初恋の相手だった。
過去の記憶が蘇ってくる。
幼稚園を卒園と同時に今の家に引っ越すことになって、最後の日にこのビーズのネックレスをくれたんだった。
それだけ覚えているのに、なぜかお兄ちゃんの名前と顔だけ思い出せない。
なぜ?
…………あ、でも。
あのよく見ていた夢。
あれは正夢だったの?
胸がドクンと跳ね上がる。
もしかして……あのお兄ちゃんは……。
いや、でも……。
その時、ネックレスと同じように宝物入れの底にあった1枚の紙が目に入って来た。
それを出す。
ルーズリーフを丁寧に折ってあって、それをゆっくりと開いていく……。
「…………ッ!」
声にならない声が出た。
紙を持った手が震える。
「雪乃?どうしたの?」
「えっ?」
お母さんに声をかけられ我に返る。
「なんか、ずっと難しい顔をしてたけど……」
「えっ?」
お母さんも結も私を心配そうな顔をして見ていた。
「な、何でもないよ。昔を思い出しただけ。ちょっとトイレに行って来るね」
私はその場に立ち、紙を持ったままリビングを出た。
トイレに入り、もう一度、その紙を見る。
そこには、こう書いてあった……。
キミが二十歳になったら
また、この場所で会おう――……。