収録が終わって、急いでタクシーに乗る。
早く会って言いたい。
玄関で慌てて脱いだ靴はあちこちを向いて散らかったけど気にしてられない。
💚「舘さん!」
❤️「おかえり、わっ」
ソファにいた舘さんのところに飛び込んで、抱きとめられる。
時刻は今まさに24時になるところ。
💚「舘さん、誕生日おめでとう!」
❤️「ありがとう」
💚「俺、一番?」
❤️「ふふ、もちろん」
話している間に、舘さんのスマホは次々とメッセージの通知を知らせる。
💚「良かったぁ」
❤️「これがしたかったの?」
💚「ん。最初に会って最初におめでとうって言いたかった」
前日、舘さんも俺も遅くに仕事が終わる予定だったので家でささやかにお祝いしようと約束していた。
❤️「ささやかどころか、賑やかだね」
💚「確かに。でも、舘さんが一番に会うのも、一番に声を聞くのも俺が良かったから」
❤️「うん、嬉しい」
頭を押し付けるように舘さんにすり寄って、離れて、触れるだけのキスをする。
❤️「何か食べた?」
💚「まだ。こないだいい夜カフェ見つけたんだ、行こ?」
❤️「作るのに」
💚「誕生日だから今日は作らせません」
カフェは思っていた以上にオシャレで、ソファ席に通され『今日彼が誕生日で』と店員さんと雑談していたらケーキをプレートで出してくれた。
💚「すごい」
❤️「フラッと来ただけなのにこんなにしてくれて、嬉しいね」
💚「うん。俺もっとおしゃれして来れば良かった」
仕事帰りの深夜という事で、店の雰囲気に合わない訳では無いがまぁラフだ。
舘さんはパーカー1つとってもハイブランドだからきまってるけど。
もうちょっと考えたら良かった、なんてぼやいていると
❤️「なんで?阿部はいつも誰より綺麗だよ」
💚「わっ、出た舘弾」
舘さんはこういう事をサラッと言ってくる。
俺は舘爆弾、略して舘弾と呼んでいるが、これを何発も食らってその気になりすぎて『舘さんもう無理!これで彼氏にしてくれなかったら俺死んじゃう!』とメンヘラみたいな告白をしたのが始まりだ。
❤️「だって本当の事だから」
💚「嬉しいけど、恥ずかしい」
❤️「いいじゃない。阿部はいつも綺麗」
💚「舘さんもね」
舘さんは不思議だ。
この転がされている感じまで快感に変えてしまう。
ソファについた手に自分の手を重ねてそっと握る。
💚「改めて誕生日おめでとう、一緒にいてくれて、ありがとう」
❤️「こちらこそ。俺を愛してくれてありがとう」
💚「うん。舘さん、大好きだよ」
❤️「俺も愛してるよ」
所謂氷河期の頃からは考えられないし、あの頃舘さんとの関係に悩んでいた俺には今舘さんと付き合ってるから心配するなと言ってあげたい。
💚「ろうそく消す時、お願いごとするといいんだって」
❤️「なるほど」
舘さんは少し考えてから、ろうそくを前に目を閉じてから吹き消した。
💚「何お願いしたの?」
❤️「この1年も、阿部が俺の隣でたくさん笑っていますようにって」
💚「わぁ被弾」
❤️「ふふふ」
終