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岡部さんがぶっきらぼうに言う。
「橘、お前顔色が悪いな。ま、俺も来た時ゃそうだったけどよ」
鈴木さんが少し笑いながら言う
「まぁ、すぐ慣れますよ、どうせすぐに飛ぶんですからね。」
その言葉に俺は笑えなかった。
夜。蝉の声も止み静けさが戻った頃、1人で外に出た。
湿った土の匂い、遠くでなくフクロウの声、そして見上げた空には真ん丸お月様に空一面の星。
その光に自分が飛び立つ未来があるのだろうか。それとも、ただ敵に撃たれて死ぬのか。
空を睨むように見つめぽつりと呟く。
「…兄さん、おれ…飛べるかな、」
答えるようにふわっと風が吹く、生暖かい、気持ち悪い風。
でも、その中に「お前なら飛べる」と優しい声が聞こえた気がする。
目を細めふっと息を吐いた。
まだ怖いと言いたくない。いや、言えない。
少しだけ、また母さんといたい、父さん、兄さんたちといたい、生きていたいと思った。
けれどもう、叶わぬ思いだ。