ダンボールの中にいた、真っ黒な猫。
それはそれは可愛い顔立ちだった。だが、汚れが酷いからか、誰も見向きもしていない。
捨てられたのだろうか。少し人懐っこい。
猫は、透き通った空色の目で、僕を見つめつづけた。
迷いもしなかった。ダンボールを抱えあげ、家に持ち帰った。
「なぁあああ‼‼」
人間の叫び声のような声を出す、真っ黒い猫。汚れが酷いため、お風呂に入れようとしていたところだ。
病院に行くにしても、汚すぎて色々なところが汚れてしまう。
「ちょっと……、暴れないでよ…っ‼」
猫はジタバタと暴れ続け、シャワーを浴びることを全力で拒否していた。
それでも、なんとか押さえながらシャワーを浴びさせた瞬間だった。
流れていく水が真っ黒になり、お湯を浴びたところは、真っ白になっていた。
次々と汚れを流していくと、真っ黒だった毛が、全て真っ白になっていった。
「うそ……。」
流石に、驚きすぎて声が漏れてしまうほどだった。
お風呂から出る頃には、目の前には、真っ白な猫がいた。あからさまに嫌な顔をしているように見える。
「雪くん……。」
咄嗟に溢れた言葉が、それだった。空のように透き通った瞳に、雪のように真っ白な猫。それを見たら、誰でも”雪みたい”と思ってしまうだろう。
僕の言葉に、雪くんはピクッと反応した。雪くんも気に入ったみたいだ。
雪くんを新しいダンボールに入れて、動物病院に向かった。その間、雪くんは大人しくダンボールの中で寝ていた。
病院の検査結果、特に異常はなかったみたいだ。捨てられて間もなかったのか、特別どこかの数値が高いとかは全く見られていないそうだ。
ただ、少し体が弱い可能性があるとだけ聞いた。
───病気になったりしないといいけど……。
ペットショップで、猫に必要なものは全て購入した。これで、猫ちゃんとの生活に困ることはないだろう。
次の日、いつも通り会社に出勤しようと思ったときだった。
「にゃぁ。」
足元で雪くんの可愛らしい声が聞こえた。雪くんは、お見送りをしてくれるそうだ。雪くんは、お行儀よく玄関に座り、空色の瞳で僕を見つめた。
「ふふっ。行ってきます。」
雪くんは「いってらっしゃい」とでも言うかのように短くにゃん、と鳴いた。
平和になった会社の帰りに、ペットショップへ寄ることにした。なぜなら、雪くんに何かおやつを買ってあげようと思ったからだ。
「あれ……?ドズルさん……?」
後ろから声をかけられ、パッと後ろを振り返る。そこには、鈴木さんが立っていた。
「え、鈴木さん?どうして、こちらにいらっしゃるんですか?」
「それは私のセリフですよ。ドズルさん、ペットを飼われているんですか?」
僕は、鈴木さんに最近猫を飼い始めたことを伝え、写真まで見せた。
鈴木さんは、雪くんの可愛さに目を輝かせた。
鈴木さんの話によると、鈴木さんは、柴犬を飼っているそうだ。鈴木さんの性格からは感じ取れなかった。チワワを飼っているイメージがある。
「何をご購入される予定ですか?」
僕は、雪くんのおやつを買いに来たんです、と言うと鈴木さんは
「私、実家に猫ちゃんがいて、オススメのおやつがあるんですよ。」
そう言った鈴木さんは、猫用おやつのコーナーへ行く。僕もそれに着いていった。
鈴木さんがオススメしてくれたおやつは、マグロ味のキューブ型のおやつ。
家に帰って、雪くんにおやつをあげるのが楽しみになってきた。
レジに向かおうと、鈴木さんと歩いていると、首輪コーナーがすぐ右側にあった。
僕がそれを見ていると、鈴木さんは「買ってあげてみてはいかがですか?」と首輪の購入を進めてきた。
「私は、他の所へ行きます。おやつ、喜んでくれるといいですね。」
そう言って、鈴木さんは他の所へ行ってしまった。僕はお礼を言って、頭を下げた。
首輪か。雪くんを縛りつけるようで、本当は嫌だ。でも、雪くんはもう僕の子だ。家から逃げてしまっても、帰ってこれるようにつけてあげよう。嫌がったら、すぐ外してあげよう。
どれにしよう、と悩んでいると、雪の結晶の模様が入った水色の首輪が目に入った。
首輪には、赤色の鈴もついていた。一目惚れだった。雪くんには、これが絶対似合う。
お値段はそんなに高くないっていうのは、雪くんには内緒にしておこう。
「ただいま。」
ドアを開けると、玄関で姿勢よく座っている雪くんがおかえり、とでも言うようににゃん、と鳴いた。
リビングに歩いて行くと、後ろから雪くんがトコトコと歩いてきた。
ササッとご飯をあげて、自分もご飯を食べる。
雪くんは、ご飯を食べ終わったのか、足にすり寄って甘えてくる。
そこで、雪くんに今日買った首輪を付けてあげた。案の定、とても似合っている。全然嫌がっていないから、安堵の息を吐く。
おやつを手の上に乗っけてみると、おやつの匂いを嗅ぐなり、凄い勢いで食べ始めた。雪くんは、マグロが好きなようだ。
思わず癒やされてしまい、仕事の疲れなんて全て吹き飛んでしまった。
コメント
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わー、真っ白な猫か―、天使の生まれ変わりじゃね?wそれか、おらa…いえ!やっぱり何もないです!楽しみにしてますぞ☆
水色の目…真っ白の髪…oん"ん"ッッ ((今話も安定の神作でしたね!次話もワクワクしながら楽しみにしてます!