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─────結局。母と祖母のことは殺す事が出来ずに私は弟の手を引いて外へと飛び出した。兎に角遠くに逃げなければいけない。弟は、怖がっていた。そうだろう、あんな現場を見てからそんなすぐに立ち直れる方が可笑しい。ああ。頭が痛い。でも、今は兎に角走らなければ。
…一体何km走っただろう。
弟はすぐに疲れてしまい途中から背中に背負い私が走った。元々から体力に自信があるとは言えども、流石に怪我をした状態で走るのはきつい。ここまで来れば、そう簡単には見つからないだろうと思い私は人気の少ない路地に入り込み弟を下ろした。弟は心配した様子で私に近寄ってきてくれた。私は、壁に寄り掛かり座った。心配そうに見てきている弟。私は頭を撫でることしか出来なかった。
『ごめんね、ダメな姉さんで…いっそのこと姉さんを置いて…逃げてもいい…』
そんなことを言ったら弟は目に少しの涙を浮かべ
『そんな、ことないから、姉さん…、それにそんなことしないよ…だから、…ない……さ……』
段々と意識が遠くなっていく。
最後の方には何を言っているのか分からなくなった。
きっと私はそこで意識を失った。
─────…ん、…あ?…何処だ…此処…。
見知らぬ天井。捕まった…?そんな考えが一瞬頭をよぎったが、それにしては良いベットすぎる…
弟……は?…
私は体を起こしすぐ様にでもベットを出ようとしたが体を起こしたタイミングで頭に激痛が走った。頭に触れると包帯が巻かれていた。
…そんなことより、弟は…何処に…
すると、突然部屋の扉が開いて一人の女とその女の後ろには弟がいた。弟は私を見るなり走り駆け寄ってきた。
『姉さん!!良かった…良かった…』
ぐずぐずと泣きながら私に抱きついてきて、私はまだ困惑が頭に残る中泣き止ませようと弟の頭を撫でた。
弟が居たのは良かったが…
私は扉の前に立つ女を見た。その女は黒髪のロングに身長は少し高めで、目が片目しかない。もう片方の目は縫われているようだった。
その女はゆっくりと私達に近付いてきて
『素敵ね〜姉弟愛。貴方、少なくとも治療して此処で寝かせてから3日間ぐらいずっと寝てたのよ?この子凄く心配してたんだから。』
話を聞く限り、どうやら私達はこの女に拾われたらしい。
だが、信用が出来ない。
父か母の知り合いで私たちを捕まえた…のかもしれない…
そんな考えが頭をよぎる中その女は私の寝ていたベットに座り
『…私は”パぺール”よろしくね』
そう言い私の目を見て笑っていた。
私もそれに返すように挨拶をした。
『…私は…クラーケ…それでこの子は弟のアクーラ…』
パぺール…と名乗る女は、謎にふふと、笑ったと思えばアクーラの頭に手を伸ばしてきて私は咄嗟に
殴られる。
と思ってしまい。
『やめろ゛!!!!!』
と大声で怒鳴ってしまった。
パぺールとアクーラは驚いた表情で此方を見て
私はすぐに口を手で覆い。
『すみません…』
と謝った。パぺールはきょとんとした顔をした後に笑い私の頭に手を置き
『あッはは♪そのぐらい声が出せるなら大分回復したのね〜?』
私はてっきり怒られるものだと思っていた。
それに、今まで頭に触れられても殴られる事しかなかった。
私は初めて撫でられた。暖かい。心地いい。
すると突然パぺールが大声を出した
『クラーケ!?!何で泣いてるの?!?もしかして…嫌だった?』
私は自分の頬を触った。すると、知らぬ間に頬は涙で濡れていた。自分でも何故泣いているのか分からずに首を傾げた。その様子を見て、またパぺールは笑っていた。
『ふふ、何で理由が分からないのよ〜』
そう言った後また少しの間頭を撫でられた。
─────それから数時間が経ちアクーラは疲れて眠っていた。私はそれを横目で見ながら、パぺールから借りた本を読んでいた。
すると、パぺールが部屋に入ってきた。
『あら、まだ本読んでるの?まだ治ってないんだから、早く寝なさいね?』
それを聞いて私は小さくこくん、と首を動かした。
パぺールはアクーラの寝顔を見たあと私の近くにあった椅子に座った。
『私は…貴方達が何であんな路地で寝ていたのかは分からないけど、…もし貴方達がいいなら…』
『私と家族にならない?』
…は?、なにを、いって……
またパぺールの話は続いた。
『ごめんなさいね?少し貴方達を家に入れた時お風呂に入れたの…それで、アクーラの体には何一つとして傷は無いのに…貴方の体は…傷だらけ…更に後頭部には大きな傷…どう考えても、遊んで怪我をした、なんて言えるものじゃないと思って…もし良ければなんだけど…お話してくれないかしら…クラーケ…』
とても悩んだ。この人を信用していいのか、私のした事を言って警察に突き出されないのか。
ぎゅぅ、と布団を握った。手は震え、布団には手汗がついてしまった。
そんな手をパぺールは優しく掴んで
『…大丈夫…』
たったその一言。その一言で私は何かぷつん、と、心の中で何かが切れた音がした。
私は家でのアクーラと私との態度の違い、後頭部の傷のこと、父を殺したこと。
全てを話した。パぺールは何も言わずにただ首を縦にうんうん、と振ってくれた。
話し終わり、少しの間を空けてからパぺールは
『…お家に帰りたい?』
そう聞いた。
私は首を横に振った。
『なら、…明日アクーラにも聞いてから決めましょう…さ、今日は寝なさい』
私はパぺールに言われるがまま布団に入り、
『おやすみなさい。』
そう言ってから眠りについた。
…
翌朝。アクーラは私より少し後に目を覚ました。
『おはよう…姉さん…』
そう言い乍少し眠そうに目を擦っていた。
私はそれに、おはようと返す事しか出来なかった。
正直に言えばあまり眠れてなかった。アクーラは家族になる事を賛成してくれるのか否か…
そんな事を考えていると突然、アクーラはこんな事を言った。
『…俺はいいよ…家族になるの』
私はえ、と多少の声を漏らしアクーラの方を向いた。
『えっ、…て…ぁ゛〜…昨日……話してる声聞こえて…起きて聞いてたの…ごめんね、盗み聞きして…でも、俺はいいと思う。パぺールさんと過ごすの』
私はそれを聞き、何だか緊張していたのが解れたのか少し泣きそうになった。それをぐっ、と堪え。
『分かった。…さ、そろそろ顔を見せに行こう…』
そう言い手を差し伸べ、アクーラは私の手を取り2人で部屋を出てパぺールのところへ向かった。
パぺールは朝食を作っているところだった。
パぺールは此方を向いて
『おはよう〜2人とも〜♪』
と笑っていた。
私たちは、顔を見合せたあとパぺールを見て
『おはよう。母さん。』