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──────────あれから何年か経った。
私は17歳、そして弟のアクーラは14歳になった。母さんのお陰で私とアクーラはそれぞれ学校に通える事にはなったのだが……
…
「……ぐへっ…゛…」
「あらあら、アクーラったら、綺麗な一回転♪」
「母さんの力が強すぎるんだよ!」
…と、まあ。何故か最近学校から帰ると母さんに扱かれる。
これが始まったのは1ヶ月前くらいで、私達が学校に慣れ始めた頃だった。
突然、学校から私とアクーラが帰ってきた途端に横にいたアクーラが蹴り飛ばされて、私は何かと思って前を見た途端に母さんに蹴り飛ばされてその後は意識が飛んでしまった。
意識が戻ったのは、夜のことだった。突然蹴り飛ばされたアクーラと私は信じられなかった。やっぱり大人は暴力を振るうのだと2人して話しているときに母さんが部屋に入ってきた。
「あら、おはよう♪」
呑気に、ニコニコとしている顔に私は声をかけた。
「…母さん…なんで急に暴力なんて……」
そう言うと母さんはケロッとした顔をしていた。「あらやだ♪ごめんなさいね、説明無しに急にしてしまって。実は、貴方達のまあ、簡単に言えば戦闘力?を鍛えようと思って♪」
私達2人は訳が分からずに固まっていた。
そこに母さんは続けて話した。
「これから、毎日。平日は学校終わった後に稽古をします♪ああ、もちろん休日も♪」
私達は何の稽古かも知らされずに稽古は始まり、そして今に至る。
母さんにはいわゆる【異能力】というのがあるらしい。それを話してくれたのも最近だった。
…まあ、だが。今までの母さんは稽古中、一度も異能力を使うこと無く簡単に私達2人を完膚なきまでに攻撃してくる。
…母さんには、変な癖があるらしく、毎度蹴る度に何%と言ってくる。最初はなんの事かさっぱりだったがここ最近になって、蹴ったり殴ったりとか…その威力の事だとわかった。…ちなみに50%以上を出している所を見た事はない。
稽古はまずアクーラから始まる。毎度の如く、コテンパンにされる弟の姿を見ていい気持ちはしない。そして、アクーラが終われば私の番になる。
母さんは稽古を始める前に前日の改善点と良かった点を教えてくれる。
最近になると一度母さんの攻撃を避けれるか避けれないかになっては来たが、殆ど避けられないことばかりだ。
毎日毎日ぼろぼろで学校に行くと、出来た友達や先生に心配される。変にいじってくる男子もいるが、腹は立つが気にしないようにしている。
─────────……
稽古が始まってから3ヶ月が経つ頃には私もアクーラも攻撃を避けられるようにはなった。
だが、攻撃を受けて耐えるとなれば話は別で、大体の場合2人とも吹っ飛ばされる。
更に反撃なんて一度も出来た試しがない。
──────────…
稽古が始まって6ヶ月経つと2人とも攻撃を何とか受け、耐えられるようになった。私の場合は反撃をする事も出来るようになったが、母さんに上手いこと避けられてばかりだ。
この間なんて、蹴り返そうと思ったら足を捕まれ投げ飛ばされた。
そして、今まで50%以上を出してなかった母さんが最近50%以上を出す事が多くなった。
アクーラはまだ、50%を超えると吹っ飛ばされている事が多い。
──────────……
稽古が始まって1年。
私の場合は母さんに攻撃を当てる事が出来るようになり、何とか形になってきた。
アクーラも私と同じ程だが、まだ母さんに捕まってしまう事が多い。でも、あの年であれだけ出来るのは凄いと母さんがよく言っている。
そして、丁度この頃、私は18歳になった。
その日の晩は母さんやアクーラに盛大に祝って貰えてとても嬉しいかった。
その後、アクーラがお風呂に入っている時に母さんに声をかけられた。
「ねえ、クラーケ?明日の稽古は、違う場所でやりましょう。もちろんアクーラも一緒にね?
あと、こーれ♪」
そう言って渡された物は何か装備?らしきものだった。私には必要が無いと言ったのだが、母さんがいいからいいから!と聞かなかった。
だが、少し気になったのは。
「絶対に付けてきてね。それを一つも忘れずに。」そう言う母さんの声と顔がいつものニコニコ顔とは少し違い、真剣味を帯びていた。
何時もとは違う場所らしいし、硬い床なのかもと思い私はベットに入り眠りについた。
次の日。学校から帰り、母さんに連れられた場所はやけに厳重な建物で警備員も居て、母さんは何も言わずに通って行ったが、警備員がこちらをジロジロと見てきて少し不快だった。
そして、重い鉄扉が開き中を見ると何時もの練習場所より広い空間だった。天井も床も硬い素材で作られていると母さんが言っていた。
アクーラと母さんの稽古はいつも通りスムーズに進み次は私の番だ。昨日母さんから貰った装備を付けて、母さんの目の前に立ち、挨拶をしていつも通りの蹴りの練習かと思った。すると、私の顔横を何かが通ったと思えば私の少し後ろで爆発音が聞こえた。何事かと後ろを向くと
スペードの……3…?
何故トランプが爆発した場所の真ん中にあって、傷1つ無いのか私は理解が追いつかなかった。
きっと、誰かの攻撃だと思えば母さんの方を見て逃げようとした時。
母さんの手にあったのは、【トランプ】だった。