「さてと、ブラックに面白い実験物も貰った事だし遊ぶか」
ブラックから借りた(貰った)ポーションをくるくると回しながら帰途につく風夜。すると視界が一瞬ふっと暗くなった気がした。
「???」
しかしまたすぐ普通に戻ったためそこまで気にしなかった。しかしそれが大失敗だった。
「あれ?ここどこだっけ……」
気がつくと見慣れない場所に居た。
「僕家に帰ってたよね?帰途にこんな場所あったっけ?」
いくら考えてもそんな記憶は無い。スマホで場所を確認しようとも電波が届かず完璧に迷子になってしまった。
「迷子なんて、初めてだなぁ……」
風夜はいつも学校と家を行き来するだけ。遊びに誘われても必ず分かるところまで送って貰うため道に迷った事が無いのだ。
「くっそぉ……迷うなんてな……さっさと被験体集めしたいのに……」
『被験体をお探しですか?』
「っ!?」ゾクッ
不意に響いた声に風夜は寒気を感じ、一気に警戒体制をとる。
「誰だっ!!」
闇の中からゆらりと現れたのは真っ白な肌に真っ白な髪、紫色の瞳……蛇一族の特徴を具現化したような男だ。
「わたしが誰か分かりませんか?……ああ、確かに今の貴方には分からないでしょう。ですが今はそれは関係ありません」
男は風夜のマフラーを掴みぐいっと引き寄せる。思わず前につんのめる風夜の耳元に口を寄せると
「貴方のお望み通り、被験体と実験施設を貸して差し上げましょう」
と言ったかと思うと風夜の目を塞いだ。
「な、何を……!」
そう言ったのを最後に風夜の意識はブラックアウトした。
「ん、ここは……?」
気がつくと自分は見知らぬ場所に居た。四方が鉄の壁に覆われ、一方の壁と天井に小さな窓があるだけの小さな部屋だ。その瞬間えもいわれぬ寒気に襲われた。見覚えが無いはずなのに見た事がある。不意に周りの景色が変わった。たくさんの蔑むような目と降り注ぐ心無い言葉。その言葉に震える幼い小さな少年。それを風夜は傍観している。
『やめて……ごめんなさい……いい子にするから……だから……やめてください……』
顔はいくらか幼く違う部分があるものの風夜とそっくりだった。
「な、なんなんだよ!これは!」
また景色が変わる。今度はどこかの小さいながらも暖かさのある家だ。そこで夫婦らしき男女が血塗れになって殺されていた。殺したのは見たこともない男達……”人間族”だ。
「なんなんだ!これは!」
「夢なら醒めてくれよ!!!!」
風夜は空に向かって絶叫した。