テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
omr side
ついに始まる。
客席に座ってからも、ずっと信じられない気持ちだった。
何度も、チケットを見返した。 何度も、目の前のステージを見つめ直した。
夢みたいだ。
会場の空気はどんどん熱を帯びていく。
開演十五分前、スクリーンにカウントダウンが表示されると、 会場中から「きゃあっ」と小さな悲鳴みたいな声が漏れた。
手のひらが汗ばんで、心臓の音がうるさいくらい響いている。
五分前、四分前。
誰もがペンライトを握りしめて、息を呑む。
そして、
「カウントダウン、10、9、8──」
客席が一斉に叫びはじめた。
周囲の声が重なって、心が震える。
「3、2、1……!」
バンッと言う 大きな音とともに、ステージの照明が一気に弾けた。
真っ暗だった会場が、まるで夢の世界みたいに鮮やかに彩られていく。
スクリーンには、誰かのシルエット。
それは、菊池風磨だった。
「キャーーーーーッ!!!!」
割れんばかりの歓声が会場を包む。
それと同時に、僕の奥が疼く。
声にならないほどの喜びと興奮で、 頬が熱くなって、涙が出そうになる。
本当に、会えた。
遠くて、テレビの向こう側にいた人が、今 、目の前で歌って、踊って、 笑ってる。
菊池風磨の声が響いた瞬間、全身が震えた。
優しくて、色気があって、でも楽しげで。
「今日は、全力で楽しんで帰ってください!」
その一言で、胸がいっぱいになった。 夢の時間が、今、始まったんだ。
僕は、その中心で、ちゃんと呼吸してる。 ちゃんと風磨くんのいる世界の中にいる。
ライブも中盤、 菊池風磨がスタンド席のほうをゆっくり歩きながら、 笑顔でファンたちに手を振っていた。
僕は夢中で、手作りのうちわを振りつづけた。
《だいすき》
何度も書き直して、夜中まで悩んだ末の渾身の一作。
「こっち見て…!」
祈るような気持ちで両手を伸ばし、全力で振る。
そのときだった。 ステージの端で立ち止まった菊池風磨が、 ゆっくり、こちらを見た。
ほんの、ほんの一瞬。 でも、明らかに目が合った。
僕のうちわを、ちゃんと見て、 にっこりと、唇を少しだけ尖らせて、 軽く、ウインクをして。
「……っ!」
僕の頭の中が一気に真っ白になった。
両手で口元をおさえて、涙が出そうになる。
それと同時に、物凄く奥が疼いた。自分のを慰めないといけないぐらい。
心臓の音が止まらない。 脚の力が抜けそうだった。
「やばい、やばい、やばい……っ」
声にならない言葉が口からもれる。
そのあとの記憶が、少し曖昧になるくらい。
まるで一瞬だけ時間が止まって、 世界にふたりだけになったような、 そんな錯覚を起こすほどの、 完璧なファンサ。
何千、何万といる中で、僕 だけを見つけてくれた、奇跡の瞬間。
ライブの時間はまだ続いているのに、僕 の中ではもう終わってしまってもいいくらいの、 満たされた気持ち。
「ありがとう、ふまくん……」
何度も胸の中でそうつぶやきながら、僕 はそのあとの時間を、夢の中にいるみたいに過ごしていた。
ライブも終盤になってきた頃、菊池風磨が口を開いた。
「俺ねぇ、今めっちゃ興奮してる。このライブの中に、めっちゃ可愛い子いる。みんな探してみてよ、笑」
客席がざわざわしはじめる。菊池風磨が可愛いなんて言うなら、その人はよっぽと可愛いんだろうな、と心を呟いた。
「ライブ終わったら声掛けちゃおうかなー?笑笑」
再度客席がざわざわしはじめた。声掛けられたりしないかな…と少し期待を零しながらこの後のライブを過ごした。
「じゃあ、そろそろ…みなさん、ありがとうございました!」
客席に拍手がうるさいぐらい起こる。僕のその一人だ。
菊池風磨が去っていくと、周りの人たちが友達や家族と話し始める。
僕は寂しながら一人な為、アナウンスを聞いてライブ会場を後にした。
僕はライブ会場の近くにある男子トイレの個室に駆け込み、誰もいないことを確認してズボンをずらした。
コメント
10件
目合ってウインクされるとか反則だろ!やばすぎる… 風磨くんとお近づきになれそうでなにより!
最高だわ、がちで 大森の下半身やばいことなってんだろぉね、、 ふまくん、もしかして元貴と次回で近づくのか、、!! 楽しみです、、!