テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
𓏸𓏸はしばらくして病院から来た退院通知を聞いて涼ちゃんの迎えに病院へ
――退院した日から、涼ちゃんはまるで心の奥底まで暗い深海に沈んでしまったみたいだった。
𓏸𓏸が隣に座っていても、
何かを話しかけてきても、
涼ちゃんは天井をじっと見つめているだけ。
「涼ちゃん、熱測るね」
細い腕に体温計を挟まれても反応はなく、
水を口元に持ってきても、𓏸𓏸の指示でようやく少しだけ流し込むだけ。
名を呼ばれても、昔のような照れ笑いも、拗ねた顔も返ってこなかった。
部屋にはただ、
時計の針と、
静かにベッドを見守る𓏸𓏸の呼吸だけが
ゆっくりと響いていた。
(…どうして、こんなに遠くに行ってしまったんだろう)
𓏸𓏸は毎晩、
涼ちゃんの寝顔を見ながら、
果てのない闇に叫び続ける自分の気持ちを飲み込んだ。
どれだけ寄り添っても、
涼ちゃんの心には
ひびが一つも入らない――
そんな日々が、ただ、ずっと繰り返されていった。