コミックマーケット、略してコミケ。
それはオタクの祭典であり、オタクの楽園のようなものでもある(一部の人には期限という地獄もあるが)。←
オレ、そらること一ノ瀬彼方は、今日その戦場に赴いていた。
何故ならば、少し前からpi○ivで密かに推していた一次創作BLマンガの投稿者、ロック猫先生が、とうとうコミケに出店したからだ。
可愛い年下攻め×クーデレ年上受けの、なんかキャラの見た目もmfsrに似たその作品は、通称“ユキソラ”。
攻めの名前が雪ノ川冬舞(ゆきのかわとうま)、受けの名前が空伊瀬琉生(そらいせるい)、2人の名字をとってユキソラだ。
ほら、名前もオレ達に似てる。っていうか似てるのは何故か本名の方とかいう奇跡。←
彼方(ロック猫さんのブースは……)
そこかしこを歩いている完成度の高いコスプレイヤーなんかを横目に、事前に頭に入れておいた場所を探す。
彼方「……ここか」
近くまで来て少し緊張しつつ、小さな金髪の女性が座っている売り場に近づいていく。
今のオレはマスクにメガネに帽子、もし万が一ロック猫先生がそらるのことを知っていても、声に気をつければバレないはず。
よし、と意気込んで、早速声をかける。
彼方「すみません、新刊一冊くだs……」
ロック猫「はーい、新刊一冊ですねー」
先生の近くまで来て、気づく。
遠目から先生を見た時、な〜んかやけに既視感ある見た目してんな、とは心のどこかで思ってた。
彼方(それに、この関西特有のイントネーション……)
声はかなりよそ行きで、初見じゃ分かりづらいけど……。
ロック猫「ありがとうござ……って、ん……??」
彼方「……こんなところで知り合いに会いたくなかったわ」
ロック猫「それ間違いなく物売っとるこっちのセリフやな」←
売り子「ロックせんせー、飲み物買ってきt……ん?」
って、少し遠くから走ってくるペットボトルを持ったあの爽やかイケボイケメンは……。←
売り子「え、こんなとこで何してるんですかそらるさん……??」←
彼方「こっちが聞きたい」
ロック猫「まぁ……一旦そらるんも売り子やろか?」←
彼方「何でだよ」
ロック猫「やってくれたら好きなだけ新刊タダで譲る」
彼方「乗った」←
彼方「で、そろそろ本題入るんだけど」
数時間後、無事コミケ1日目が終わって、俺達3人は近くのファミレスに入っていた。
彼方「何でちゃんくろがBLマンガ書いてるロック猫先生で天月はその売り子してんだよ」
棗「つまりそーゆーことよ」←
翔太「そうそう」←
彼方「お前ら同志だったのか……」
ドリンクバーから持ってきたオレンジジュースやらメロンソーダやらを飲みながら、呑気にそう答える96月の2人。
オレはオレで優雅にカフェラテ飲んでるわけだけど。
いや優雅ではねぇな、カフェラテをほぼビールみたいな飲み方して口の中火傷しまくってる。←
翔太「いやぁ、にしても、そらるさん腐男子なの意外ですね。なるせくんはまだしもそらるさんまでとは思わなかった」
彼方「は???」
棗「なっ。この界隈わしら4人だけやと思っとったわ」
彼方「は?????」
4人って誰だ4人って。
この2人が腐ってんのはもう分かったとして、なるせまでそうだったのも衝撃だけど一旦置いとくとして。
96猫、天月、nqrse……と、後の1人が気になって仕方ない。
彼方「……ちなみに、その1人って誰?」
翔太「え、この流れでそらるさんが知らないことあるんだ」
棗「あ〜、あっちがそらるんのこと知らんかったし、お互い隠しとったんちゃう? 知っとったらわしらに話すやろ、インフォさんは」←
翔太「まぁそっか、長年の友達だから逆にとかもありそうだよね」←
彼方「……もしかしてオレの耳イカれた?」
翔太「ん?」
彼方「残りの1人誰だって……???」
さっき信じられない名前が聞こえてきたような気もするけど、きっとオレの耳がおかしいだけだ。そうに違いない。
うん、きっとそう。だって真面目で仕事ができるあいつに限って、まさかそんなこと……。
棗「そらるインフォ、96猫インフォ、ちか、本名新條瑞樹。ドゥーユーアンダスタン?」←
彼方「ノーアイドント。ユーアークレイジー」←
棗「クレイジーはお前じゃい」←
翔太「でも確かに、あの人が腐男子は相当意外ですよね。全然そんなキャラじゃないし」
彼方「天と地がひっくり返っても地球が爆散しても仕事のし過ぎでイカれても絶対そんなことないと思ってた。ヒークレイジー」←
棗「動詞抜けとるぞクレイジーハンペン」←
次の日
コミックマーケット2日目。
今日も引き続きオレも売り子をしろと言われ、ユキソラの書き下ろしイラストをくれるとのことで交渉が成立した。←
それなりに列ができたり、売り上げは上々。中身の正体は別として流石ロック猫先生と行ったところか。←
そんな行列も収まってきて、最後の客の番になる。
黒髪ロングの一件は可愛い女性だけど、背がオレと同じ。何ならオレよりちょっと高いくらい。
彼方(すげぇ、女装男子だ……)
完成度高いな、なんて思いつつ、なんかどっかで見た顔してんなとも思いつつ、接客を始め……。
客「え……そらるさん……??」
そう話しかけられた声は、誰よりも聞き馴染みがある声で。
彼方「……お前にだけは一番会いたくなかったよ、まふまふ」←
翔太「ん? どうしましたー?」
客「え、天ちゃんまで……?」
翔太「……(絶句)」
ロック猫「おーい、イケメン売り子’s仕事せぇやー。報酬出さんぞー……。」
ロック猫「……お? 超かわええ子キタァ! よかったらあとで一緒に写真撮ってもらってもええ?」
客「……ロックねk……え? く、96ちゃん……?」
棗「…………かわええ子からまふちゃんの声する何このホラー……」←
客「ホラーはこっちだよ何でコミケ来たら推し先生が知り合いで挙げ句の果てに売り子まで知り合いでさらにみんなしてBL本売ってんの???」←
翔太「……まふくんその格好でBL買いに来てるのバレたら燃えるんじゃない?」←
客「もれなく3人もだろうけどね」←
棗「とりあえずうちの看板男の娘になれまふちゃん」←
客「やだよボクこれから渦巻きラッパ先生のとこ行くもん」
棗「……おー、あー……マジか、うん、なるほど?」
彼方「え、オレ渦巻きラッパ先生知ってんだけど」←
客「えっ、そらるさん知ってます!?」
彼方「そういやオレ昨日行きそびれたから一緒に行ってくるわ」
翔太「なら僕も行きたい」
客「あ、の前に新刊一部ください」←
棗「おう毎度あり」←
渦巻きラッパブースにて……
真冬「……なるせくん何してるの」
渦巻きラッパ「一応それこっちのセリフっすね。兄貴分も含めて」←
せっかくなのでキャラ紹介(?)
一ノ瀬彼方/そらる
生粋の腐男子、周りにはずっと隠してきた。
どっかの世界の腐男子さんと同じく年下攻めが好き、そこまで過激派ではない。
黒木棗/ロック猫/96猫
腐女子、pi○ivにて「ロック猫」として一次創作BLマンガ、通称“ユキソラ”を投稿している。それなりに人気の作家。
mfsr推しだけど大々的には描けないのでそれっぽいオリキャラを代用して描く。
天宮翔太/天月
腐男子、ロック猫の売り子として召集された。
普通にロック猫のファン。
天月、96猫、nqrse、ちかの4人でよくBL会談をする。
相川真冬/fuyu/まふまふ
腐男子、実は長身女装男子「fuyu」君として密かに活動していた。知る人ぞ知る逸材。
BLも女装も色々な方向に手を出している為守備範囲が広い。
ロック猫と渦巻きラッパのファン。
成海百瀬/渦巻きラッパ/nqrse
ネカマ系腐女子(腐男子)、暗めの一次創作BL小説家。
語彙が秀逸で、たまに韻踏んでたりする、内容だけでなく読んでいて楽しいと人気。
ロック猫に密かに対抗心を燃やしている。
作者より
腐バレinコミケが書きたかったんです←
てかこれ逆に腐ってない歌い手誰だよ……←
コミケは大して詳しくないのでおそらく所々間違ってる。ので大目に見てください((
コメント
4件
何だこの最高なストーリーは… 歌い手大体のみんな腐男子w そらるさんチョロいなw←(私も売り子 やります!だからください!ロック猫先生!) ファミレスでの96ちゃんとそらるさんの 会話に笑ってしまったwクレイジーwww あらぁ?まふくん?君は何してるのかな? 絶対かわいいじゃんw私も写真撮らせて? ただ、すぐバレたけどねwあのまふくんも こっちの世界に来たのか、ようこそ〜(?) 最高でした!
...最高っすね✨ まさかの6人の歌い手(インフォ)が腐っていたとは... 新刊タダと書き下ろしイラストに釣られるそらるさん← ...ちょ、私もやるんでください((( まふくん女装でコミケ来てたんか... しかもすぐバレるという...((( 歌い手仲間とバレた時の反応が面白かったですw やはり腐男子パロは良いですね〜(ˆωˆ ) 投稿ありがとうございます!