テラーノベル
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――
雨は降り続いていた…
まるで世界の誰にも届かないすすり泣きのように。
宗一はここ数日、何も書けていなかった。
プリンの顔、あの「無垢な」顔と「血まみれの」顔が、目を閉じるたびに、彼の脳裏に重なり合っていた。
彼は夢を見始めた…物語の登場人物になる夢を。
血をインクにしてプリンを描く夢を。
右手が制御不能なペンになる夢を。
>「もう彼女を制御できていない…いや、そもそも最初から制御できていなかったのだろうか?」
そして、彼がさらに意識を遠ざけようとする前に――
再びノックの音が響いた。
>コンコンコン
同じ音…
しかし今度は、ドアの前に立っていたのは葵警部だけではなかった。
彼女の隣には、50代くらいの男が立っていた。漆黒のスーツを着て、青白い顔にサングラスをかけていた。
彼は自己紹介もせず、「多くの殺人犯を捕まえてきた人物」というオーラを漂わせながら部屋に入ってきた。
葵は静かに言った。
「こちらは長岡さんです…」「こちらは当課の法医学心理学者です。この事件の捜査に協力していただきます。」
宗一は、部屋の温度が一気に下がったのを感じた。
長岡は優雅に腰を下ろし、まるで本を読んでいるかのようなゆっくりとした口調で話し始めた。
「あなたの作品はすべて拝読しました。特に未発表の作品は…」
「登場人物の感情構成が非常に緻密です…論理的な流れがあり、愛と暴力が結びついています…まさに『作者』そのものを映し出している作品です。」
宗一は唇をきつく引き締め、何も答えなかった。
彼は自分が「静かに尋問されている」ことを悟っていた。
長岡は視線を合わせようとせず、テーブルの上に置かれた古い原稿をじっと見つめながら、話を続けた。
「プリン…はただのキャラクターじゃないよね?」
「彼女は君の一部だ――もしかしたら、君が忘れようとしている一部なのかもしれない。」
「直接聞きたいんだけど…君は彼女を実際に見たことがあるの?」
宗一は長い間沈黙した。
心臓が不快なほど速く鼓動していた。
「ああ…見た。」
「彼女はこの部屋にいた…僕に話しかけてきた…苦しんでいた。泣いていた…」
葵は同情の眼差しで宗一を見た。
しかし、長岡はかすかな笑みを浮かべた――嘲笑ではなく、まるで何かの謎の「手がかり」を見つけたかのような笑みだった。
「じゃあ…もし何日もこの部屋に少女が入った痕跡が全くないと言ったら――監視カメラの映像も、指紋も、DNAも、髪の毛一本さえも…」
「君は…彼女が存在しなかったと信じるだろうか?」
宗一は沈黙した。
彼の心臓は激しく鼓動し始めた。
彼の心は、これまで見てきたあらゆる光景、耳にしたあらゆる音、プリンの手に触れたあらゆる感触を疑い始めた。
>「それとも…これは…」
>「…ただの自分の罪悪感なのか?」
長岡は再び口を開いたが、今度は少し声を落とした。
>「あなたが作品に注ぎ込んだ苦しみは…インクと共に消え去ったわけではない。」
「ただ蘇るのを待っているだけだ…」
>「あなたが見たプリンは…霊ではなく…あなたがペン先で彼女を殺した後に作り出した『意識』かもしれない。」
葵は真剣な口調で付け加えた。
>「あなたは解離性同一性障害(DID)か、心因性幻覚を経験している可能性が非常に高い。特に、自分の作品に取り憑かれたクリエイターによく見られる。」
宗一はもう耐えられなかった。彼は飛び上がり、震える声で叫んだ。「嘘だ! 僕は殺人犯じゃない… プリンの話をでっち上げて彼女を殺すなんて…!」
「彼女… 彼女から書き直してほしいって頼まれたんだ…!」
長岡は立ち上がった。
そして冷静に言った。
「ならば…『新しいエンディング』を書いたのが本当に君だと証明してみろ。」
「『元のエンディング』でこれ以上人が死ぬ前に…」
二人は立ち去り、宗一は静まり返った。
部屋の隅からかすかな声が聞こえた。
「…僕が望まないエンディングは書かないで…宗一くん…」
その夜、宗一は再びファイルを開いた。
彼は新しい白紙の紙を手に取った。
そして、これまで決して書こうとしなかった「新しいエンディング」を書き始めた。
しかし、奇妙なことが起こった。
彼は何も書けなかった……プリンに「ハッピーエンド」を与えようとするたびに、ペンは止まってしまうのだ。
彼女の生存、勝利、愛、あるいは安全な世界へと結末を変えようとしても、鉛筆の線はどれも途中で途切れてしまう。
>「これは一体……?」
彼は壁の方を振り向くと、自分の筆跡で書かれたメッセージを見つけた。
>「彼女はハッピーエンドのために生まれたのではない。」
「なぜなら、彼女は書き手の苦しみから生まれたからだ。」
第6章 終わり
コメント
1件
第6話、読み終わりました……。重かった。でも、その重さがすごく綺麗で、ずっと心に残ってます。 特に長岡さんの「彼女は君の一部だ」って言葉が刺さりました。宗一が自分の罪悪感と向き合うしかなくなる展開、ぞっとしたけど目が離せなかった。そして最後の壁のメッセージ——「彼女はハッピーエンドのために生まれたのではない」。ここで背筋が冷えました。物語って、書き手の傷から生まれることもあるんだなって。 HARuka22さんの描く「闇」、いつも丁寧で美しいです。続きがすごく気になる……!
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