‥暖かい
ふわふわしていて
凄く安心する
自分は顔を埋め存分にその毛もうに体を伸ばした
その毛皮達と共に大地を駆けて 池に飛び込んだり 泥んこになった
自分の姿が嫌いだ
のっぺりとしていて
二足歩行をしていて
自分が酷くみすぼらしかった
毛皮達が羨ましかった
美しく力強く大地を駆けているその見た目が
喉から手が出る程欲していた
友達が来た
今日は空から来たんだね 昨日は地面から生えてきたのに
唯一の二足歩行の友達
真っ黒な綺麗な髪とキラキラ光る深い緑色の瞳
穏やかで優しくて怒らない大好きな友達
いつも心配してくれていつも甘えてきた
七歳の時友達が剣をくれた
自信作なんだって言ってうきうきしながら
でも自分は剣なんか使わなくても良かった
要らないと言った
でも友達はせっかく作ったのに‥ってぶつくさ言ってたから
仕方なく受け取った
それから剣は何度も自分の命を救ってくれた
改めて友達に感謝した
あまりにも‥幸せだった‥
「まずいな‥」
男は剣を握っていた。
巨体のあちこちに返り血が飛び散り髪は乱れている。
肩で息をしていて今にも倒れそうだった。
辺りには首がない死体が実に七体転がっていた。
男の前に立ちふさがって要るのは、王宮の近護兵。
曲者は男を逃がすまいと周りを包囲していた。
(ここまでか‥)
ガサッ
「!?」
頭上を見るとなんと子供が木の上で寝ているではないか!
目撃者が居たら都合が悪いのか
曲者達は目配りをする
かたずけろ
一人が剣を子供目掛けて放った。
「止めろ!!何の罪もない子供を殺す気か!!」
男は怒天髪を衝いたが、間に合わない。
「止めろぉぉ!!」
あの小さな体から血が吹き出す。
誰もがそう思った。
「あ‥」
曲者は驚愕の面を張り付けたまま地面に倒れ、
頭からは赤い毒々しい液体を流していた。
男と曲者はぽかんと口を開けた。
なんと子供はあの刃を交わし曲者の頭に剣を放っていたのだ。
子供は木から降りて目を細め首をかしげる。
「一人相手に‥10‥15?よくもまぁ大勢で」
子供は剣を2つ構え凛とした声で
「背中は任せろ!」
と言うと曲者に飛び込んでいった。
男はしばらく突っ立っていたが直ぐに立ち直ると
「助太刀感謝いたす!」
と言いこちらも曲者に飛び込んだ
こうなれば驚愕の絶頂に陥ったのは曲者の方だ。
子供に仲間が十文字に切り裂かれ貫かれ、なのにこっちは
傷一つ付けられない。
男もその腕に舌を巻きながら曲者を切り伏せていく。
五分もかからない内に曲者はただの肉塊に成り果てていた。
「はぁっ…」
改めて男は突然の助っ人を見た
黒いぼろ切れに頭を包み、服は全て獣の皮でできていて
鉄の胸当てと二つの剣が、何故か実に良く馴染んでいた。
男は大剣をしまいこの小さな子供に頭を下げた。
「危ないところ感謝する。」
子供はくすりと笑い林の中にある小さな小屋を指差した。
「む?」
「死体があったんじゃまずいでしょ?」
確かにそうだ。誰かに見られたりしたら、怪しまれる。
男は子供と一緒に小屋に向かった。
男は水を口に含み椅子に腰掛けようやく一息ついた。
子供も同じように椅子に腰掛けた。
「暑いなぁ…」
「夏だからあたりまえだろう?」
あきれたように笑う。
子供はそうなのかと呟いた。
「なら納得」
子供は頭に巻いていた黒いぼろ切れの布を暑苦しそうにほどいた。
当然そこには刈り込んだ短い毛があると思った。
平民の子供の髪型は普通そうだからだ。
しかし男の目にとびこんだのは、純金に煌めきながら腰を流れる
眩い黄金の髪だったのだ。
男はあまりの美しさに腰を抜かした。いやそれよりも…
「おいお前…」
「女か?」
そう今まで共に戦ってくれた助っ人は小さな少女だったのだ。
だが少女は苦笑しながら足を組み
「まぁ…見た目はだがな…」
ケラケラと笑いがらこちらを見た。
この時男は初めて子供の顔を正面から見た。
くっきりとした顔立ち。
ずば抜けて白い肌、細く引き締まった手足。
腰に流れる純金の髪。
そして何よりも
双方に煌めく真っ赤な瞳
長い純金のまつげに包まれ、
どこまでも深く美しく透き通り
真っ赤な炎を灯したような輝き
なのに何かはっとするような不思議な輝きを宿した瞳だった。
「見た目だけとは?」
男は首をかしげた、
その瞬間愛らしい唇が不敵な笑みをつくる。
「人はその器に入っている魂の形までは、わからない」
どこか忌々しげに呟いた
「俺に手を出してみろ、産まれた事を後悔させてやる。」
愛らしい顔でにっこり笑いながら剣を構える。
この出会いが運命を大きく狂いさせ始める
コメント
4件
同じく下の下と同じく、好き(((
ありがたきお言葉
すき