「肺癌でさ……末期なの」
私は淡々と述べる。
「…ホント、ウケるよね、」
はは、っと乾いた笑い声をあげると徹は私の手をぎゅっと握って、
「何も、ウケない。何が面白いの、お前は」
今までに聞いたことない、低い声に身体が強ばる。
「もう…生きる希望なんてな「勝手に!」っ……?」
私の言葉をかき消すような大きな声、握る力も強くなっていく。
「勝手に、生きるの諦めんなよ…」
どんどん小さくなっていく声。
「…………ごめん、カッコ悪いとこ見せて。」
バツが悪そうに私の手を握る力を緩める。
「ううん、大丈夫。」
「…………あのさ」
何かを切り出した徹に耳を傾ける。
「それは、、治るんだよね?」
「……」
「治療を続けてったら、いつかは…っ!」
縋るようにこちらを見てくる徹。
「…末期癌でも、治る人は少なくない」
「!なら、」
「でもね……私に合う肺がまだ見つからないの」
「だから…………もう回復の見込みはあんまり無いって…お母さんたちに話してるの聞こえちゃったんだよね、はは…」
笑わないと、涙が零れそうだった。
泣かない、好きな人の前ではもう泣きたくない。
そう思い、俯いていると不意に、身体がなにかに包まれた。
「泣いていいんだよ。」
耳元で徹が言う。
「なんで我慢するの?なんで笑うの?怖いに決まってるのに。せめて俺の前では、俺の前くらいでは泣いてよ、」
徹の優しい声にポロッと涙が一筋、私の頬を流れた。
「っゔ、ぅあ…ヒック、とお…る、ぅ、」
ボロボロととめどなく涙が溢れる。
「ごめん、ね。ごめ、なさっ……酷い態度とったりしてごめんなさい……ゔぅ、」
うん、うんと私の頭を撫でたり背中をさすったり…泣いてる小さい子をあやす様に接する徹。
そんな優しい徹にまた涙が溢れた。
どのくらい抱き合っていたのだろうか。
いつの間にか涙は枯れていて、動悸も収まった。
「徹、ありがとうね。徹のおかげで落ち着いた」
そう言うと徹は、
「んーん。全然大丈夫!もう落ち着いたなら良かったよ〜」
と、いつもの爽やかスマイルをかましてきた。
「さっきはちょびっとだけ弱音吐いちゃったけど、治る可能性は0ではないし、まだ希望もある。だから諦めるのはもうやめる!」
そう宣言し、握り拳を空へと突き出すと、
「お〜!俺も応援してる!」
と彼も私のように握り拳を空へと突き出した。
「ふふ、ありがと」
そうお礼を言うと彼は照れ臭そうに笑った。
…もうこの笑顔を見るのも最後かなぁ
ポツリと心の中でそう思う。
ズキズキと痛み始める胸は無視して、徹にすり寄った。
すり寄ってきた私をただただ、優しく受け止める徹に涙が出てきた。
その涙を拭き取ってくれる徹にまた涙が零れる。
神様お願いです。
あと少しだけ、このままでいさせてください。
明日死んだっていいから。まだもうちょっとだけ彼と………。
そう願いながら彼の胸に頭を押し付けた。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝350♡
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!